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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 42

ポルコ.ロナッソ少佐はあっけらかんと言う感じで両手を上げて言うとSS隊員も両手を上げる。
「開戦前まではアタリア海で空族狩りをしていた“深紅の海鷲”……爆撃機のりになっているとは思いもしませんでした」
亡命独逸人日本海軍士官は彼の異名を知っていた。世界恐慌で溢れた飛行艇乗りは空族化し飛行艇で客船を襲う……船舶運用会社は軍よりも彼の様に前もって協定を結んだ飛行艇や水上戦闘機乗りに獲物を取り戻してもらった。その中でもポルコはその名を欧州全土に轟かせた飛行艇乗りであった。
「イタリア軍は全然ダメでね……飛行艇の腕を信じて移住したが爆撃機しか残って無かったさ」
程無くしてイタリアもファシストの影が覆い、最終的にはムッソリーニがイタリア全土を支配したが海軍と空軍の機動兵器ダメさは笑い話を通り越した程酷く、現場の声も無視され結果的に枢軸国の同盟国に移住、ユダヤ人と共に東の果てにある日本へと渡った将校や士官も少なからずいた。
それに反して祖国に残り、反ファシストを掲げたり、自分らの理想のファシストを広げようとする反政府組織の多さは欧州一とされたが泡沫組織が多い事でも知られ政治混乱は長くに渡る事になる。その為伊太利国内の有力企業は経営者が独逸に本社機能を移したり、永世中立国の瑞西(スイス)支社を本社にしたり、反ファシストの者は日本や亜細亜各国へと亡命してそこで起業したりもした。日本政府は亡命してきた企業経営者を支援した。

「こりゃあ驚いた」
ポルコはあっけにとられていた。
「驚いたのはこっちよ」
空族狩り時代に愛機の整備を頼んでいた飛行艇職人の孫娘がエプロンをして食事の用意をしていたからだ。

ポルコらはとりあえず横浜郊外にある軍刑務所に収監される事になるが実質的に亡命者受け入れ施設であったからだ。この施設がある自治体には多くの亡命伊太利人が住んでいた事は聞いてはいたが……。
「ポルコがここに来るなんて思いもしなかったわよ」
「フィオこそ……ホテルアドリーアドに居ると思ってはいたが」
「ポルコがイタリアから離れた頃に反政府思想狩りが厳しくなって、それでシーナさんが知り合いのシンドラーさんの秘書として欧州から脱出できるようにしたの」
海鮮パスタを出したフィオの顔を察してポルコは言う。
「無茶苦茶な事になっていたんだな」
「飛行艇横丁も半ばドイツ軍の飛行艇や水上機の為に接収されたから」
飛行艇横丁とはその名の通り中小の水上機や飛行艇関連企業が集まった場所で元は中小の造船業から飛行艇や水上機の本体やエンジンの製造、改修、修理や販売を手掛けるようになり、伊太利の水上機と飛行艇の歴史を語る上ではこの地の名が出てくる事になる。
「この分じゃあの機体もおじゃんか」
「どうだろう?アドリアーアドの秘密格納庫に隠しているけど……」
ポルコはヤレヤレと思いアサリ貝のむき身ごとパスタを放り込む。
「うめぇな」
「うん、伊太利で修業した日本人が作ったんだよ」
他の乗務員もガツガツと食いつく。
日本軍の予想外の対応に安心したと言うよりはこんな所で故郷に近い料理が食べられるとは思いもしなかったからだ。
「シンドラーってまさか……」
「ジーナさんの死んだ旦那さんと懇意にしていた事業家……独逸人だけどユダヤ人の迫害に疑問を持っていてナチスに従うフリして中東に収容所建設を持ちかけたの」
「よくもまあここまで」
「スエズでロレンツ伯爵と言う人がゲリラ戦で指揮官を殺してそのまま船は印度まで行ったのよ……そこで日本大使館と連絡付けてね……」
ポルコは薄ら笑いをした。ジーナは外国の貴族とのつながりがある事は気が付いていたが……。

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