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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 33

「開戦から暫くしたのちのアキレス切断作戦よりも難しいと思うが……先の原子力研究所空爆により生じた歪みを正す為にも……すまない」
橘は頭を深く下げるも部下である航空士は言う。
「今回の作戦は幻龍飛行隊が壊滅した場合に発動する筈であったY型誘導弾が使う事になりますので……目的地まで飛行出来れば……後は誘導弾の改良を進めるだけです」
「そうか……こちらとしても英国救援艦隊の編成を急いでいる」
「超弩級戦艦飛鳥ですか」
「そうだ……我が海軍最後の戦艦となるだろう」
「最後の戦艦?」
「これは戦後の話になるが終戦時の空母消耗率や軍縮よりこの飛鳥は空母の改装も視野に入れている」
「く、空母に」
「うむ……技研からもイ号墳進弾の成功により更に小型化の目処が出て来た。何れは戦艦と言う船も現存するには記念艦と言う形を取らざる得ないだろう」
「三笠の様にですか」
「戦艦だけではない、水上機や飛行艇に代わり回転翼機の艦載機化も予定されている」
「……」
「君には酷かもしれんが別に水上機や飛行艇が遺物になる訳もない……むしろ民間に開放する予定だ。南洋では普通の航空機は運用が難しく回転翼機も出来たばっかしで航続距離や荷物搭載量は少ない。富岳の様な機種で無いと荷物は運べんよ」
「次官、勿体無いお言葉です」
「こちらも飛行士の気持ちを考えずに失言したからな……だが富岳のお陰で三式大艇の実用化が出来た」
「あの軍民共用の大型飛行艇ですか?」
「民間では“川崎 カー003大型貨客飛行艇”として販売、とりあえず企業向けの多目的用途機となっているが……」
「次官どのが進める開発には必ず民間転用を視野に入れてますが?」
「戦争だから産み出せるモノがあるのだよ」
「墳進弾も何れは宇宙開発へと転用したい考えですか?例えば次官の父上が執筆している児童向けの空想小説の様な」
「ははっ、実際問題は簡単に実現するとは思えない。亜米利加が実現するだろうな」
「やはりこの前の作戦で」
「あちらさんは大統領が代わったそうだ……暗殺説も出たが病気らしいな」
「……日本まで狙える墳進弾なんて実現出来るんですか?」
「何れは出来るがその前にこの戦争が長く続くとは思えない。ナチス第三帝国次第になるが……原爆工場を潰す事でそれなりの犠牲や助かったにせよ後遺症が出る、だが何も罪が無い国民が多く住む都市上空でこれを使えば……」
橘の表情に航空士は言う。
「未曽有の被害があるのですか」
「うむ、何れは亜米利加も公表するが私が存命している間は出ないだろう」
「第三帝国が仮に完成したとしてこれを使うのは」
「戦局が硬直している英国やソ連……もしかすると東京も狙ってくるかもしれん。これを防ぐにも今回も難しい事になるが……宮藤少佐頼みましたぞ」
「はい」


超一式大艇 富岳……元は旧体制下で進められた飛行艇計画を橘らが引き継いだモノだ。機体重量を抑えられない問題でボツになりかけたがアルミ合金に亜鉛を混ぜたESD(若しくは超々ジュラミンン)にドイツのドニエルが特許を取ったハニカム構造を採用する事で解決した。ハニカム構造は実用化するには高分子化学を要する接着剤や接着技術が不可欠であり独逸も亜米利加も必死になって研究している。日本はこの手には無関心であったが橘らの努力で前線で銃を担いでいた科学者や技師を引き揚げさせて研究に専念できるようにした。加えて亡命独逸人にユダヤ人科学者の協力により実現したのである。これは戦後に明らかになるが米国の爆撃機よりも凌駕していた……米国専門家はこの機体が大量配備されていたら太平洋沿岸は壊滅していたと言う。
現時点でこの機体は土浦と大津にある超空飛行艇空団に五機ずつ、泊海軍飛行艇隊に試作型の二機が配備されているのに過ぎない。そしてこの富岳は単に爆撃機ではなく輸送機として活用されており第0連合艦隊の消耗品や暗号解読表といったものを運ぶ存在でもある。この飛行艇空団本拠地は専属護衛戦闘機として紫電系をベースにした“紫水”が配備、従来はゲタ履きと揶揄される水上機だが紫水はフロートを油圧シリンダーで可動させ機体へと密着、これにより艦上機並の機動性を持たせる事に成功した。この機体は主に南洋に展開する部隊に配備、本土では滑走路が建設困難な離島部隊に見られる他にも先述した飛行艇空団がある湖畔に配備されている。

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