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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 153

犠牲無しで日本を爆撃する事が理想的なホワイトハウス側にとって開戦した段階でB−17ですら迎撃した海軍の高高度迎撃の存在は脅威でそれを使えなくするには途方もない犠牲を払う事になる……しかも欧州から何を逃れたユダヤ人難民らの受け入れもある意味では無理な空襲が出来ない事を意味した。トドメに第二次日英同盟締結は米国議会に燻っていた日本との終戦協定議論を巻き起こしたのである。


「新造艦?」
「亡命ドイツ海軍旗艦……空母型多目的用途艦でハワイで艤装を終了している」
亡命ドイツ海軍はこれまで投降したUボートとドイツ国籍の客船から改装した神鷹型二隻に松型駆逐艦複数で構成されていた。ロンメルらの亡命は米国にとってもプラスになり正規空母サイズの多目的用途艦建造が進められていた……これには戦後のアフリカや中東情勢次第では敗戦国のドイツでも利用する思惑があり、今のナチスドイツ第三帝国海軍の艦艇がどれだけ残せるのか……何よりも戦後ドイツの象徴が欲しかった訳だ。
九鬼も納得する、ナチスドイツ海軍はUボートだけに突出してしまった故に空母開発も幾度か中断に追い込まれた……ヒトラーの失策と言うよりも海軍中枢は戦艦優位思想に染まっていた節もある。極光艦隊の空母や戦艦空母の威力で慌てて実用化した背景もあり占領したフランス海軍工廠ドックから建造中の空母を徴発したり、イタリアで宙に浮いた空母を接収した結果、ザクセン級/ローマ級が完成した。最も赤城型をベースにしたグラーフ.ツェペリンの建造が幾分進んでいた事も幸運とも言える。問題は運用面だ……何せ水上機も他国と比べると少ない。艦載機は陸上機を改修する事で何とかなったが戦時中に訓練は大変と言う事は想像が出来る。
「多目的用途艦?」
「まあ飛龍と同じ種別になる……畝傍(二代目)は試運転も兼ねてな」
「艦名は?」
「それ決まってないんだよ」
九鬼と話す地方司令官は苦笑すると伝令兵が入って来る。
「何事か!」
「米国ハワイ工廠からの電報です」
書き起こされた文面を見ると多用途艦の艦名が記載されていた。
「マルク.グラーフか……」
「辺境伯と言う意味ですね……確か」
「スカパ.フローの一斉自沈の一隻だよ」
スカパ.フローはスコットランドのオークニー諸島にある入江で先の大戦でも英国海軍の拠点の一つだ。極光艦隊も幾度か利用している。先の大戦後、ドイツ海軍の艦隊はここに抑留されていた……それは戦勝国への分配される事を意味していた。当時の指揮官は自沈を決意し1919年6月にそれは実行された、当時展開していた英国海兵隊も完全に出し抜かれ74隻のうち52隻を自沈、幾つかは座礁させたが流血の惨事になる。その後英国海軍は殆どの戦艦をサルベージする事に成功させた……が現場海域と当時の技術ではサルベージ不可能されて放置される事になる。

マルク.グラーフはその一隻であり海底に残されたこれらの戦艦は今では潜水士の訓練個所として重宝されており極光艦隊の潜水士らも馴染みがある場所だ。
「余談だがこれはフランスを落胆させたようだよ……」
塹壕戦で犠牲者を出して米国まで巻き込んだ末に漸く戦艦をタダで入手出来ると言う時に自沈は英国海軍の看板に泥を塗る程の一矢報いた訳だが……。
「畝傍はまだ使えませんが……」
「ああ、横須賀海軍女性士官学校の遠洋実習軽巡“伊豆”に支援業務を頼みたいのだよ。マルク.グラーフの公海試験にな」
「無茶ですね」
「君はオブハーザーとして乗船して貰うが非常には戦闘指揮を執って貰いたい」
伊豆は香取型軽巡の準同型艦として建造された横須賀海軍女性士官学校所属の遠洋実習軽巡だ……昨年就航しておりうら若き女性士官候補生らの教材として活用されており、時には台風で被災した地域に救援支援として出動した事もある。
「数時間後には沖合に到達するからな」
「急ですね」
「辺境伯はアメリカ主導での建造されたからな……」
亡命政府海軍にしては異例だがナチスドイツの崩壊後を見据えて活用するには空母型が一番便利だ……。
「亡命海軍向けの艦艇は水上機母船が多いと窺ってますが」
「事実だよ……そっちの方が戦術の幅が広がるからな」
亡命ドイツ海軍は水上機母船及び潜水艦母船の調達を始めていた。そこで大鯨型潜水母船の図面を元手に開発が進められ、やがて他の欧州各国の亡命政権らも開発に乗っかる事になる。

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