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戦艦空母艦隊
その他リレー小説 - 戦争

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戦艦空母艦隊 144

だがそんな事を思うのは韓国人を知らない人の認識だ。高麗海軍の改呂号潜は願っても無い獲物に思わず潜望鏡深度まで浮上していた。
「日帝の戦艦が傾いている!」
船長の言葉に沸き立つ水兵……だがソナー手はその魚雷音を聞いて叫ぶ。
「後部魚雷!距離400!」
「メインタンク注水!」
潜望鏡をしまわず改呂号潜が潜水するが高千穂は見えていた。
「主砲一斉発射!」
右舷に向いた砲身は微調整済みだ。そして51サンチ口径砲身は一斉に火を噴いた。砲弾はそのまま水面を跳ね跳ぶも弾頭から子爆弾がばらまかれる。改呂号潜の頭上で発火する。


強大な爆圧は水圧に変化され改呂号潜を激しく揺らす……電気が消え、船体各所に亀裂が生じ浸水が起きる。更に後部に接近した高千穂が放った魚雷弾頭から網が広がり改呂号潜のスクリューに絡まり付く。同時にブイが海上に浮上する。
「せ、潜水できませんっ!」
「なにぃ!」
改呂号潜の周りには既に他の駆逐艦から拿捕用魚雷により膨張式フロートが展開され浮上した。これが無ければこの改呂号潜は沈んでいただろう。
「これまでか」
艦長はセイルに出て見た光景は沈みかけた筈の高千穂が迫っており、こういうしかなかった。



天皇陛下御一行はその日のうちに日照丸にて帰国したのが救いとなる。しかし高麗共和国は深刻な自体になった事は変わりはない。暗殺犯は日本へ引き渡しに即応じたとしても……高麗共和国海軍の一部が反乱した事は明かされる事もなかった。

日本政府としては対ドイツ戦に響く事を避け、天皇陛下御一行が無事に帰国した事もあり一応の決着を付けた。殉職した李家准尉は二階級特進し中尉として記録される事になる。既に妻を亡くし実子こそいなかったが葬儀に関しては定年退職し長閑に過ごしていた士官学校時代の同期らも訃報を聞いて駆け付けた。彼の自宅にて関係各位其々の遺書が見つかり弁護士の元で封を切られた。自分が殉職した際の葬儀から埋葬まで記された物から海軍本部宛てには軍葬の辞退、更に銃撃犯に対しては寛大な処置を願い出る内容であった。元同期は困惑したのは軍葬の事だ……余程慕われていたのかこれが見つかった時点で出席者が入りきれないと判明、更に宮内庁を通して皇室からの弔金を渡す使者が来る……こうなると海軍本部で軍葬するしかないのである。マスコミ各社に対しては過熱報道を控えるように通達を出した。


葵川は北大西洋の空を見上げていた。
「心配ですかな?」
「チャーチル元首相……」
「我が国は七つの海を支配し広大な植民地を持ってました……その数だけ独自の王朝を潰したと言っても過言ではありません」
最も大航海時代まで含めると何も英国だけでも責任ではない……日本も自らの民族と国土を守るために近代化を図り打って出た、李氏朝鮮王朝はそれが出来なかったのに過ぎない。
「……さてナチスドイツ崩壊後はどうするのですかな?」
「私は政治家では無いですよ……ドイツに関しては欧米の首脳陣に一任します」
葵川は苦笑して言うが中東政策に関しては日本も原油輸入に関わるのでイスラム教対策がキモになる……聞けばイスラム教は宗派間の対立があり、しかも欧州侵攻を掲げる指導者も出て来る可能性もある。そうなると如何に中東に近代化を浸透させるか……葵川は腕組みをする。
イスラム教に関しては日本は馴染みが無い……ただ日本仏教にも宗派間の対立した時代もあったしその時の僧侶達の行動も分かる。
「裁判はどうなるでしょう?」
「穏便に済めばよいのですが……まあ、万が一に備えて私の恩師に書を送った所です。
「恩師?」
「心理学の教官ですよ」
チャーチルは納得した。


数日後、東京郊外多摩某所……戦時ではあるが本格的な大規模団地が建造されつつあった。多くが日本で過ごす事を決めた日本帰化ユダヤ人や亡命ドイツ人の為の住居である。その模様が見える昔ながらの長屋にて手紙を見ていた老人は腰を上げる。その様子を見守っていた海軍士官服を着た男に言う。
「葵川の頼みならしかたあるまい……若いの、世話になるぞ」
「ありがとうございます!」

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