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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 137

陸上での補給線の大動脈は鉄道であり、蒸気機関車が常識だ。これは海軍の橘も分かってはいるが日本だからこそ気が付く事実もある。それは蒸気機関車の数を増やせばそれだけ蒸気機関車の欠点が出て来る、蒸気機関車は石炭(まあ一部は重油を燃やす車種もある)と水を要する。数を増やせば石炭や水を補給する施設を要しその分駅そのものが拡大する、それは市街地が構成されてしまった主要路線では大抵無理だ。更に蒸気が出来るまで時間を要するので戦場に置いては命取りになりかねない……そこで海軍は船舶の機関研究に置いて完成しつつあったディーゼルエンジンを機関車に出来ないかと打診したのである。国鉄技術者さえも唖然としたが海軍は既に各地にある大型ドックや海軍工廠内に置いてナローサイズであるが外国製のディーゼル機関車を使っており、国産化も進めていた。ディーゼル機関車を主力にする構想は国鉄内部でもあってか話はトントン拍子に進み、更に亡命してきたドイツ人やユダヤ人の中には鉄道を生業にしていた者も居てディーゼル機関車の実用化が達成。とりあえず今は国内の線路敷設工事用や入れ替え用にしているが何れは客車や貨物輸送をするつもりだ。
蒸気機関車よりも馬力があるのが電気機関車だ、しかしモーターを動かす膨大な電力供給には架線を初めとする様々な施設を要し到底戦争地域での運用は非現実的とも言える。その点ディーゼル機関車は蒸気機関車よりは補給施設はコンパクトに出来るし何ならタンクローリートラックを宛がえば良い。その上方向転換する必要もない……泰面鉄道の様な路線には正にうってつけである。
「次官殿はこの度の陛下の亜細亜歴訪は賛成なのか?」
「はい……我が海軍としても尽力を尽す所存で、彼を同行させます」
「李家……って!」
「彼の素状は私が保証します……」
保証も何も彼に関しては他国の王族に関する一切を請け負う宮内庁外交部からも“くれぐれも失礼が無い様に配慮を”と言われている。李氏朝鮮王朝最後の王族……それが李家である。
「陛下の暗殺は確実に起こるでしょう……」
橘は懸念していたが陛下の亜細亜歴訪は外交的にも利用せざる得ないのだ。



照和二十年四月、日本は“日本共和国”に改称し新憲法である照和憲法を公布……男女平等、普通選挙権を成人に無条件で与え満二十五歳以上の日本国民なら参政権を与えた。国民義務教育を初等〜中等学校までとして高等学校(若しくは高等教育を受けられる各種専門校)の進学を努力目標にする事を定めている。国防に関しては侵略行為を禁じているが同盟国の救助行為や交戦国の侵略の恐れの場合は防衛行動の一環として認めることにした。
つまり、今の戦争状態でも“合憲”状態にするのが目的との言える。身分制度を廃し、天皇陛下を長にする皇族は国の象徴とする事も明記、報道の自由も確立されているが公務員の守秘義務も大幅に拡充されている。この様な法律を制定したのは一つは植民地支配する国家からの脱却である……先進国に先駆けてやる事に大きな意味がある。これは将来的、ナチス第三帝国との戦争が終わり、再び米国が戦争のきっかけを作らない為の手段だ。


翌月、日本共和国海軍初の護衛空母出雲が進水……新時代にふさわしくこの空母の艦載機は全てヘリコプターである。
船体は伊勢級多目的装甲空母であるが航空甲板はアングルトデッキでは無く、一昔の直進型である。固定翼機の様に離着陸の際にスペースを要しないのがヘリコプターの最大の利点だ……空母と言うよりは輸送艦と言う色合いが強いが艦隊随伴対潜哨戒任務にはヘリの存在が不可欠である。
「如何にか形にはなりますな」
着艦訓練を繰り返す日本共和国海軍対潜哨戒ヘリ“鶚(ミサゴ)”を艦橋から見る艦長に航空隊隊長は言う。
「うむ……陛下の亜細亜歴訪の際には対潜哨戒の旗艦となるからな」
この事は既にナチスドイツ第三帝国に知られていると理解した方がよい……先のインド洋決戦では退けたが北極海通過ルートを確立しているなら話は別だ。

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