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戦艦空母艦隊
その他リレー小説 - 戦争

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戦艦空母艦隊 56

「ウチが開発して実用化したと言う事は向こうでもあるのさ」
「そ、そんな」
「だが、改一型はこんな状況下でも想定して開発している!ナチの野郎、パラシュートの準備は出来ているな?」
砲術長はスイッチを押すと越後から三発の墳進弾が上がり、更に魁皇からも四発の墳進弾が夜空を切り裂く。
「各銃座弾幕を張れ!」
「影が艦隊陣営から離れます!煙幕展開中!」
「飛行爆弾まっすぐ影に向かってます!」
「井伊艦長!」
通信機に叫ぶ司令官の声に井伊は言う。
「流石に飛行爆弾を受け止めるかどうかはわかりませんが……上手く行けば」
飛行爆弾は艦隊の各戦艦から射出された火の玉や銀幕にもめげずに進んでいる。
「夜間爆撃の要領でしているな、機関最大出力!」
「総員装甲室に入れ!」
装甲室とは複数にある潜水艦の船体を応用した耐爆/耐圧シェルターであり、これ自体潜水艦の様に浮力を持たせ、艦橋真下にある装甲室は巨大な球体であり元は海軍某将校らの開発途上であった深海探検球体であり、自動難燃瓦斯膨張装置式浮袋を装備しこれ自体が巨大な救命筏になる。囮になる以上乗務員の安全な脱出には課題であったがこれの登場により砕氷艦隊に登載する全天候型救命筏の原案になり、民間貨物船/客船/貨客船にも装備を義務化、特に北海道や沖縄諸島の航路を持つ大型船舶に優先された。これには橘の前世記憶にある対馬丸を初めとする学童疎開船の襲撃沈没事件を心痛に思う気持ちの表れである、その為か緊迫化した際の沖縄諸島の非戦闘員の疎開計画も練っている。
「けっ!ボッシュ野郎!この太秦をただの標的船とおもうなよ!!!」
善次郎が叫んだ瞬間、飛行爆弾はコントールを失い太秦をかすめ艦橋まで届こうか言う位の水柱を作ったのである。
「撃墜!魁皇と越後の改一型イ号墳進弾で木端微塵です!」
「浮かれるな!引き続き警戒!オットー暗号通信を極光艦隊本部へ」
「既に送信しております」
「仕事が早い部下を持つと楽だな」
「操舵手、亜細亜派遣艦隊への合流を急ぐ。総員耐衝撃体制解除、甲板員は見張りに付け!命綱をつけ忘れるな!」
副長の指示を善次郎はただ黙って聞いていた。


極光艦隊は前衛艦隊と司令艦隊に分かれ、作戦を開始……前衛艦隊は家府街(ケープタウン)沖合に集結していたUボート軍団の前に一歩も引かずに雷撃戦を展開していた。
「欺瞞情報に引っ掛かってますね」
瑞穂の第二艦橋は通称情報統合艦橋であり各ア号潜と搭載している狩鷹各機からの情報を精査し処理、更にオットー暗号による僚艦への通達を担う情報戦の要である。
「Uボートがポンポン集まってくるのはいいが……キリがないな」
航空参謀長は今後の事も考えてそろそろ敵の頭をどうにかする算段を始めていた。
「狩鷹3より報告、右舷前方に反応……」
「距離があり過ぎる、阿蘇、富士、三原に下命……対潜弾頭を装填」
富士型巡洋空母は瑞穂とは異なり多目的攻撃機を主体にした艦載機を揃える打撃部隊を持つ妙高型船体を利用し後部飛行甲板はV字型であり運用効率が高い。そして対潜弾頭とは文字通り戦艦の主砲で発射しその落下速度で敵潜を砲撃する弾頭だ。
「富士、阿蘇、三原、共に一斉射撃!」
巡洋とは言え主砲の威力は高い。
その轟音と共に打ち出された砲弾は瑞穂を狙っていた敵潜を捉え、船体を貫通……更に傍に居た別の僚艦さえも襲いかかり船体がまっ二つに割れたのである。
「撃破!」
「喜ぶでない……」
瑞穂の船長は喜ぶ部下らにそう言い放つと敬礼をする。彼らの為にも狂ってしまった独逸をあの独裁者から解放しなければならない。



東京では橘らが勲章授与の為に仕事をしていた。極光艦隊からの申請分は目的地の英国北部での授与する事になるので富嶽の出番である。その書類を決裁すると橘の書斎に来客が見えた。八八艦隊の総司令官である織田である。
「どうです、期待通りの男でしょう」
「期待以上だ、織田大将……君まで真似るとは思いもしなかったが」
「言われてみたら納得できるんですよ……葵川は偏屈者だが常に先を見ている男ではない足元も後ろも見ている、この国も、世界も」
「政治家に向いているな」
「彼は“んなもん俺が出来るかぁ!”って……続報ですが、南阿弗利加沖の鮫退治は成功したと」
「そうか」

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