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戦艦空母艦隊
その他リレー小説 - 戦争

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戦艦空母艦隊 146

艦長はそう吐き捨てた。日露戦争は本当に薄氷の勝利と言っても過言ではない……。
「何故植民地支配が横行したか……威信や経済の為でもあるのだよ。欧州諸国が我先にした結果の末に起きたのが第一次世界大戦じゃ」
「たしかあの時もオーストリアの皇太子殿の暗殺がきっかけでしたな」
「うむ……今回の事例も日本と高麗を戦争に仕向ける気だったかもしれんな」
「ではナチスドイツが」
「可能性もあるが……工作員は逃げているだろう」
元教授は軍に関しては素人だが人間心理の観点で言えば鋭い考察をする。
「逃げられるものなんですか?」
「だが欧州内では亜細亜人は目立つ……まっ、中東辺りならごまかしは利くかもしれんが……始末されているかもしれん」
その時鈍く嫌な音が艦内に響く。
「何事だ」
艦長の言葉に副長は言う。
「回天224号が反応して発射してます」
回天とは海底魚雷を内蔵した特殊兵器であり敵艦艇の推進音に反応する兵装だ。
元は旧政権時代に本土決戦用特攻兵器として開発されていたが橘らの手により海底から魚雷を発射する防衛兵器として実用化された。むやみに潜水艦を増やしても今の技術では少数運用は難しい、それなら魚雷を自動射出する装置を作ってしまえと言う発想だ。これには高度な電子回路や演算機の実用化がキモであったがクーデター後に技師や学者の兵役免除が功を奏して実用化したのである。米海軍がうかつに日本本土沿岸に近寄れないのは海底魚雷は五十三センチ口径酸素魚雷を使用し大型艦でも当りどころが悪ければ沈没する品物である。
これにはアラスカに拠点を置いた新太平洋艦隊のキーガンも頭を悩ませる事になる。何故なら米国は潜水艦による日本本土にエージェントを送り込む為に幾度か仕掛けているが何れも通信が途絶した……中には有望な人材が艦長を務めた潜水艦も含まれており彼は悔やんだ。そんな中呼びつけられた海軍本部で懲りずに作戦を続行を要請した情報機関の管理職の襟首を掴み脅したのである。


 “そこまで言うなら潜水艦を与えるから今度はおまえが指揮をしろ、行方不明になったら艦載機で自宅をぶっ飛ばしてやる”


この言葉は周囲を凍らせ、その場にいた大統領は中止を決断した。何せ激怒した拍子に咥えていたコーンパイプの吸い口が砕かれていたからだ。更にサンフランシスコ湾奥にある潜水艦研究機関からも数だけ揃えても無駄と言う手厳しい意見もあったからだ。この回天の存在を知ったのは布哇講和条約後、幸運にも海上を漂流や浜に漂着した米軍潜水艦の乗務員の遺骨と遺品の返還が初めて実施された時だ。
その際には顔写真も撮影されており身元判明は思ったよりもスムーズに進んだ。火葬した事を陳謝したが衛生上問題があったので仕方あるまい。これもまた米国の驕りが生んだ犠牲者なのだ。

水中高速実験潜水艦七二号艦が浮上航行したのは付近に仕掛けられた回天の発射に備えてであった。命中可能性もありその際には脱出出来るようにする為だ。
「艦長、様子は?」
「今の所は浮遊物は無いですがねぇ……」
この騒ぎで駆け付けるだろうなぁ……面倒な説明するのかなと思っていた。
「艦長、浮遊物。四時方向です」
木の樽やら破片が浮遊している。
「ドイツでしょうか?」

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