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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 73

その頃泰湾(シャム湾)にて本来は長門型三番艦となる筈であった戦艦は泰王国海軍旗を靡かせて航行していた。この戦艦の名は“チャクリ.ナルエベト級戦艦一番艦チャクリ.ナルエベト”である。開戦前は対仏蘭西極東艦隊を仮想敵にしていたが今は対独逸艦隊戦に切り替えた。従来あるトンブリ級は海防艦であり戦術が限定された。そこで泰王国は将来的に空母/戦艦空母への改装が出来るように長門型戦艦を外注、当面の間は泰王国海軍総旗艦として活用されることになる。かつてはビックセブンと呼ばれた戦艦を手にした事は亜細亜各国では意味が大きく、運用出来る事は戦後の国際情勢に如何に関与できるかの試金石になる。その横には琵琶湖型特等輸送艦を導入しシラミン級として四隻、そして海防航空艦化したスリ.アユタヤ級戦艦四隻にドラッド級水雷艇を多数そろえている。水雷艇は日本海軍も大正期までは存在していたが亜細亜各国では未だに現役である。
これは外洋航行性が高い駆逐艦に担当する事になりシーパワー国家や外洋での戦闘を想定している国家では早々と駆逐艦に切り替えた。しかし発展途上国は第二次世界大戦時にも外洋型水雷艇を運用を強いられ、泰王国も例外ではない。この国は泰湾(シャム湾)と印度洋が領海になっている事を考えると海軍力の強化はしておきたい、この国が長門型戦艦を導入は正しく清水の舞台から飛び降りた決断と言える。ナチス独逸第三帝国の侵略は現実的に起こり得る事態であるのだ。近い将来に米国との共同戦線の際にお荷物にならないように日英両海軍の指導の元、日々訓練に励んでいた。
「どうですか?」
「心意気が伝わってくるな」
指導役の日本海軍将校らもお世辞で言っている訳でもない。
語学面(英語)では不安な一面もあるがクーデター後、日本政府は亜細亜各国の優秀な士官や士官候補生を留学生として受け入れ、彼らは亜細亜派遣艦隊が亜細亜各軍の近代化に取りかかるとその手伝いをした。この戦艦の司令官も単身横須賀海軍士官学校に留学していた猛者であり、泰王国海軍近代化に貢献した。因みにやり取りは全て英語であるのはやはり英国や米国、豪州と言った英語圏を使う軍隊に配慮しての事だが輸送艦に水雷艇の下士官は英語が全くダメと言う問題がある。これは日本よりも識字率が低い事が当たり前であった亜細亜各国で見られ、今こそ日本政府の近代化インフラ支援で識字率が向上しているが下士官らの子供時代は支援前の世代で小学校ですらまともに行った事が無いのも珍しくない。英語以前の問題なのだ……
そこで考え出されたのが識字率に応じての語学特訓、講師は現地の仏教僧侶を起用したのである。ある程度の学を持ち、荒くれ者も珍しくない軍人を相手にするにはうってつけの人材と言えた。日本も寺小屋制度があったからこそある程度の識字率が維持出来たのである。文字の読み書きは国の考えを文章に残した時に理解を得るには必要不可欠、とりわけ軍隊はその国の質がモロに出るのだ。順調とはいかないがこの地をハーゲンクロイツの旗を立てる事は避けたいのだ。
「朝鮮半島はどうですか?」
「変わらずだよ……あの国はこの間まで日本の一部だったから未だにな」
亜細亜各国の近代化が遅れているのは高麗共和国と中国であり、特に中国は共産化による国作りに疑問を呈した蒋介石は毛沢東と対決、武力衝突に至るも蒋介石は台湾島へと逃れ“台湾共和国”として建国宣言している。将来的には満州国との併合も考えているらしい。毛沢東も中華人民共和国を建国するも少数民族らは一斉に反発、彼らは満州国臣民になる事を宣言した。これはソ連の粛清が清王朝やこれまでの王朝とは変わらないと判断したからである。
普通なら中国共産党は実効支配に乗り出すか満州国に侵攻するのだが、日本海軍がほぼ制海圏を握り、中国が近代海軍を持つにはどうしても列強に頼るしかないが日本に圧力かけられる欧州各国はヒトラーにより征服、アメリカもそれ所ではない。何しろソ連が消滅の危機になっているので中国共産党よりもソ連を助けたいのだろう。

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