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戦艦空母艦隊
その他リレー小説 - 戦争

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戦艦空母艦隊 69

「内容を見ました……宜しいのですか?」
「出抜けるほど甘くはないです……貴方方は拿捕したUボートを使った欺瞞工作をしていますね」
「ほう、そこまで……確かに欺瞞工作をしてます」
「やはり、エグニマ以上の電算機があるのですか……ふふ、太平洋の連中は負ける訳ですな」
ハリソンの言葉に葵川は言う。
「アメリカ合衆国ならそのような下地が出来ている筈ですが?」
「太平洋の連中は日本海軍を過小評価したのですからね……さてどうするべきか」
整備兵の話ではエンジンが致命的な破損により修理不可能であり艦隊に同行させている工作艦の工作員も船内の工作機器で出来ても品質には自信が無いと言う。
「ユナイテットステーツからです、ハリソン艦長をイギリス本土まで保護してほしいと」
英国軍の伝令が言うと葵川は頷いた。
「大西洋での作戦行動は日本海軍は不慣れです……アドバイスを頂いてもらいたいのです」
彼は英国本土までアークロイヤルに厄介になる事になる。
数時間後、地中海を航行するグラーフツェッペリンの艦橋は次々と上がる情報に混乱をしていた。日英軍はジブラルタルを強襲、しかも敵潜水艦により駐留していた艦船が各坐や沈没していると言う。
「我が海軍の対潜哨戒は何をしていた!」
「英国のSシップも含まれているのでしょうか……それにしては」
Sシップは英国の潜水艦だ、第一次世界大戦後の二度の軍縮会議により各国は潜水艦に活路を見出していた……無論潜水艦も保有台数制限があったが潜水艦と言っても第一次世界大戦時には実質海上での使用が多かったのでそんなに保有台数制限を設ける事はなかったのである。だが潜水艦のポテンシャルをほっておく訳でもない……故に対潜哨戒戦術の構築は必須であったがナチスドイツ第三帝国海軍はその点も遅れていた。
「数が多過ぎる」
副長は考え込んでいた。

確かにイングランド海軍潜水艦も展開していたが雷撃したのは潜水艦ではない、日本海軍が密かに開発した“海底魚雷”や“時限起動魚雷”による攻撃が殆どである。

日本海軍は地政学上海に囲まれほぼ南北に延びる列島防衛には海軍の増強が必須であるがそれほど人口は多くはない……橘らが女性にも士官への積極的採用も男性のみでは限度があるからだ。陸軍との人材の取り合いが起こればこの戦争は負ける……対潜哨戒も万能ではない、そこで考え出されたのが潜水艦版地雷と言うべき“海底魚雷”と“時限起動魚雷”である。亡命独逸人やユダヤ人により日本は電子工学が発展したお陰で精密誘導装置が開戦前には実用化、この二つの魚雷は海底にセットし敵潜の音源を感知すると起動する仕組みになり、共に酸素魚雷/ワルター魚雷であるので短距離でも回避不可能だ。海底魚雷は発射装置に入れられた魚雷、時限起動魚雷は通常潜水艦や海上戦艦からも射出可能である。日英同盟前に富嶽は英国へ行く度にこの二種類の魚雷を搭載、日本への帰路の際には英国人科学者とその家族を日本や亜細亜各国へと脱出させていた。
つまり第二次日英同盟はチャーチル元首相らが早めに動いており照和十七年には日本国政府外務大臣が印度に居るチャーチル氏に逢うべく極秘で渡航し、ナチス独逸第三帝国軍の原子爆弾に関する情報も得ていた。そして日本海軍航空史上、いや世界の航空史上に残る飛行艇による核兵器研究所の破壊、無事に日本へと帰還出来た事によりこの様な事が出来るのである。米国にこの機密兵器が渡る事も懸念されたが当時の米国大使と英国政府は色々と問題を抱えていた、当時のジョン.F.ケネディ駐英大使の一族の出がアイルランドであり数世紀前から英国から独立を求めている地域だ。戦時下でなければ内戦になっていたと言うほど関係は悪かった……チャーチルらは大戦終了後にアイルランドを独立させる事で親ナチス化を防ぐしかなかった、即ち今の英国にとって日本は亜米利加合衆国よりも信頼に置ける国である。
日本国としても近代化に惜しげもなく協力してくれた過去があるイングランド連邦は恩師の一人……ナチス独逸第三帝国に飲まれる事はその伝統が失いかねない、何よりも英国との同盟により太平洋戦線の米軍にとっては迂闊に日本へ手が出せなくなった事は英国にも利点がある。パナマ第二運河要塞は一部だが機能しており、何時でも機動艦隊を差し出して布哇奪還に動けるのだが……その戦闘すら英国に居る駐英大使の立場を危うくする。太平洋戦線の海軍将校や兵士らのフラストレーションが高くなっておりクーデターの噂すらホワイトハウスの笑い話では無くなっていた。白人優位主義社会である亜米利加にとって他の人種は劣等種に過ぎない、黒人の学識者らにとってトルーマンもヒトラーも同じ穴の狢(むじな)と思っている。更に各移民世代らも人種差別に苦しめられており特に日独伊の三ヶ国から移民は厳しい環境での隔離が続いただけに黒人と結びついてクーデターでも起これば……ホワイトハウスの主は難しい舵取りを続けている。

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