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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 63

葵川はナチス独逸第三帝国の政治体制を考慮すればヒトラーの側近が関与していると推測していた。
「進路そのまま、予定通りに第二ラウンドは艦隊戦だ」
「プリンスオフウェールスから発光信号、“クレノカイグンコウショウニカンシャスル”」
艦隊戦と言っても空母の登場、電探技術の実用化はその形式を大きく変えている。
「しかし心配なのは……」
「独逸機の共通化か……海軍と空軍の対立で進まないと思ってはいたが」
独逸海軍の艦載機は全て空軍機の改修型、これは艦載機の設計を初めからすると時間がかかる上に海軍艦載機乗りは空軍からの移籍した者が多いのが理由だ。艦載機化は発動機の強化や着陸車輪装置の強化や主翼の折り畳み機能を付与すれば済む話なので既に前線に配備された陸軍機の改修は順次進められているらしい。
「つまり、その改修した機体を補充すれば幾分の戦力回復が出来ると言う事だ」
「やはりロ号弾を使いますか?」
「いや……あれはここでは使いたくはないがね」
円盤機の噂が真実なら使わざる得ない、今の墳進弾や他の主砲弾では無理かもしれないのだ。
円盤機の噂は真偽の程は英国の情報網も把握はしてないが複数の地域に空爆に赴いた米軍爆撃機の損耗率が激しいのは事実、敵の首都である伯林(ベルリン)も総統府周辺に空爆が及んだ事が無い。
「ヒトラーは簡単に現場の都合もお構いなしに変えるからな」
「なるほどロ号弾は使いたくない訳ですね」
「この艦隊の目的は敵超長距離列車胞要塞の壊滅だ」
ナチス独逸第三帝国陸軍は列車胞と呼ばれる長砲身を用いた砲術に関してはリードしている……無論日本軍も開発を進めており戦艦空母化で宙に浮いた大和型主砲の幾つかを陸軍に提供している。鉄道も戦争を決める重要な要素になりソ連を初め欧州の複数国は進軍を遅らせる為に線路の幅を広い基準にしていたがヒトラーは自国の鉄道省に命じて車軸幅を走りながら変更できるシステムを開発していた。
皮肉な事だがこのシステムは第三次世界大戦後の戦災により破壊された欧州各国のインフラ整備に活用、その後の流通面でも貢献する事になるので“ヒトラーの三大善意”の一つとされる事になるのだが……。
「列車胞ですが何の役に」
「墳進弾だよ……列車胞よりも重量が軽く出来れば脅威と言える」
「確かに……墳進弾の発射装置は軽量ですからな」
「墳進弾はこの先どんどん発達する事は確実だ、陸軍研究会も列車胞に関しては無駄になるかもと言う話はあるが墳進弾に関しても欠点はある。調達費が高くなる……その点列車胞に関しては戦局次第じゃ安くつく、なので列車胞もある程度は研究する必要もある」
「難しいもんですね」
「うむ、戦争とは最後の外交手段だが難しいのだよ」
葵川はヤレヤレと言いつつも握り飯を頬張る。
「ほう、カレー風味か」
「乾燥カリーって言う奴ですよ」
今日は金曜日だったな……葵川は香辛料の香りを楽しみつつも味わっていた。


一方、印度洋西方に展開する西処女亜(ウェストバージニア)に雲龍型装甲空母一番艦雲龍、そして三笠型海防航空艦四隻は少し前に先行している畝傍(二代目)と特設空母安将丸と連絡を取り合う。
「畝傍(二代目)、安将丸の攻撃隊が独逸船団へ攻撃を開始!」
「九六式でよくやるよ」
愛知D1A九六式艦上爆撃……日中戦争時の主力急降下爆撃機でこの戦争でも第二戦機になる筈であったがその役目を木零が担う事になり訓練機や予備役機として可動していた。何しろ安将丸に着艦できる機体はコレしかないのだ。航空士は札付きであるが腕前に関しては問題は無いと言うが。
「雲龍に下命、攻撃隊は発艦」
やがて畝傍(二代目)から独逸商船団に殴り込みをかけ安将丸は待避、一応機関やスクリューは海軍研究機関の船舶部門から試作型の提供を受けて換装、対空機銃も試作型とは言え最新鋭にしているとは言え地中海艦隊の航空隊は脅威である。分類上MACシップに過ぎない安将丸は装甲甲板を持ってない……悪く言えば腕が未熟な独逸/伊太利亜海軍航空隊でも沈められる公算が高い。
「幻龍改は対潜警戒へ」
安将丸から艦載機全機収容を完了した事を知らせる暗号文が届いた。
「よくやりますな」
「うむ……後は畝傍(二代目)が待避するだけだが」
上村は何か嫌な予感はしていた。


畝傍(二代目)は九六式艦上爆撃による雷撃に浮足立つ独逸商船団に主砲で撃ちまくる。
「探照灯照射!」
「九時方向に独逸駆逐艦!煙幕に紛れます!」
「あの船、商船を楯にする気……やるわね」

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