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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 71

無論、SSやゲシュタボの取り締まりもあるが拡大した戦線と混沌となりつつある戦況に加えて占領地では属国国民の協力もあって中々取り締まれず、逆に誤認逮捕が相次いでいた。更にこれにより作戦遂行能力にも支障が出ている上にゲシュタボやSSが捜査中に現地ゲリラに殺害される事も起きていたのだ。特に海軍の艦艇配備士官になるとより一層厳しくなる。
「英国を落とされるとナチス独逸第三帝国は不敗国家になる、シーパワー国家にもなるからな……その為にも主力をバルト海へと封じるにも北海の制海圏を亜米利加にも役割分担を果たすべきと言う事だ」
「なるほど、ユナイテット.ステーツ艦長もそう言ってましたな」
「ヒトラーは海軍音痴だが側近には俺以上に頭がキレる奴がいる事は分かったよ……大したもんだ、陸軍出身の独裁者に空母の重要性を説いたんだからなぁ」
「ソビエトレンポウは不幸デスネ」
「うむ、あれは地政学上仕方ない……」
葵川は珈琲濃液(コーヒーエキス)を飲むと言う。
「その為にもロシアの巨大国家化は避けなければならない、社会主義体制の儚さはヒトラーにより実証された事を利用する。さてさて、トロッキー氏をどう担ぎあげる気かな」


クラーフツェッペリンはノルト.オストゼー運河(キール運河の正式名称)で立ち往生しており、閘門が故障しているのだ。夜が明けたとは言えこの状態で空爆でもされたらパナマ運河の米艦艇の様になってしまう。故障の原因はどうもゲシュタボが作業員を誤認逮捕してしまい、運河管理局に属する作業員らがサボタージュをしているのだ。作業員をレジスタンスと思いこんでの逮捕劇には溜まったもんではない。結局海軍側がゲシュタボと運河管理局を仲裁して数時間前から閘門を動かすモーターを修理している。
海軍が仲裁したのはこのまま敵軍の空襲で運河と共にクラーフツェッペリンも沈めば甚大な被害になる、その原因がゲシュタボによるレジスタンス誤認逮捕となれば国家体制すら揺らぐ。ゲシュタボのトップを叱責、誤認逮捕した隊員の転属&前線送りと言う落とし前で解決させたのである。ゲシュタボ側は海軍の介入で不満が溢れているが最悪の事態にもなればどうなるかはよく知っているので承諾した感じだ。
「お咎めなし?」
「ああ、総統府から来た将校様は今回は前海軍大臣の暴挙らしく、彼の命で責任を執るそうだよ」
射殺した司令官と副司令官の遺品は棺に納められ、ハーゲンクロイツの国旗に被せられた状態で内火艇で対岸まで輸送され二人は甲板から見送ったのである。二人の遺体は毛布に包んだ上に重しを付けて放り投げた、グラーフツェッペリンに配属された全士官や兵士は二人から何かと嫌味を云われていたので誰も司令官と副司令を庇う事はなかったのである。
「艦長、閘門修理完了です」
「やれやれ……」
地中海艦隊ドイツ隊の事が気がかりだ……。

その気がかりは最悪の事態を引き起こしていた。地中海艦隊ドイツ隊は未明には極光艦隊前衛遊撃艦隊所属航空隊の偵察隊に発見、本隊は護衛部隊を残しつつも全ての航空隊を発艦させた。この際アークロイヤルに乗艦していたハリソンは改めて日本海軍の錬度がアメリカの航空隊に匹敵する事を実感させた。英国東洋艦隊に属するアークロイヤルやプリンスオフウェールスは今回も艦載機全ては直衛にしているのは追加戦力が限定されるからだ。
「直接の連絡手段がつかないのももどかしいですな」
「ハワイでの交渉はホワイトハウス次第」
「日米講和条約……太平洋平和条約が締結されると言うのは本当なんですね」
「はい、トルーマンもこのまま大統領を守れなかったら史上最低の大統領と言うレッテルを貼られます。政策転換しなければ最悪の事態が起きかねません。黒人やヒスパニック系国民が社会的地位向上を求めて反乱を起し、ヒトラーがそこにつけ込めば」
「なるほど……頭が痛いですな、我が国も窮地に立たされてインドを初めとして独立、近代インフラ整備を進めざる得ませんがこれも贖罪と思えば……」
米軍内でも黒人やヒスパニックと言った非白人種への差別が酷かった。
更に日系移民は志願兵と言う形で欧州戦線への投入が始まっており、ドイツやイタリア系移民も傭兵と言う形での投入を検討している。米国人では限度が出ているよりも敵国移民強制収容所の維持費やそれに対するリスクが膨らんでおり苦渋の策と言える。ハリソンは白人にしては珍しく人種差別者ではない、寧ろ今の白人至上主義を危惧している一人である。何よりもガンジー氏の運動にも理解を示しており米国政府が執るべき道と信じている。戦時中に非白人主による動乱が起これば南アメリカ各国はナチスに侵攻、これらの国も実質アメリカ合衆国の植民地の様なモノだからヒトラーに同調や傾倒する指導者が出てもおかしくはない。


ナチス独逸第三帝国海軍地中海艦隊独逸隊は極光艦隊の航空隊や前衛ア号潜水艦の波状攻撃を受けていた。

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