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戦艦空母艦隊
その他リレー小説 - 戦争

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戦艦空母艦隊 26

予想されるのは米国の制海権までの最短ルートだが裏を掻かれている可能性もあるし先にアメリカ側の索敵機に艦載機が見つかればどうなるか……搭乗員達は眼を皿にして探し電探手も画面を見ている。
「隊長、感ありです。6時方向」
隊長が操縦かんを操作すると北上する敵艦隊が見えた。
「知らせろ!」
高度を上げると敵艦載機の機影が見えたのである。
射程距離に詰められ、機銃が咆哮するも幻龍は横滑りする。米艦載機乗りは驚くがこれぞ幻龍の特徴だ……幻龍と飛行爆弾とほぼ同じタイミングで舵を操作すると横滑りする、他の機体には真似できないのだ。そして幻龍に登載された機銃砲座が米艦載機を撃破した。
「見られましたね」
「操縦席を狙いましたが……」
「仕方あるまい、今は艦隊に戻るぞ」


第一連合艦隊は直ぐに艦載機を飛ばす、武蔵からは電子偵察機が飛び立ち攻撃隊を誘導する。
「対潜警戒を密に……」
艦隊を率いるのは大田道山海軍中将、技官出身でありながらも早くから空母戦術の先見性を見出しており大和型航空戦艦の設計にも関与し艦隊での指揮を執る異例の将校である。実家が大田護謨株式会社を経営しており日本での護謨(ゴム)産業に関してはトップクラスの実績に研究開発が熱心な所であり、東南アジア各地の天然護謨事情に関しては詳しく軍部でも信頼性が厚い。彼は次男坊でデキが良い兄に心配かけない様に軍への道を進んだが却って心配かける身になってしまったのである、何しろ技官なので戦艦に関しては詳しくしかも科学にも強い異例の人物である。艦長である栗田健三少将ですら頭が下がる程武蔵は勿論の事、他の主力艦を把握している。
「栗田艦長……幻龍の収容は遊撃艦隊の雲龍になる事も覚悟してくれ」
「はい……送り狼も想定してます」
雲龍型装甲空母は飛龍型装甲空母の大量生産型であり、遊撃艦隊の中核空母として二番艦天城、三番艦葛城が就航……最大の目的は幻龍の着艦であるので大田護謨技研が総力と採算度外視で完成させた制動索には超伸縮強度護謨が組み込まれている。その強度実証に大田護謨社長が自らの身の重さを利用して大鳳の飛行甲板から落下した事がある……これには立会人の一人である実の弟である道山も唖然としたのである。無論無事であったが奥さんが失神して大鳳の医務室に担ぎ込まれたおまけがついた……後にこれは艦載機乗りの間で度胸試しになるのは別の話、何がともあれ八八艦隊の遊撃艦隊に組み込まれる事になる雲竜型に真っ先にこれを登載したのは幻龍の為である。これが無いと飛行訓練が進まないからだ。
「装甲空母化は予想以上に早かったな」
「ええ……米国は工業力に物を言わせて航空機を送り込んできますからね」
米国の工業力は科学力がある事の裏付けだ……恐らく半年後には新型艦載機が出てもおかしくないのがあの国の特徴、空母なんて毎週新しいのが出来ると言う話すら聞く。未だに布哇奪還作戦が無いのは第二パナマ運河要塞完成を急がせている……欧州戦線に送り込む陸軍師団の兵士すら銃ではツルハシとスコップ、戦車ではなく土建機械を動かしているので海軍と陸軍双方の将校らが対立している噂もある。新設された空軍将校は双方の航空機関連の専門士官らで構成された関係上其々の古巣に宥めるのに必死で決死の覚悟で日本本土空襲を決行する可能すらある。

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