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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 70

云わば三竦み状態と言う訳だがこれも日本の狙い目である……残念な事にナチス独逸第三帝国の首脳陣はこの真意を見抜けた者が居てもヒトラーが理解するには時間がかかったと言う。故に前線に出ている将校は伯林(ベルリン)からの無理難題に直面し犠牲多き事態になり、グラーフツェッペリンは地中海艦隊独逸隊の囮にして本国へと戻るしかなかった。
「司令官は?」
「部屋で震えてます」
「な、なんだって……」
副司令官が背を向けた瞬間、船長は拳銃を構えて引き金を引いた。乾いた音が艦橋に響き頭を撃ち抜かれた副司令は倒れた。
「副長。司令官と副司令は共に投身自殺し遺体捜索困難だ」
帆船時代からの海の男として生きた船長はそう告げると副長は頷く、大体こんな若造に空母の指揮を任そうとするとは……彼は云う。
「……我が海軍は見かけ倒しだな」
「全くですね」
日本海軍の充実ぶりを見るとあの時亡命した同胞の選択も正しかったと思わざる得ない。
「今回の一件は」
「よくて銃殺刑、悪くてユダヤ人同様にされるかな……」
船長はそうなった時は自決する、副長は陸に居る女房よりも付き合いが長い船長を見て感じていた。
「副長、万が一の時はこの船を頼むぞ」
「はい」
ジブラルタルを見ると死屍累々になった友軍艦艇の多さに息をのんだ。
「敵潜水艦は発見できません」
「だろうな……Uボートがこンなに張り付いているとは」
僚艦が照らす探照灯の先にはUボートのシュノーケルが海上を走っていたのだ。
「だいぶやられてますな」
ジブラルタルに対岸にある基地も海上から分かるほど空襲を受けていた。
「日本が戦艦空母に拘っているのはこれだよ、艦載機の数を少しでも増やせるからな」
「あ……」
そうだ、夜戦も想定している以上は対レーダー戦を想定しての電子偵察機も必要になる……空母に限らず大きさが決まってくるのは三つの要衝運河の幅に関係がある。地中海と紅海、インド洋を結ぶスエズ運河に大西洋と太平洋を結ぶパナマ運河、そして要塞運河と異名を取る第二パナマ運河要塞だ。その為か戦艦の大きさは殆ど同じと言う結果になる……下手にデカイ船を作ると遠回りになる。最もドックの大きさを考えるとそんなにデカイ船は作れないのである。
「副長、目に焼き付けておけ……これが我々の犯した罪だ」
「はい」
ジブラルタルを抜けたグラーフツェッペリンと護衛艦らは独逸本国へと急ぐ。
「通信が繋がりません」
「遅かったか……」
船長は舌打をする。

伯林(ベルリン)は開戦以来英国空軍は愚か米国空軍爆撃隊も到達しなかった……それは強固なレーダーサイドによる賜物であったが極光艦隊の艦載機群は勇猛にもそのレーダーサイドを爆撃したのだ。虎の子の大型飛行艇海鴉による精密誘導爆撃も実施、これは独逸軍の核施設を想定しての行動であった。
「英国/亜米利加空軍の爆撃機が伯林を爆撃してます」
伝令兵の声とは裏腹に葵川は云う。
「出来れば敵国市民にこの様な悲劇を遭わせたくなかったが……仕方あるまい」
「総統府は爆撃した筈です」
「伯林(ベルリン)にある総統府は単にヒトラーの仕事場だ……恐らく別の山岳地帯に中枢がある」
「まるで松本大栄本部の様ですな」
後世世界でも松本大栄本部構想があり、橘らはこれを引き継いだのはナチス独逸第三帝国との戦争に備える為であった……今のところは陸軍の戦車を初めとする兵器の開発工廠として機能させ、精密機器の開発拠点の一つだ。
「亜米利加の核攻撃を想定すればヒトラーもそう動く」
「ロモアラモスの事は知れていると……」
「恐らくな、もしかすると核反応の情報も手に入れているかもしれん」
「デハ、ベルリンクウシュウハカエッテヒトラーノ……」
「焼け野原で演説するつもりかな」
葵川は懸念の視線は伯林(ベルリン)へと向けられていた。
「影は北上しているな」
「はい……いよいよですな」
太秦に居る“同級生”であり“愛弟子”である船長を気にしている。
「大丈夫ですよ……何しろあの列車胞を引きずり出すにはコレしかありませんですからね」
「艦載機、収容完了です」
「鮮やかでしたね、レジスタンスは」
「うむ、これを取りまとめる英国情報部も恐るべしだな」
後世世界の欧州本土内は瑞西を除けばハーゲンクロイツに染まってはいたがレジスタンス活動は活発になり占領地域に置いての抵抗は戦場宛ら、女すらおちおちだけない程だ。今回のレーダーサイドの攻撃も独逸国内にある複数のレジスタンスグループからの情報提供によるもので中には防空基地に爆弾を仕掛けた猛者も居る。特徴としてはレジスタンスグループの多くは普段は独逸軍兵士になっている者も多く、彼らは引き込み役となっていた。

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