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戦艦空母艦隊
その他リレー小説 - 戦争

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戦艦空母艦隊 35

照和十八年、春……国会にて在る重要法案が可決された。極東エレサイム共和国建国支援法である……それは樺太を割譲して流浪の民であるユダヤ人に国土を与え日本政府は亜細亜各国と共に支援する。極東エレサイム共和国建国には後世世界にイスラエル建国を阻止する意味合いが強い……ただでさえ中東はハーゲンクロイツに侵食、第三帝国崩壊後には強烈な反独逸に反欧州思想により回教指導者(イスラム教指導者)の中には信仰心を煽って民衆を過激派として使う事が予想される。ユダヤ教は地理的歴史上要因から欧州寄りであるのでイスラエル建国は後世世界でも石油資源を不安定化する要因になり得るのである。
「亜米利加と独逸は認めないそうですね」
「亜米利加はどっちみち承認せざる得ない……トルーマンの再選にはユダヤ人の意思を必要とするからな」
坂本海軍大将は新聞を置くなりため息をつき、李家は珈琲濃液(=コーヒーエキス)と呼ばれる物凄く苦味が出る様に珈琲を出した。徹夜明けにはコレが定番なのだ。
「御瀬亜似亜(=オセアニア)同盟は承諾してますな」
「当たり前だ、商売機会(=ビジネスチャンス)を政府が潰すようでは無能だ。所で例の件は」
「順調です……これでちょび髭伍長が倒れたらいいんですがね」
「彼は軍人上がりだ、ルーズベルトよりも若い……」
口に含んだ坂本の表情が歪む。
「爪哇(=ジャワ)か」
「日本人のお陰で生産効率も上がったと、農民に対する識字/計算取得教育支援が実を結びつつありますな」
亜細亜各国の農民には識字率が低い事で地主から言いなりになる事が多い、それは日本各地で嘗て当たり前な光景であった。高木首相はこれらを改善する事で国全体が発展する事を確信していたのである。台湾や泰、越南(=ベトナム)辺りは国民全体で識字/計算が出来る様に国を上げて取り組んでいる……各国政府にとって考えや信念を伝え易くする為と記録を残す為である。
「さて高麗国だが……進んでいるかね?」
「はい。独立運動に携わった者はこれまで日本軍や警察が把握した者と認定するようにしてます」
李家の語気が荒くなり、坂本は苦笑する。
「改竄捏造しますからねぇ……李氏朝鮮王朝の記録すら怪しいもんですよ」
李家を中心にして帰化した朝鮮半島人の有識者らが監修した“朝鮮半島独立記”に列挙された独立運動家は殆どが統治元である日本の警察や軍に逮捕されたり射殺された者としている。
「陛下の亜細亜歴訪をこの地を外すわけにもいかないが」
「……本当に困ったものです」
高麗国は昨年の夏に正式に建国されているが朝鮮半島人の中には日本寄りの現政権を倒して自分が王になる事を企む輩が未だに多い……李家はそんな救いようが無い野心家を何人か知っているが殆どが仲間の裏切りか日本の治安当局に射殺されている。
高麗国が亜細亜の不安要素である事は亜米利加にとって救いだろう……。


 対独逸戦の噂が出始めていた……ヒトラーは中東の石油資源を狙う為にイスラム国家を打倒する若き革命家に支援をしており産油国の殆どはハーゲンクロイツに染まっていた。中でもイラクのサダム.フセインは大のヒトラー信望者であり永らく回教社会より世界に取り残された祖国近代化に乗り出していた。これにより回教指導者やそれを信じる難民は西へと逃れているのである。

「少佐、いよいよですね」
泊海軍基地には大津と土浦に所属する富嶽各機が揃っていた。作戦名“落日作戦”……北極圏を飛行し独逸第三帝国にある乳編辺瑠区(ニュウヘンベルク)にある原爆工場を爆撃する。詳細が不明なのでロモアラモスの様に巨大な核爆発が起こる可能性も捨てきれない。
富嶽各員の中には先のロモアラモス原爆工場爆撃の為に高高度に展開しキノコ雲を見たから不安要素がある。しかも陽動には英国軍が決死の爆撃するので時間通りに飛行すると言う日本海軍飛行艇史上、いや空軍有史でも難しい作戦である。実質地球一周飛行は無着陸で成し遂げるのは不可能である……だからこそ後世日本軍は飛行艇に力を入れた一因である。片道約一万キロを超える、そして今回は両方の部隊から三機ずつ計六機が時間差で飛ぶ、独逸空軍の機体は未知な部分も多いのだ。
「見送りも居るな」
超極秘作戦なので知りうる者は限られる、橘次官もお忍びで来ていた。
「橘次官殿」
「最後まで目標の原爆工場がどうなっているのか不明ですまない」
「いえ……覚悟は出来てます」
独逸の事だから国民に東洋のサルは核兵器を産み出し投下したと言うのだろう……聞けば日本でも製造できるが使えば罪を背負う事になるのだ。

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