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戦艦空母艦隊
その他リレー小説 - 戦争

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戦艦空母艦隊 147

「まちがいはないな……」
「先生分かるんですか?」
「心理学の“教科書(=学術書)”は皆欧州言語だからな……ラテン語さえ覚えておけはどうにかなるもんじゃ」
完全に水上走行しているので艦前方のハッチから出て来た元教授は言う。
「伊360潜浮上します」
第七二号艦横に二回りほどデカイ潜水艦が浮上した。これは回天の敷設から撤去までこなす潜水艦で航空機搭載個所をドライチャンバーに改造している。
「大丈夫か!!」
「問題は無い……一隻だけかな」
「ここは俺らに任せて先に行け」
元教授も艦内へと戻る。
水中高速実験艦に出来る事は限られる、艦長の心情を察すると元教授は気を引き締めた。



数日後、水中高速実験艦七二号艦はある島にある海軍施設に入っていた。
「ここが……」
「日本軍の収容所ですよ……最も罪が重い罪人を収監する場所です」
まるで冒険小説に出て来る悪の組織のアジトの雰囲気だ。
「なるほど、余程深く踏み込めないと分からぬ場所と言う事じゃな」
森は呆れるようにして周囲を見渡す。網走がまともに見える……潮騒と混じって不気味な声が木霊しているからだ。
「そのお陰で網走を初めとする各刑務所周辺にて高麗人の拘束やら起きているようだね」
背後に立った男に森はニヤリとする。
「Mr.ヘルトマン、貴方も呼ばれましたか」
碧目で背が高く勇猛果敢な体格である事はスーツを着てもよくわかる……。
「ええ、Mr.モリ。貴方は興味を示さないと思われてましたが」
「教え子に海軍少将がいてな……そいつが手紙をよこしてきた。まっ、わしのような老いぼれよりもお主の意見の方がよいかな」
ヘルトマンは亡命ユダヤ人であるがドイツ系である……ユダヤ人でもややこしい立場ゆえに表だって活躍する事は無く、彼は祖国にて心理学助教授をしていたが今は各大学にて心理学を教える立場だ。
「いいえ、高麗人との付き合いは日本の方が長いですから……欧州人の私には分かりかねない個所あります」
「もう接触したのか」
「はい……見た感じは狂人ですが理にかなっている個所もあります」
二人は歩きながら話をする。
「この一件は今後のアジア情勢にも影響を与えます」
「問題はワシらや襲撃犯が死んだ後に報告書にイチャモンつける輩が出て来る事じゃな……」
「つまり政争の具になる」
「……その時はその時の政治家や官僚に任せておけば良い……だが民衆を扇動した末に何が齎されるか、それを分からぬ者は……」
森はため息をついた。
「君が安重根か……ああ、私は森 周三だ。心理学をやっている者だよ」
背後にいる憲兵らが何時でも対処できるように棍棒を構える中、森は語る。彼は拘束服により身動きが取れなかった……それでも不気味な笑みを浮かべているのだ。
「生憎私は高麗語は無理なので傍には吉田君が訳す」
安重根が何かを言う。

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