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戦艦空母艦隊
その他リレー小説 - 戦争

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戦艦空母艦隊 140

「リシチョウセン王朝すら守れなかったマケ狗らはプライドだけは立派ですから」
「まあ、気持ちは分かるが……穏便に頼むよ」
「相手次第ですよ……艦長、万が一の時には遠慮なく銃口を向けても構いません」
彼の両親は日本に帰化してそこで子供を産んだ。この時期は朝鮮人には差別意識が強かっただけに苦労したらしい……海軍に志願し首尾よくこの近江に配備されたのはそれだけ優秀なのだ。
「高麗海軍の潜水艦は改呂号潜だったな」
元は明治末にイタリア、フランス、英国から輸入された八八艦隊初期の中型潜水艦であり、WWTの後にドイツUボート取得までは主力を務めた。今は改良された改呂型潜として亜細亜各国海軍の主力を務める事になる。最も訓練用や技術取得の一面が強く沿岸防衛に特化している。高麗海軍も一応保有しているが基礎学力が低い故に訓練すら危ういと言う。


高麗海軍の潜水艦導入には紆余曲折があり、当初は英国からの導入を目指していたが戦艦以上の軍事機密の塊でもある潜水艦をそう簡単に輸出する訳でもない。ましてや英国は祖国の存続をかけた戦いで到底余裕もない、米国に打診するも国力が日本以下である事が分かるや色んな理由を付けれた上に断れた。結局、高麗海軍は改呂型潜を導入するしかなかった……しかも呂一号型と言う最も最小のサイズを……最も海軍内では長門型導入が先と言う声もあるが今の高麗国では無理な話だ。
「しかし、思ったよりもトントン拍子に進んじゃないのか?」
「高麗国が訪問先候補の際には反日思想が強い地域は除外したからな…」
即ち今でも反日思想が根深く残る地域は除外する正統な理由があるのだ。これらの地域は今後経済や政治面でも高麗国内は元より世界からも取り残される恐れもある……最も独立運動に発展しても長続きはしない。
「それに陛下の護衛には海軍からも参加している」
「畝傍(二代目)の乗員らを動員しているのは……その為なんですね」
これは永く続く皇室警備でも前代未聞、陸軍の縄張りでもある陸上での海軍士官を任務に当らせる事自体異例でもあるのだが……厳つい野郎ばかりでは近寄りがたいのも事実、無論皇室には少数であるが皇后や皇子専用の婦人警護官も居るが今回の様な個所での訪問になると危うい。陸軍でも婦人や少女士官は存在するが実戦経験が無い、そこで畝傍(二代目)の面々に白羽の矢が来たのである。畝傍(二代目)は現在は釜山沖にて現地対策本部として稼働している。
「何事も無ければよいが」
近江の艦長はため息をつく。
天皇陛下はお召列車により半島の主要都市を訪問……高麗共和国は統治時代には満州鉄道の延長線上として鉄道が敷設されている。日本国内と同じレール幅では無くシベリア鉄道と同じにしている。これは対ドイツ戦に備えた準備でもあるがシベリア鉄道を実質支配している東シベリア共和国が親日である事も大きい……とは言えお召列車は持ち込まないといけないがレールの幅が違うので台車を取りかえる作業をしなければならないが満州鉄道の車輛は日本で製造されたモノが多いので大して問題はならなかった。
寧ろ問題なのが運用だ……当初は高麗国鉄に任せるつもりであったが高麗人の人員育成が上手くいかず、最終的には高麗国鉄に居るお召外国人運転手、即ち日本国鉄と隣国の満州国鉄道からの出向組が取り仕切る事になり、陸軍鉄道連隊も加勢する事になる。近代化を国内外にアピールするチャンスであった筈が逆に朝鮮半島の近代化の遅れを露呈する結果になった高麗国政府はため息どころか虫の息だ。
「東京も無茶をしたがるな」
「そこら辺は仕方ないですよ……列強が産み出した競争の果てにこの大戦が始まってしまった、日本としては敢て共和国制度に移行した。帝政を終わらして……」
法律により皇族を国の象徴に定めた初の外遊は列強思想からの脱却したと言うアピールをしているのだ。
「さてと……上手く行くといいがね」
東京の参謀本部から派遣された初老の士官は吐き捨てる様に呟く。

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