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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 39

「首相の御意見番からですか?」
「親父が言うにはヒトラーはユダヤ人のクォーターだ」
副長は飲んでいたコーヒーを噴いた。
「ヒトラーの祖父はオーストリアのバルドヴィエルテル地方の没落地主、父親は三回目に再婚してできた子供だ」
「問題があるのですね」
「入籍前に懐妊していた、無論祖父が仕込んでわけでもないし証拠に入籍出来たのは彼が天国の門へと旅立つ前だ。ヒトラーの祖母はウィーンに居た大富豪フェラサイルド家に西洋召使(=メイド)として雇用されていた訳だ」
副長はピンときた。日本でも地主が小作人の娘や妻との“男と女の営み”とはよくある話だからだ。
「その父親の血を引いた息子が今や独裁者……ウィーンでの画家としての挫折が無ければ」
「……絵画は原作者が死亡した後に売れるもんだよ、親父は西洋春画(=せいようしゅんが、男女の性の営みをテーマにした西洋画の事。しゅんがは元来浮世絵のカテゴリーである)を画いた方がマシと言った事があるさ」
「この事は墓まで持って行けよ」
「心得てますよ」
「しかし、ヒトラーがここまで強大なモノになるとは」
「親父は自分と同じ役割を持っている人物がヒトラーの背後に居ると見ている。その筆頭である宣伝担当のゲッベルスなんて知能指数180、一石博士の知能指数250よりも低いが我々からみれば天才だ。彼を倒せば第三帝国は崩れるとも言われているが難しいだろうね」
上村は訓練支援の為に飛行していた幻龍の着水を見守る。
「プリンスオフウェールスの大改修も済み、独逸も喧嘩を吹っ掛けた。さて米国とどうやって仲直りするかな?」
「な、仲直りですか?」
「今の最高指揮官、即ち高木首相はよりよい敗戦をする為に対米本土上陸をしなかった、米本土なんて亜細亜各国の全兵力を持ってしても無理だ。むしろ米軍が有利だ」
「は、はあ」
「この前のあちらさんの超兵器研究所爆撃でとりあえず亜米利加の一発逆転満塁弾は出来なくなった。日本空襲も無いのはロ号弾頭が予想以上に恐れられている証拠と言えるな。更にあちらさんにはユダヤ人移民も多く時には大統領選まで左右する存在だ。極東エレサイム共和国も認めざる得ないだろう……仮に攻撃すればユダヤ系将校らが反旗を翻す事すらあり得る」
「船長は凄いですね、政治家にもなれますよ」
「俺は船の事しか分からん、それに軍人が政治家になるには退役して五年は過ぎてないと立候補出来なくなる、今度の新憲法ではそうなる」
「厳しいですね、では女性参政権や女性でも立候補出来る様にもなるのは?中には女性は役に立たないと言ってますが?」
「統治者が全て男性とは限らない、現に女王陛下が統治する国があるじゃないか」
「英国ですか」
「これからの世の中は男も女も関係無くなる、政治は特にね」
上村の言う通り、今日本は大日本帝国憲法に代わる新憲法制定に向けて動き始めていた。天皇制まで踏み込む辺りを見ると相当な反発も見られたが列強支配をさせない為にもやらなければならない……幾つかは既に国民が知る所となっているが最大の特徴は成人女性への国政参加、即ち選挙に投票若しくは立候補出来ると言う。無論揶揄する声もあったが生活面では家庭を預かるのは女性である事、欧米各国には既に女性政治家が居る事もあり反対する声は少なくなっている。

「ジツに素晴らしい船デス!ほんとうにアリガトウゴザイマス」
「いえいえ、これを建造した海軍工廠部や各造船会社の技師のおかげです。あ、英語でよろしいですよ」
アークロイヤル艦長である英国人船長からのお礼を言われ、彼はアークロイヤル級装甲空母一番艦アークロイヤルに乗船していた。
(ここからは英語会話ですが便宜上日本語表示にします)

「ウェストバージニアも素晴らしい船で……あれが原子力研究所を破壊した艦載機ですね」
「ええ、しかし目標周辺に多大な被害を出してしまった事は事実です。ニュルヘンブルク同様に……」
「しかし核分裂爆弾の恐ろしさを知らしめたのも事実、毒ガスや病原菌に並ぶ国際的な条約が必要になり得るでしょう……」
スーパーマリンシーファイヤが着艦するのを見つつも会話が進む。
「ドイツ海軍の空母ですが同盟国のイタリア海軍が建造を放置したアクイラを譲り受けてます……」
「脅威ですかね?」
「情報によりますと空母不要論が巻き起こっていたそうですが空軍の機体はドイツや我が軍にも及ばない性能で……」
後世世界の1940年11月11日でもイタリア海軍最大拠点であるタラント軍港にて“先代”航空母艦イーグルから発進した攻撃機は深夜に奇襲、海軍主力艦三隻を沈められると言う事態になりナポリに本拠地を移したのである。後にタラント事件と言う名称を付けられる事になる。

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