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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 47

欧州内は水も漏らさずの万全な体制を取るナチスドイツ第三帝国の諜報部も反対にその他の地域では若干弱くそこに派遣される将校や士官は本国から左遷された者も少なくはない……開戦前にユダヤ人の大量脱出を防ぎきれなかった事に対するヒトラー総統の腹いせと言える。中にはユダヤ人亡命に協力して日本やアメリカに政治亡命した情報将校も居ると言う噂もある……アジア地域は各都市に情報網を構築しているが日本国内の場合はクーデター後に新設された軍警察のお陰でスパイ活動がままならないと言う。仕方なく高麗国に拠点を置いているがそこも余り宜しくないと言う。
「私も信じたくはありませんが日本海軍は自力で戦艦や空母を建造できます。サムライが国を治めていた頃とは状況が余りにも……」
「し、しかしだな、現にあの新鋭戦艦は右舷が傾いて……」
「故意に注水しているかもしれません」
そうだ、戦艦の場合火薬に誘爆するのを防ぐために注水する事もある……船長は考えなおした。
「この海域から離脱する……進路を西へ」
印度洋に展開する水上母艦への合流を図る事にした。被害が大きく応急処置したが何時故障してもおかしくない状況に陥っている。僚艦との連絡も試みるが反応はない。
「日本本土防衛艦隊が出てきましたか」
「オキナワ沖のアレが本命と言う事か、くそっ!」
予想進路からマラッカ海峡を抜ける……こちらは手負いの狼だ。
「乗務員の状況は」
「軽傷者は出ましたが艦の運行には支障は無いです」
「戦闘行動は?」
「困難です、何時バッテリーが壊れるのも時間の問題でしょう」
「……仕方あるまい」
バグラットの本部は息巻いているが日本海軍は想像以上に進化していた、否ドイツ第三帝国海軍が単に出遅れたのに過ぎない。


夜間になるのを見計らい、U−177は浮上……敵艦撃沈の際に祝杯を挙げる筈のビールが全て割れた事が判明する。固定の仕方が甘かった……潜水艦は至る所に食料品を詰めておく、保存が利く加工品が中心である。
「無事に母港に戻ったらビール一本は奢る様にするか」
「ええ」
母港になっている中東某所はイスラム圏だがサダムフセインによる近代化政策により欧州化が進んでいるので酒類も手に入るようになっている。この事が中東にも急速にレジスタンス組織が結成される事態になっているのだが……イスラム教の教えが中東諸国に近代化を遅らせている事は事実である。
「しかし急ぎ過ぎている感じがあります」
「ふむ、十字軍遠征から因縁があるイスラム教にとっては今回はゆゆしき事態だ……下手すると戦後ドイツの経済や安全保障にも影響を及ぼす。それどころか欧州各国にも及ぶ可能性すらある」
「!!!」
副長らは驚いた表情になる、口ぶりはまるでヒトラー体制崩壊後を思わせるようなモノであったからだ。
「可能な限り海上航行を続ける」
「日本海軍の船足がどれくらいなモノか分からないのが痛いですね」
「全くだ」
ドイツ第三帝国海軍初の量産型航空母艦ザクセン級は三国同盟時代に齎された赤城型空母(正確に言えば巡洋戦艦天城型二番艦からの改装)の設計図を参考しているとも言われている。兎に角空母を揃えたいと言う事で戦艦になる筈であった船体を流用したほうが早いと言う訳だ……最もグラーフツエッペリンも赤城型空母の設計図を一部参考にしているとも言われている。
「補給艦はやはりスリランカ沖まで待避してます」
「そうか」
通信士からの伝令で船長は思う。これまでは耐爆バンカーにガードにされた港からの出港していたが印度洋の場合は勝手が異なり、更に日本近海まで進出するにはどうしても潜水母艦が必要であるがナチスドイツ第三帝国海軍にはそのような船はない……これはランドパワー国家指導者に有りがちな配慮の欠落である。仕方なく民間の貨物船に高射角砲や対空機銃砲座を隠すようにして即席の偽装補給船を数隻配備しているありさまだ。
「時に副長、君は何故日本軍がハワイを破壊しなかったのか……疑問に思っていただろう、別に日本軍はハワイを占拠しなくてもいけるのだよ」
「はい?」
「ハワイは火山があるとはいえ研究段階の地熱発電所や潮流発電所でも経済/日常活動に必要な電力を産み出せない、結果的に余所から原油や加工した各種燃料を運ぶ必要が生じそれを貯蔵する施設も必要だ。そして農業が出来るとは言え作物はパイナップルやサトウキビで結果的に島の外に流通させる果物がメイン……仮に重油タンクや石油コンビナートを壊滅すれば……大規模な環境破壊が起こる、更に日本海軍が制海圏を握る事は復興する応援部隊や資材を運ぶ船さえ揃わない。パイナップルが腐敗した匂いが貯蔵庫一杯になれば、下手な毒ガスよりもエコロジーな兵器になる」
「船長、詳しいですね」
「まあな、ハワイで貿易商やっていた友人が貨物船の手配しそこなって倉庫丸ごとパイナップルを腐らせた事があるんだよ。重油の匂いも凄いからな……観光で成り立っているハワイは壊滅する事になる。日本軍はそうさせないのは我々との戦いに米軍は欠かせないからだ」

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