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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 154

単純に言えば空母の様な離着陸が難しいので幾分使い慣れた水上機や飛行艇の方が良い訳だ……この分野に関しては米軍や英国軍よりも日本軍の方がはるかに進んでおり水上機母船なら戦後、空母でも軍用輸送艦にも改装できるからだ……最も祖国海軍が立て直しには米海軍の余剰艦が宛がわれる事は目に見えているが。



「ようこそ!伊豆へ!」
「御苦労さま」
九鬼は後輩の士官候補生の声に少し圧された感じもしたが笑顔で言う。伊豆の事は知ってはいたが実際に見るのは初めてだ。
「辺境伯の様子は?」
「大丈夫です……キンメル少将直々に艦隊護衛を指揮を取ってます」
Uボートも逃げ出すだろうなぁ……うん。艦長の言葉を聞いて彼女は遠い目になる。
「既に人選は決まっていたんですね、辺境伯の……」
「うむ……Uボート主体とは言え稼働数も限られているからな」
投降した乗務員の中にはPTSDを発症して仕方なく後方支援になったりUボート自体修理不可能になっている事も多かったが潜水艦の乗務員の中には海上艦での経験を持つ者も少なからずいた。更に米国に移住したドイツ系米国人の中には米軍に参加するよりも義勇兵として亡命政府軍に参加するケースもあった……辺境伯はそんな事情を持つ乗務員らで構成された。伊豆の艦長もハワイ沖にて訓練支援に参加した事もあるので他人事では無くなっている……。
「艦載機は米海軍のモノですか?」
「うむ……まあ仕方ないだろ、ただし水上機と飛行艇の支援艦艇は日本式にしている」
確かに他国の海軍の水上機/飛行艇支援艦艇は貨物船を改修した程度だ。しかも潜水艦支援艦で空母サイズにしているのも日本のみだ。
これだけでも日本と米との戦略的思想が異なる事が良く分かる……だがこれも領土と領海の位置や割合に工業力や民族性と言った複合的な要因で別れるのだ。
「辺境伯を空母化するつもりでしょうか?」
「そこは分からぬ……欧州が戦後どうなるかによってはな」
伊豆の艦長は卒業生である九鬼に口に近い雑談を交わしつつも合流地点へと向かう。
「対潜、対空警戒は怠るなよ」
候補生とは言え戦場に出る事に代わりは無い……艦長の言葉を意味を理解した候補生らは返事をする。
「はいっ!」
幾ら制海権/制空権があってもナチスドイツがこの事を知れば空軍と海軍は動く確立が高い、その為に随伴している輸送船団の中に偽装対空/対戦駆逐艦を数隻配備している。
「敵国の情報も錯綜しているんですね」
「正直言えば英国の連中も頭を抱えているようだよ」
極度な官僚化が進んでしまったがそれは書類一枚で兵士の運命が決まってしまい、尚且つ指揮系統が複雑化してしまったのだ。更にヒトラーを振り向かせるのなら無茶をする事もあり得る……それはランドパワー国家のドイツでは海軍や空軍の地位は低いことを意味していた。
中東進出の要とされる欧州中東横断路線も完成こそしているが反ナチス勢力の襲撃に悩まされ、更に砂漠地帯が多いので蒸気機関車が大量に使う水の確保に頭を抱えていると言う。こうなると海軍や空軍の輸送力がモノを言うのだが……戦時の貨物船建造体制を取らずに開戦してしまったので大変な事になっていると言う。
「こんな事まで漏れるとなるとそろそろ危ないですね」
「ああ……これも列強同士の競争の果てだ」
艦長はため息交じりで言う……。
「辺境伯確認しました」
見張り担当の候補生からの通信が入る。
「数隻ビクトリー型戦時標準輸送艦確認」
ビクトリー型戦時標準輸送艦とはリバティー型と同じレイアウトを持つが平時になっても使えるように内部艤装が通常の貨物船に近く蒸気タービン機関にしており米国の工業技術力に強固な防衛体制をPRする為に亡命ドイツ海軍に“貸与”して高速補給艦として運用している。
政治が露骨に見えてしまうがビクトリー型は戦後も使えるように視野を入れた設計と言う事に間違いない。最もこのビクトリー型は対日戦を楽観視ムードで設計され旧太平洋艦隊の随伴補給船や米国本土とハワイ諸島を結ぶ航路に投入されるも日本海軍の猛攻で開戦前に揃えられた新造船は殆ど沈んだ。占領時のハワイにて日本海軍は現地雇用対策も兼ねてビクトリー型を建造している民間の造船会社各社に同船の建造を依頼し南洋に散らばる島々を結ぶ航路に活用されるも殆どは布哇講和条約時に米国に無償譲渡した。その期間に建造されたビクトリー型は特徴として日本の製鉄メーカー共同開発した“電気溶接専用鋼材”が使用されており、従来の鋼材であるリムド鋼よりも電気溶接に適し尚且つ溶接後に起きる歪みを抑えている……実は初期のリバティー型船体は船体が分断する事故が数件起きていたが何れも嵐による荒天が原因された。


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