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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 31

ダグラス.マッカーサーはフィリッピンから撤退し自分が持つ師団もオーストラリア派遣軍に組み込まれて元帥から降格、今は太平洋沿岸地域にある各枢軸国からの移民キャンプの総責任者、言わば閑職に近い。ワシントン.D.Cに呼ばれたのは今の仕事内容に関する事で詰らぬ政治ゲームにうんざりしていた。早朝に航空機のエンジン音と同時に巻かれたビラを手に取り厳しい表情になる。
「曹長、直ぐにペンタゴンに……」
騎兵隊が来て混乱収拾を図り、補助憲兵になっている歩兵は車中のマッカーサー大将を見て敬礼する。
「申し訳ありません、直ぐに民衆を……」
道路までビラが巻かれており市民らが取っている。この分だと報告書を置いて官舎に戻った方が効率的と思う程混乱していた。
「今回の事は何時でもワシントンDCを爆撃出来るぞと言う脅しかもしれな」
「そ、そんな」
「曹長、日本は常に追いついているのだよ……僅か100年たらずで我が国と欧州各国にひけを取らない国なった」
ロビーにて彼は珈琲を口に含んでいた。日本海軍が持っていると言う噂の潜水艦隊は大西洋まで進出したとなると……国民も分かってくるだろう。

各連合艦隊による米国要衝同時襲撃作戦によりパナマ運河は壊滅、今度は真っ昼間に襲撃されたので溜まったもんではなく、ダッチハーバーでは空襲を受けるも主力艦は健在していた。ドックに入り海へと出たニュージャージも主砲で応戦する無茶をしたが敵航空機には当たりもしなかった。ニュージャージは直ぐに艦載機を下ろしドックにて砕氷戦艦として厳冬の北極圏での活動を想定した戦艦になっていたのである。更に艦載機もシルコスキーR−6Nの実験小隊が編入、この機体はドラッヘ同様ヘリコプターだがメインローター一つで飛行しとテールローターと呼ばれるシステムで姿勢を制御する。これにより艦載機として運用できるようになったのだ。
とは言っても現段階では弾着観測やら他の艦艇への連絡程度しか出来ない小型機である……まだ水上機の方が使い勝手が良いのではないかと言う声もあるが自在に垂直離着陸に空中静止と言う従来の航空機には無い動きが出来る事に意義がある……即ち離陸する為に必要なモノが無くなるのだ。米国がここまで真剣なのは欧州戦線でのドラッヘの活躍であった……対戦車戦では無類の強さを誇り北アフリカ戦線ではパットンも苦労していると言う。無論戦前から研究はしていたが軍は消極的でメーカー其々の研究や試作機飛行実験程度。ドラッヘの恐ろしさに気がついた陸軍は直ぐにヘリコプター研究に本腰を入れ、海軍は単に極地や洋上での試験運用を陸軍から委託されていた。そして今の所何処に配属になるか分からないニュージャージにとりあえず配備、ただしドックに入っている間は軽空母サイパン級二番艦ライトが仮母艦を務めていたのである。
「ヘリねぇ」
「使えるのですか?」
馴染みの技師も苦笑するが将来性を秘めている事に何と無く分かる。
それは日本海軍もドラッヘの情報により、同様のヘリを開発していると言う噂が流れていた。日本は海洋国家だからこの手の航空機の良さは上層部に理解が得られやすい。多目的砕氷戦艦ニュージャージ艦長に着任したハリソン.エンフィールド少将はため息をついた……。


    旧太平洋艦隊に属していた戦艦六隻を即時撃破せよ。


ワシントンDCから届いた命令に思う。こんな所まで来るとは思いもしないが。



亜米利加の混乱する中、遊撃艦隊は旧太平洋艦隊戦艦六隻を中心に陣形を組んで夜の太平洋を北上していた。重巡三隻、対空防御戦艦四隻 駆逐艦十二隻、そして前衛にア号潜水艦五隻は本作戦の“主役”である。
「第四連合艦隊が三字画後(サンジエゴ)に攻撃を開始!」
「ハッチ開け!幻龍各機発進せよ!!!」
上村は西処女亜(ウェストバージニア)の艦橋から飛び立った幻龍を見て思う……原子爆弾の怖さを知る橘次官から直に聞いた時には背筋が凍った。一番良いのはその爆弾を研究/製造している個所を叩くしかないのである、亜米利加もその破壊力は想像出来るらしく人里からかなり離れた場所にあると言う。
「艦載機全機発進完了」
「三字画後沖まで進め、イ号墳進弾で攻撃をする」
「通常弾頭ですな」
イ号墳進弾は全長7.34m、胴体直径62cm固形燃料式ロケットエンジン兵器であり、独逸のV1やV2と比較すると小型で爆薬も射程距離も短いが艦載可能なミサイルである。サンジエゴ軍港に基地司令部はトドメを刺された格好になり壊滅したのである。市内への被害は変電所爆撃により停電による交通事故多発位に留まるだろう。

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