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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 23

今の日本軍の情報戦はCIAですら警戒する……間違いなく反ナチスドイツ人の存在がある。事実日本軍の暗号は前回の海戦で新たなモノが存在している……恐らく電算機を使用したモノだ。キーガンの心中は穏やかモノではない……日本の暗号解析には数年かかる、ハワイにあった極秘の筈の暗号解析・分析センターが焼夷弾により空爆による損害が大きく再建された暗号解析・分析センターは複数に分散し地下シェルター化を進めていると言う。キーガンが居るダッチハーバーにも鉱山跡を利用して施設が建設された、彼は当初から地下シェルター化を提言していたがこの様な形で実現した事に憤慨している。
「航海長、シドニーから最短で味方制海権まで到達するルートを想定できるか?」
「やってみましょう……ですが日本海軍との遭遇率も高くなります」
「かまわん……陸軍輸送船団の方を優先してくれ」
「!」
「ジョージワシントンも逃げの戦術を取るさ」
キーガンはヤレヤレと思いコーンパイプを銜え海原を見る。
「前衛、潜水艦部隊と合流します」
「対潜警戒、ナチのUボートも日本軍の潜水艦の探査に全力を尽くせ!」
参謀長の声が響く。



アメリカオーストラリア派遣軍の陸軍輸送船団は自軍の制海圏内まで到達する事が優先事項であった。対潜警戒のために素人同然の陸軍兵士すらありたっけの双眼鏡で海原を見る始末だ……その光景に潜望鏡で覗いたある潜水艦艦隊司令官は苦笑する。
「艦長、覗いてみるかね?」
「はい」
制帽を後ろに回し、潜望鏡を覗き込む。
「大船団ですな」
「位置のみ知らせておけ……上は何かを考えているらしい」
日本海軍の多くの関係者は彼らの事を知らない、知っているのは首相府と統合参謀部でも極僅かである。イ1000潜型潜水補給艦とほぼ同じ大きさを持つ多目的戦略攻撃潜水艦イ2000型潜水艦6隻と潜水補給艦イ1000潜水補給艦2隻を持つこの潜水艦隊はパナマ運河攻撃の影の功労者である。
艦隊の名は“第0連合艦隊”……首相府や統合参謀本部の極一部の者達からの指令を受けて動く黒子である。黒子とは日本の演劇にて登場する裏方で役者に道具を渡したり、早着替えの衣類を取ったりする役者を指す……無論各艦隊司令官もこの艦隊の存在は知っている。
「そのまま敵本土に還すつもりでしょうか?」
「恐らくな……こちらとしても対独逸戦には米国との同盟は必須だ」
「はぁ、亜米利加は何故亜細亜を見下しているのでしょうか?」
操舵士が告げると司令官は言う。
「あの国は民衆の力が強い、尚且つ移民国家だがここまで団結しているのは宗教だ。知っての通りあの国は基督教(キリスト教)内の新派(=プロテスタント)信者が迫害を逃れて入植した事が始まりだ……旧派(=カトリック)には理解できない時代にな……今は基督教内の宗教的対立はほぼ無いが代わりに仏教や回教(=イスラム教)との対立構造を煽る事になれば厄介だ、特に回教とは十字軍時代からの因縁があるからな」
「司令官が問題視しているのは回教の教えだ……特に女性に対する扱いが低い」
副長はそのまま説明する。
「厳しい所では女性は外出する際に全身を隠す必要もある、年齢が二ケタに達しない子を嫁に出すとか……基督の博愛精神に逆行している訳だ」
実際植民地支配ではキリスト教への改宗も珍しくない……宗教指導者が信者を煽って反乱がおきた事もあり、多くがイスラム教だ。結果は信者が多数死亡するのが多かった。亜細亜各国も宗教に関しては政治と分離する方向で動いており回教指導者も徐々に宗教的な教えを強要しない様にしていると言う。
「第一連合艦隊司令官に暗号文送りました」
「……進路そのまま」
「米国も漸くワルター機関潜水艦を使い始めていると思われている、聴音手耳を澄ませよ」
「はいっ!」
「本国防衛潜水艦隊が逃がしたと言う艦船も……」
「恐らくな……米国の工業力を甘く見ていると負けるからな」
第0連合艦隊の総旗艦はイ2000型多目的戦略攻撃潜水艦羅号……及川俊楼氏が子供向けに空想科学冒険小説シリーズ“海底軍艦”に登場する超秘密万能戦艦ラ号の機能を具現化したこの多目的戦略攻撃潜水艦らは小規模ながらも空母機能を保有している。最も六隻の艦載機総数でも昔の水上機母船よりも劣るが最新鋭の水上戦闘機と電子戦兼用攻撃水上機を保有しており先のパナマ運河攻撃作戦時には撹乱を兼ねて閘門への雷撃に米艦船/陸上レーダー網の撹乱を果たしており米軍関係者を愕然とさせたのも第0連合艦隊航空隊である。少数ながらも精鋭で水上機に扱いに長けた航空士達が名を連ねている。

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