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戦艦空母艦隊
その他リレー小説 - 戦争

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戦艦空母艦隊 139

”ヘリボーン”の誕生である……これにより限定的とはいえ補給路が形成される事になる。戸惑っているうちにマダラスカル島東側は海兵隊と陸戦隊により完全に連合軍の支配化に置かれ同島ナチスドイツ第三帝国軍は西海岸からアフリカ大陸へと逃げるしかなかった……例え海を渡りきった所で勢力圏の北アフリカまでは到底辿りつくわけでもない。中にはイギリスの同盟国でもある南アフリカ共和国への亡命して終生を過ごした者も出てきた。ウラン高山攻防戦に向かった部隊は司令部直属とあってこの様な事は許されることもなく絶望の中、かつての同胞に銃口を向けて引き金を引いた。激闘は数日に渡るも連合軍加盟国の各特殊部隊は夜戦を仕掛けた……結果、敵司令部は壊滅。残っていた士官らは投降するもの、自決をするものに分かれた。勝因は幾つかあるが高千穂の司令部能力によるものがデカく更に通信システムと従来の伝令兵との組み合わせも光っている。この戦艦は危機的本土防衛の際に編成される近海防衛艦隊旗艦として設計されているので通信設備に関しては飛鳥よりも優れている。
高千穂を敢て米海軍との共同作戦に投入させたのは戦後になって再び米国政府が戦争を仕掛けない為にする為の心理戦でもある。つまり大量生産された米海軍の戦艦では用意周到にならない限りは沈める事が不可能とされている……政治や外交面を含めると日本を陥れるのは並の年数では無理だ。これはホワイトハウスも認めている……最も今は本土にハーゲンクロイツの旗が靡かないようにするのに精一杯だ。


照和天皇の亜細亜諸国歴訪は順調に進み最終訪問地は高麗国だ。新鋭空母である近江が総旗艦兼特設警備本部として展開していた。
「何事もなければよいが……」
艦長はどうしても伊藤博文首相暗殺事件が頭をよぎる、あの時の暗殺犯はほんの数年前までは反日思想を持つ朝鮮人では英雄そのもの、故に宮内庁からもかなり慎重な意見も出ていたが、朝鮮国の現政権は“親日派(親欧米派)”でがっちり固めており躍起になっている。
これには色々と事情が見え隠れしているが最大の理由が”近代化の成果”だ。高麗国は亜細亜各国では近代化に遅れており日本に最も近い国家と言う利点を生かしきれないでいた。これには韓国併合時代の遺恨が最大の要因だ……近代化支援をしても反日思想を持っている高麗人が多く、他の列強からの支援を求めていた。だがドイツとイタリアはファシスト化し、征服されたフランスを初めとする欧州本土の各国は援助は不可能、イギリスは戦争で手が回らず、スイスは中立政策により話だけは聞いてやる程度、アメリカは日本との関係上最近になって援助が来るようになったが日本の方が比重がデカく反日思想を持つ者にとっては歯軋りをするしかない。故に自国の技術や工業力では最新鋭の大型軍艦所か一般船籍すら保有できないでいた。それ以前に教育面では識字率の低さに加えハングル文字の欠陥性と言う近代化以前の問題が山積しているのである。故に高麗国海軍の主力艦は旧日本海軍が明治時代に建造された戦艦を近代化改修して使われており、沿岸警備ですら怪しい……。
戦艦の性能は沿岸警備面では十分、だが動かす人材は不足気味である……これも反日感情が根強く残り、海軍の場合日本を模しているので任官拒否も度々起きていると言う。こんな状況なら日本本土から新鋭空母が展開しても高麗政府は黙認するしかなかった。何故なら今の主力艦ではUボートを倒すには無理だからだ……海軍からはアメリカ海軍の戦艦を要望する声もあるが維持できる場所(=ドック)も腕も無い。こうなっているのは全て反日思想に囚われている国民が居るからだ。国民の中には満州国を初めとして亜細亜各国に移住する動きもありこれには常識的な知識人に見られている。実際近江に配備された水兵の中には高麗国からの移住した者も含まれており、今回は朝鮮語の通訳として通信室に缶詰状態だ。
「艦長、今現在は異常はありません」
「そうか」
「海軍本部から李家氏が陛下の案内役として抜擢したのは正解でしたな……」
近江の艦長は嫌な予感がしていた。
日本に帰化したとは言え、彼は李氏朝鮮王朝最後の王族である事は変わりは無い。間違ったメッセージを発している様な気がする。
「万が一の時にはタンデムヘリにより脱出、この船に着艦する手筈だ。そうならない様に祈るしかあるまい」
司令官も気が気でない……タンデムヘリとは米国/英国陸海軍が共同開発しているCH−Z1 チヌースの事である。今回の照和天皇訪問には米国や英国政府も注視しており万が一の事を備え異例であるが試作機をパイロットと整備士付きで近江に臨時派遣した。先のマダラスカル戦でも投入されトルーマン大統領やチャーチルも試乗した事もあるがロイヤルファミリーを載せるとなると話は異なる。だが朝鮮半島の利権を狙うなら日本に恩を売っておくのも一つの手だ。
「高麗共和国海軍はどうなんでしょう?」
「ツカイモノニナリマセン」
通信室から来た水兵はブスッとした表情で言う、この分だと相当言われたのだろう。

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