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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 40

イタリア海軍の浮足ぶりにはヒトラーも呆れるほどで、一時期ムッソリーニを初めとするイタリア軍首脳部の暗殺計画まで持ちあがったほどである。開戦前にもイタリア海軍にも空母必要論者が居たが余りにも絶望的になりドイツに移住してしまった海軍将校も出た……だがタランド事件を皮きりに数々の戦闘の末に空母不要論が完全に間違いである事に気がついたイタリア海軍は直ぐに空母建造を決意する事になる。この世界大戦に登場した商船改造空母として最大になるのがニューヨーク航路用高速客船ローマを改修したアクイラである。しかし空母を建造した事も無いイタリア海軍は数々の壁にぶち当たり、結局ムッソリーニは“ドイツ空母を導入する”とアクイラ建造中止に……ドイツ海軍はこの空母を本国に曳航して就航させたのである。ドイツ海軍も一時期グラーフツェペッリンの建造中止が持ちあがったが日本海軍の空母や航空戦艦を考えるとそれは出来なかった。
アクイラはドイツ海軍でも異例な存在であるが急造した事もあって色々と問題があると言う事だが、欠点や問題はザクセン級空母設計に生かされ、イタリア海軍初の空母“ローマ”はザクセン級二番艦である。
「ウェストバージニアのドイツ版ですな」
「ええ、最も艦載機もドイツ海軍機ですよ」
英国人船長が苦笑するが日本海軍も戦艦論者が多く、空母不要論が渦巻いていた事を考えると上村は敵ながらもイタリア海軍の将校らに同情したい。
「ザクセン級は同盟国の海軍旗艦として配備されると……」
「はい、情報部はそう言ってます」
上村は少し考え込んだ、遊撃艦隊の再編成も考えないといけないな。



余談であるがムッソリーニはこの時代最も愚かな国家元首として記録され、後に起こる第三次世界大戦末期では連合軍の支援を受けたイタリア民主解放戦線により家族や側近と共に処刑されている。


上村はアークロイヤルを見学した後に東京へと向かい、翌日には海軍本部にて坂本大将と面会していた。
「そうか」
「信州の姉妹艦とあって好評です……情勢次第では自由仏蘭西のベアルンの改修も依頼したいと」
自由仏蘭西とはドイツの傀儡政権であるフィジー政権に対抗する為に植民地である越南(=ベトナム)首都保地民(=ホーチミン)で建国された亡命政権である。日本政府は対独逸戦も念頭にして支援しており越南駐留軍が中心になり、ベアルンは第二次世界大戦時には越南に居た事が幸いしたが運用面では問題が多く自由仏蘭西軍では頭を抱え、空母ではなく英国軍の航空機輸送/修理艦して運用していた。
最も仏蘭西の空母事情は伊太利同様お粗末でありジョイフル級に至っては一番艦ジョイフルが建造中に仏蘭西が独逸に降伏、接収されたのである。ジョイフルの設計図を見た独逸海軍技師はアクイラがマシに見えたほど航空母艦として使い物にならないと判断したが海軍も回転翼機を使い始めると見越して二番艦パルンジェを起工させた。つまりベアルン同様航空修理/航空機輸送艦の機能を持たせつつも回転翼機母艦として運用したのである。独逸海軍は第三帝国三軍では一番地位が低いと言わざる得なかった、ヒトラーが陸軍出身で主戦場が欧州で逢った事が要因である。ただ中東やその先への勢力拡大は海軍が必要不可欠であり、最近ではそれなりに人員や予算も来るようになったが開戦当時は占領した国々でも建造途中の戦艦でも接収していかないとやっていけなかった。独逸海軍士官は漏れ聞こえる日本海軍の戦艦や空母群をうらやましく思っている。
日本が三国同盟放棄に至ったのは亡命したユダヤ人が原因だが独逸海軍の多くはヒトラーの異常なほどのユダヤ人排斥を疑問に思っていた。海軍将校/士官の中にはユダヤ人の奥さんを連れて祖国から離れた人も少なくは無い……これが海軍にもヒトラー信望者を増やす事になり負の連鎖へと陥るのである。日本軍にとってはありがたい事だが……独逸海軍も意地を見せてグラーフツェペリン級二番艦建造やザクセン級航空母艦の配備を進めている。
「ベアルンの設計図を見て検討しますが、最悪建造した方が宜しいか」
「香港にある自由仏蘭西の民間船からの改修も検討するべきです。日本にある自由仏蘭西の民間船も活用して」
上村が言うか坂本海軍大将は苦笑し代わりに李家が告げた。
「その、仏蘭西の民間船は開戦一年前には日本への渡航禁止になってましてね」
「な、なるほどね……自由仏蘭西の連中もそこまで追い詰められているのか?」
「英国情報部によると仏蘭西本土にあるレジスタンス組織は一枚岩ではない、共産主義に資本主義やら交わっているし自由仏蘭西の様に植民地での活動する者なんて本土で活動している者から言わせれば仲間ではないと言う事だ」

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