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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 18

明治維新後、近代軍隊を導入した日本は軍隊内にも食の洋食化が起きていた。中でも英吉利から伝わったカレーソースは米食民族でもある日本人に気にいられており“カレーライス”として登場、軍役に付いた男達が家庭でふるまったり、商売にした事で今や国民食になっている。海軍では金曜日の夕食がカレーにしているのは曜日の区切りも兼ねており部隊内で独自のレシピも存在する。千代の夫はその事に関しては伝説を持つ男であり、洋食にも一通り精通している。その腕前は銀座に店を出せる程であるが……実家の料亭を継いはいるが時折、裏御品書きとして頼まれる事がある。外国人の為でもあるが今はその傾向が増えているのだ。
「あの人が洋食を作ると皆さんが楽しみになるんですよ、用事が済んだら警備の兵隊さんにも差し入れします」
「そうか……」
奥座敷は所謂“離れ”であり、如何わしい事にも使われた時期もあったが今は橘らが率いるグループらが使っている。離れの周辺には警備として歩兵と軍犬が配置されている……ここまでするには奥座敷に招かれた人物に起因があるのだ。
「遅くなりました」
「……キニシナサラズ、ワタシも数分前にキマシタ」
目の前に胡坐をかいて座っているユダヤ人は一目見ると飄々とした風貌……ナチスドイツが利用するべく米国までスパイを送り出したと噂され、米国も彼を利用しようとした……。
「Dr.アインシュタイン、この事は本当なんですね」
「マアハッタン計画……私は米国から脱したのはこの計画により民族が滅びる事すら可能だからです。これではナチスと同じ事をしてしまう」
「ウラン鉱石を爆弾にする事は出来るのですか?」
「デキマス、その破壊力は日本軍の気化爆弾以上の熱量と衝撃波、そして核反応により出てくる放射能は恐らく多くの人をクルシメルコトニナリマス」
「日本でも細々と研究が出来たのは島根鳥取の県境にある人形峠にウラン鉱石が採掘出来るからだ。少量だが研究には十分な量だ……」
「研究?」
橘の言葉に集まった同志らが首をかしげる。
「博士によれば核反応を緩やかにすることで蒸気を起こしタービンを回転出来れば発電にも使える、小型化すれば艦船にも登載出来る訳だ」
「それは凄い」
「核爆弾はコントロールガムズカシイユエニ膨大な研究をツイヤスコトニナリマス」
アインシュタインは憂鬱な表情になる。それは橘と初めて対談した時に彼の前世記憶とマアハッタン計画に関与した時から見出した不思議な夢が妙にリングしていた。
夢の中の自分が見たのは試作された核爆弾は広大な砂漠に立てられた鉄塔の上に置かれており、自分とその他の関係者らがシェルターの中で見守る中、遠隔操作で点火された途端に目も開けられない程の眩しさと地響き、そして衝撃波がシェルターを揺らした。そして巨大なキノコ雲が出来ていたのである。

そして数ヵ月後、ニ発の核爆弾はヒロシマ、ナガサキに投下された事を知る。共に日本の軍事要衝であり三発はトウキョウへの投下も検討されている事も……その後日本はポツダム宣言を受け入れて連合国は勝利し進駐した。ヒロシマとナガサキの被爆し生存した市民らは酷い有様であり彼は初めて自分が作り出したモノを恨んだ。そしてソ連も核爆弾の製造に成功した事を知ると彼は反核を訴えたのである。


「橘サンノ前世記憶ハマサシクワタシノ不思議なユメとリングシテマス」
「前世のあの日……私は東京での詰らぬ精神論会議に付き合わされて広島行き夜行に乗り損ねたうえに岡山での用事の為に岡山行きの夜行に載らざる得なかった」
この事が皮肉にも核爆発の直撃を受けずに済んだが前世の橘は地獄を見る事になる……広島行きの列車内で先のダイヤで運行されていた便が引き返して来て空襲の一報を聞いたが尋常ではない事が分かった。客車内には全身焼け爛れた人が満載であった。三月の帝都大空襲並の大規模な編成が来たのかと思ったが観測所によるとたった一機のみと言う……。橘は直ぐに国民を下ろし医者や看護婦資格を持つ者や医薬品をありったけ積むように指示して広島へとむかった。そして救助へと赴くも殆どが手の施しようも無く死んでいく事になり、やりきれない気持ちになる。そして終戦を迎えた……幸いにして彼は戦犯になる事はなかったが癌が多発し静かに死んだのである。朝鮮戦争が始まった日であった。

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