PiPi's World 投稿小説

戦艦空母艦隊
その他リレー小説 - 戦争

の最初へ
 53
 55
の最後へ

戦艦空母艦隊 55

船長は汽笛を連続して鳴らすように指示、そして探照灯を全て着ける。
「せ、船長!前方に戦艦!」
「敵戦か!」
「あ、あれは」
航海長は唖然とした、それは飛鳥型戦艦だ。
「信号です、読み上げます“本艦は只今極秘作戦遂行中ニツキ目撃ジジツハ一切他言無用ナリ、貴船ノブジノ航海ヲイノル、オイコシキョカヲアタエル”」
徳州丸が追い越し、その船体が闇に消えた。
「……二隻も建造していたのか」
「分からん、兎に角今の事は戦争終結後までマスコミに漏らすな、乗務員に終始徹底させてくれ」
船長は戦後になりこの船が太秦と知るのは自身が白寿を迎えた時であった。


「申し訳ありません」
「仕方あるまい……まあ直ぐにこれも消える運命だ」
太秦の艦内にて“葵川の愛弟子”と異名を取る井伊善次郎大佐が笑っていた。彼は葵川とは大学時代の同級生であり東大卒でありながら海軍士官学校に入った異端児の一人である。
「大方幻覚を見たで終わるし、あの病院船は法定伝染病対策船だ、カルテ位は書き換えるさ」
「怖いですね」
「ウチの実家じゃよくやっていたし」
彼の実家は滋賀県でも屈指の医系名門であるが善次郎は医者を嫌い、両親とかなり衝突した末に東大の心理学に放り込まれた経緯がある、そんな時に五十の手習いで門を潜った葵川と出会い共に勉学にいそしんだのである。善次郎にとって彼は実の父親以上に話が分かり、尊敬の念を抱いた。東大卒業後は海軍士官学校の名門である横須賀校に主席合格/卒業と言う前代未聞の偉業を達成した。
「大佐、また民間船です」
この船を運航すると友軍艦艇にもさっきの様な信号を送る必要があるし、艦内は禁煙……そりゃあ防火塗装こそしているが気休め程度だ。
しかもこの船は張りぼてである……主砲や副砲は実際に火を噴く事が無いが対空砲や高射角砲は自動給弾システムを搭載した最新鋭で飛鳥に登載されているとの同型、標準も自動化されている。
「まっ、この船でUボートが張り付けば亜細亜派遣艦隊の出番ですからね」
「葵のおやっさんが根こそぎ採ったと思うがね」
葵のおやっさんとは東大時代の葵川の仇名で、学校では教えてもらえない大人の遊びも教えてもらい彼のその一人である。
「それよりも向島はどうだ?」
「現在建造順調です」
巨大特務木潜向島はこの太秦を木潜化した様なモノであり、どんな戦艦や正規空母でも化けられると言う。因み太秦や向島は日活撮影所の名称である。
「亜細亜派遣艦隊より連絡……マモナク護衛ニハイル」
ヤレヤレ、これを囮にしてUボートをおびき寄せる気か?井伊はため息をついた。


亜細亜派遣艦隊とは長門型戦艦二番艦越後を旗艦にした機動艦隊であり、亜細亜各国の海軍近代化支援も担う艦隊だ。その為か越後は航空戦艦化を免れているが後部艦橋に第三主砲塔は撤去し代わりに回転翼機発着甲板を設置。更に三連墳進弾発射装置を登載、これは電探や通信装置のコンパクト化に成功したからこそ実現した。
「影武者を確認」
「部下には飛鳥型二番艦といいふくめているか?」
「はい」
「それにしても葵川中将は奇策が好きですな」
「あの方は早くから独逸との同盟を危険視していた……それが亜米利加が仕組んだ罠と見抜いていた」
「もしあのままなら……」
「我らはここに居なかった」
艦隊司令官と越後の艦長は感慨深げになる。
「魁皇より通信!ア号潜全潜がUボート複数と戦闘に入りました!」
「狩鷹による支援は可能か?」
「入れ替わりが激しく……同士討ちの可能性があります」
「ちっ、対潜警戒を密に!」
「左舷より魚雷、航跡6!」
「新手か!左舷各員へ水母型迎撃機雷射出!」
専用の射出機から連射された砲弾は海面に着水すると浮上し下部が分離する……魚雷を迎撃する為に海面を一斉爆破して水の壁で魚雷の機動を変えたり誘爆をさせたりする。専用射出機は云わば対空砲座の回転銃座を応用しており輸送船にも登載、これは敵潜のターゲットが輸送船になる事も想定しているからだ。
「魁皇より伝達、対空電探に反応あり……高度一万m以上、IFF反応敵判定」
「魁皇に下命、改一型イ号墳進弾使用許可を与える!こっちもやるぞ!」
「座標受信確認……改一型イ号墳進弾を使用する」
三連装カタパルトに墳進弾がセットされる。
「敵爆撃機、誘導弾と主しき物を投下……」
「飛行爆弾ですか……」

SNSでこの小説を紹介

戦争の他のリレー小説

こちらから小説を探す