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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 59

「航海長、地図を」
「はい」
「地中海艦隊のザクセンとグラーフツェッペリンが共に行動する事も考えられます。亜米利加の大西洋艦隊が来るとなると」
「ほう、九竜と同じ読みか」
「ですが、海軍内でも対立があれば……グラーフ.ツェッペリンは阿弗利加沿岸沿いを南下、地中海艦隊は須画図運河(スエズうんが)を通ってきます」
「亜米利加次第ですか?」
「葵川中将はそう読んでいる筈だ、亜米利加大西洋艦隊もここらで戦果をあげないとトルーマンが下ろされかねないからな……亜米利加大西洋艦隊は必ず出てくる筈だ、日英同盟で泡食っているのは米軍だからな」
「かっかっかっ!相変わらずのよみだのぉ……葵川中将はそれを見越してUボートを拿捕しまくって訳じゃ!!」
「艦長」
「その為にも畝傍(二代目)には欺瞞情報を流しまくるU号各潜の母船として役目を担う」
畝傍(二代目)は大戦前半時には印度洋に展開するイ号潜の補給と健康診断も担っており、特に畝傍温泉と呼ばれる入浴サービスは好評であった……何しろボイラーで熱した湯をパイプを使って海水や空気で冷やすと言うのだ、その為か畝傍(二代目)は他の戦艦よりも石鹸の消費量が多い時もあり、印度洋で展開する潜水艦乗りは畝傍(二代目)の人気が高い。
「しかし、畝傍(二代目)では潜水母艦としての機能は不十分、そこで英国のMACシップを参考にして簡易空母“安将丸”、まあよく人員が集まりましたね」
「うむ、航空士全員軍刑務所に居たからな」
「はい?」
「そうじゃな、書類が届いてないのか……まあ軍刑務所に居たとはいえ重罪を犯しては無い。無能な上官に反攻した連中ばかりでな……安将丸はカタパルトをつけても今の海軍機を運用できない、そこで旧式の複葉機をあてがう事にした」
「無茶苦茶ですね」
「欧米で言う司法取引じゃよ……安将丸の艦載機はあくまで偵察、逃げ脚だけは速い連中ばかりじゃ」
MACシップとはタンカーや貨物船を簡易空母にする、イギリス海軍が考案した船である。日本でも特殊航空母艦三隻がこれに該当するが海軍が建造したしまね丸と陸軍が建造した山汐丸、熊野丸である……今は三隻とも海軍所有になり日本近海を哨戒する空母として運用、対潜哨戒回転翼機母艦として活用されている。
「……大変なもんを頼まれたな」
上村はそうつぶやいたのである。
一方、極光艦隊は当初はトリスタン.ダ.クーナ諸島での訓練予定を変更、英国のプリンス.オフ.ウェールスとアークロイヤルに四隻のアテナ級と共に南米のウルグアイを訪問する事になる。この国は親英国であり、多くの英国国民が亡命している地域と同時に亜米利加の裏庭である……訪問の目的は世論に自分らの正義を訴える情報戦である。
「なるほど……グラーフ.ツェッペリンをウルグアイ沖までおびき寄せるのですな」
「そうだ……ふふ、裏庭に来た我が艦隊と独逸本国艦隊をどちらを相手にするか、どちらも相手にするのならトルーマンはそれまでの男だ」
艦長は葵川の言葉を理解した。日英同盟をむすんだ今、日本との戦闘行為は英国国民にどのような心情を与えるのか……亜米利加国民の世論を考えると、それは間違った選択と言える。
「しかし、写真を撮影されますぞ」
「それも目的だ……飛鳥級戦艦はこの一隻しか建造しない、更に戦後情勢や空母の現存数次第じゃこいつも空母化される」
「悲しいですな」
「仕方あるまい……戦艦の運用コストを考えると膨大なモノだ、更にこの大戦後にまた複数の国家間の戦争が起こるとは限らない。これはナチス独逸第三帝国が倒れたらの話になるが、旧占領地帯ではその後の主導権争いが起こるのは目に見えている。中東や阿弗利加は特にな……その際日本は平和維持活動を国連から求められる、空母の方が使い勝手がいい訳だ」
「はぁ」
航海長には難しい話だったらしい。
「鵜具瑠藍(ウルグアイ)は蹴球(サッカー)が盛んで野球の様に職業チーム(プロチーム)に試合機構(リーグ)に職業選手(プロ選手)も多いと聞いてます」
「ほう、近頃は初等学校の体育の授業にも取り入れられていると聞いているぞ」

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