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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 57

「これで独逸本国もUボートだけじゃ埒が開かないとしてグラーフ.ツェッペリンを出してきますな」
「彼ならどうするかね?」
「独逸も遅れを取ったとは言え、三国同盟時代には我が国から赤城の設計図が渡っています……聞けば仏蘭西本国の建造中の空母まで接収したそうですな」
「うむ……装甲化研究も進んでいたそうだ。何分対空砲火は脆弱だそうだが」
書類に判子を押すと肩を叩く橘。
「装甲に関しては戦車開発にも通じてますからなぁ……縄張り争いがあるがヒトラーの声ですんなり行く」
「そこが怖いのだよ、あの国は」
橘は背伸びして窓を見た。


ナチスドイツ第三帝国本国首都ベルリン……Uボート同時多発大量拿捕と言う失態に海軍首脳は真っ青になり、海軍大臣はどう取り次ぐか迷っていた、数時間前に日本との同盟を結んでいる亜細亜各国で現地に居るスパイより確認されたのだ。
「グラーフ.ツェッペリンを出せ!日本のキョクコウ艦隊を滅ぼす!」
海軍大臣はその言葉を部下に伝えるも彼らは唖然とした。
「し、しかし総統閣下の命令が無ければ……」
「威力偵察の際に遭遇したと言えばいい……空軍も大口叩いてなんと言う様だ!所詮艦隊を滅ぼすのは水上戦艦艦隊だ!!!」
海軍としてはこの失態を挽回するには極光艦隊殲滅しかない、しかしグラーフ.ツェッペリンは本土防衛艦隊の航空基幹、その艦載機量で小国の空軍に匹敵するのだ。
「し、しかし護衛防空/防潜巡洋艦の編成途中で」
「改ビスマルク級を出してもかわまん!!!それともSSかゲシュタボに射殺されてもいいのか!!」
海軍大臣言えとも可能性がある……彼は保身のために半ば強引に奥の手を出したのだ。

そしてこれは葵川の思惑に合致していた事を彼らが知らない。


ナチスドイツ第三帝国海軍は開戦前までは海上艦の配備にも力を入れたがヒトラーが陸軍出身で尚且つ自身の手柄を誇示する為にUボート開発へとシフトしたのである、グラーフツェッペリンですら建造中止して解体される寸前になり追い打ちをかけるように日本が三国同盟を破棄した事で海軍将校らの発言力は陸軍や空軍にも劣った。そんな中でも技師官らは少ない予算でやりくりして空母開発を進め、同盟国のイタリアが建造放棄したモノや征服したフランス本国から接収した建造途上の空母まで接収したのである。日本海軍のスゴさはスパイから齎される情報だけでも脅威と感じた。しかしヒトラーのUボート信仰を捨て去るには容易ではなかった……そのヒトラーですら海軍増強を進めざる得ない事情が中東侵攻、陸路では補給物資の運送に限度があり海軍の強化に乗り出し、ロモアラモス原子力研究所の爆撃を知ったヒトラーは海軍増強を指示していた。待ってましたと言わんばかりに技師官や将校らが練っていた計画を実現、その一つが“護衛防空/防潜巡洋艦”と言うカテゴリー艦だ。
これは日本海軍/イングランド海軍が共同開発した“三笠型海防航空艦/アテナ級イージス”と全く同じコンセプトである……ナチスドイツ第三帝国海軍にとって中東周辺の海域、特に紅海やスエズ運河に地中海の制海圏死守はナチスドイツ第三帝国内の経済にも影響を及ぼす。日英軍はそこを狙ってくる事は必須、Uボートしか取り柄が無いこの海軍にとって海軍航空隊の育成と同時進行にしたのがこの護衛防空/防潜巡洋艦の実用化である。幸いにも艦砲関連に関しては陸軍からの協力(総統閣下の直々の命令書により、陸軍大臣はしぶしぶ承諾)もあり日米両海軍にも肩を並べると言ってもいいだろう。
「そのような苦労をお忘れですか?」
「忘れては無い」
「では大西洋経由で出ます……スエズ運河だと日本海軍のアジア派遣艦隊に遭遇します」
側近はそう告げると海軍大臣は部屋を出た。
情報によると大西洋にある英国領トリスタン.ダ.クーナ諸島に一大拠点を築くと言う事らしい……側近はその情報に疑問を感じUボート数隻を偵察に行かせた所、艦長ですら想像を絶する人工港湾施設が敷設途中であったのだ。これに空軍も偵察機を出して上空から確認、その大きさに乗務員全員が息をのんだと言う。写真から見てもその大きさに側近らは驚いた。
「考えが甘かった……」
「聞けば太平洋の大型船の港湾施設をもたない島々の為に……開発されたモノです」
「クソ!」
側近を纏める将校は拳で壁を叩いた。
「地中海艦隊にも追撃する様に進言するしかない」


葵川は敷設途中の人工港を飛鳥登載の回転翼機“海蝙蝠”から視察、隣にはトリスタン.ダ.クーナ基地の司令官が座っていた。
「素晴らしい出来です」
「戦後は民間にも開放、避難港の役割を考えてます」
「そして国連の出先機関を集約させるのですね」
「アフリカが戦後どうなるかは未知数。南アフリカ連邦を初め英国植民地は近代インフラ援助をしてますが……数カ国は戦乱が怒るでしょう」
「葵川中将、貴方は素晴らしいですよ」
「これを考えたのは私ではありませんよ」

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