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戦艦空母艦隊
その他リレー小説 - 戦争

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戦艦空母艦隊 50

この竜宮使魚(りゅうぐうのつかいさかな)とは攻撃する為の魚雷ではなく、敵潜に発光/電波ブイをつける為の特殊魚雷、元は海底に座礁した潜水艦を探す為の道具として考案されたものを改良して今回の作戦で初使用する……無論国内ではア号潜水艦らを動員して幾度も試験運用してはいるがUボートに取りつくかどうかは分からない。竜宮使魚は狩鷹機内にある爆弾庫から静かに落とされ、Uボートの推進音を感知すると二重反転スクリューが作動と同時に狩鷹からワイヤーを切り離している。そしてUボートの周辺を周遊、魚雷本体から伸びるワイヤーには特殊合金製の永久磁石がありこれで船体に張り付く、そして永久磁石には接触探知装置があり一定数に反応すると本体にあるリレー式計算機が電波/発光付浮袋を展開させる。狩鷹は離水し旋回した後に敵潜を追跡する訳だ……。
「果たしてうまくいくかな」
機長も不安であったが……程無くして電波を探知した。


「機長!電波探知!発光/電波ブイからです!」
「こっちも視認した!直ぐに瑞穂に知らせろ!」
瑞穂にも知らせが届き、海坊主を乗せた駆逐艦を含めた駆逐艦数隻が急行する。一隻目は乗務員らがブイに強力な浮力を持つ強化空気膨張護謨船(ゴムボート)を括りつけるなり過ぎ去り二隻も過ぎさる。既に印度洋に夜の帳が下りている……夜間は潜水艦にとって浮上する貴重な時間である事はどの国の潜水艦も同じ事だ、素人目にして雷撃される恐れがあると思われがちだがUボートが使用する魚雷の命中精度はそんなに高くない……魚雷は海流にも多少なりとも影響を受けるので今の状況で雷撃して外せば位置が知られ爆雷と敵魚雷の嵐である、更に乗務員のフラストレーションも考えれば何れは浮上せざる得ない。葵川が予備役時代に正規の入試をパスして大学にて心理学を学んだのよく暇潰しと海軍内で笑い話になっているが彼をよく知る者は兵士の心理さえ見極めれば指揮官として大成出来ると本人から聞いており、同級生の中では軍に志願した若者も居る。
今回の作戦も葵川は開戦後に試作ア号潜に乗りこみ一週間の航海を経験、この際敢て八八艦隊に抜き打ち対潜攻撃訓練を自ら乗るア号潜にさせている。結果如何に精神力が鍛えられた潜水艦乗りでも限度がある事を確信した彼はこの様な奇想天外な作戦を思いついたのである。

「ソロソロデスネ」
「うむ、独逸人は我慢強いかもしれんな……なにぶん独裁者の海軍潜水艦乗りは前例がないから私も不安なんだよ」
「そりゃあそうですがね……」
飛鳥の艦橋にて葵川は眠気覚ましの珈琲濃液(コーヒーエキス)を口に含み苦い顔をする。
「瑞穂より連絡“浮上開始”」
「海坊主の働きぶりに期待しましょう」
海坊主、正式名称海軍陸戦特殊戦隊……敵地に少数潜入し友軍の上陸を支援し時には敵基地を撹乱したり、敵艦に乗りこみ諜報活動する屈強な兵士達である。全員特殊潜水士資格を持っているのは家業が潜水漁をしていたと言う者も少なくは無い。彼は今ゴムボートの中に身を伏せているのだ。
「隊長」
「漸く浮上か……全員海へ」
各隊員がボートにある索にしがみつきゴムボートがUボートの上に載る様にする。
「救命ボートをUボートへの固定急げ!バルーン展開!各自の浮袋も固定しておけ!」
海坊主が潜水服に背負っていた浮袋は浮力確保の為である。
「セイルへ配備完了」
「殺すなよ!」
本来は暴徒鎮圧に使う伸縮警棒を構えた隊員は出て来たUボート船長に奇襲をかける。敢て艦内に落とす様にするのは制圧する為である。
「急速潜航開始します」
「計算通りなら潜航出来ない筈だが」
隊長は黒い布で潜望鏡を覆う。
「自爆されると厄介だ!睡眠ガスでも流し込んでおけ!!!」
「情報にはない新型艦ですよ」
吸気口からボンベで睡眠ガスを流し込む。まさか新型Uボートが引っ掛かるとは思いもしなかった。
数分後、防毒マスクを装着した隊員らはUZI機関拳銃を構えて進み寝ているUボート隊員らを次々と手足を縛って行く。ここで駆逐艦の乗務員らも防毒マスクを装着して作業を開始する。


飛鳥にもUボート拿捕成功と知らせが届いた。
「そうか」
「なお拿捕したのは新型艦であり、現場判断で睡眠ガスを使用、案の定自爆ボタンと主しき物も見つかってます」

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