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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 131

米国の爆撃は工業力にモノを言わせて大量に爆弾を投下する、日本やドイツの様に誘導弾を使う事は無く、米国での誘導弾開発に関してはここ数年漸く本腰を入れたと言う有り様だ。米国方式は確かに効率こそ良いのだが多数の民間人を巻き込む事は目に見えている。ドイツが盛んに米国の非道さをアピールする事は目に見えている。黒田は戦後の事を考えると米国のやり方は遺恨を残すかもしれない……。
「司令官殿は休んでください」
「そうもいかんよ……潜水母艦型が一隻出たと言う事は数隻はいると思うよ」
ゴキブリではあるまいし……高千穂の艦長は苦笑するがあり得る話だ。
幾度か前述したがドイツ海軍の潜水艦部隊はヒトラー肝入りであり海軍内ではエリート扱いだ。しかし潜水艦は万能ではない……一つ運用を間違えれば海の底へと消える。所詮補給母船やそれを護衛する戦艦や空母が無ければ潜水艦はただの標的……しかしドイツ海軍のUボートは侮れない。潜水補給艦型が出たと言う事は何処かに空母型が居る筈だ。
「砕氷機動艦隊も限界があるからな」
「潜水艦の追加も容易ではありませんからな……」
潜水艦は建造するよりも乗務員の育成が難しい。ここら辺は米国の存在が否が応でも必要なのだ。
「亡命政府への戦艦建造も始まるそうですね」
「ああ、最大手の自由フランスは本国で本来建造される筈の正規空母をアメリカでの建造を目指していたが……そう簡単にドックを渡すわけにもいかんだろ、最初は既存戦艦の航空戦艦化も考えていたが……」
「あすぱらがす将軍が気にくわなかった」
「そうさ、結局は改長門型船体を利用する事で納得してもらった。あいつには一升瓶数本送っておかんとなぁ」
黒田は後継者である彼の心労を知っている。
対ドイツ戦略としては東シベリアも重要だ……ソ連は残党軍がレジスタンス化しているが事実上崩壊しており東シベリアへの合流している旧ソ連軍も多く、これには生死不明のスターリンが如何に酷いのか如実に出ている。ウラジオストックを拠点にする事から東エレサイム共和国は自国海軍ウィンデーネ型多目的砕氷装甲空母二番艦“オンディーヌ”の建造と同時に同型艦を建造、これが東シベリア海軍総旗艦ウリヤノフスクとして配備される事になる。これには極東エレサイムの国民の中にはシベリア鉄道の線路を徒歩で歩いてナチスの迫害を逃れたケースも多く一つでも恩返しがしたいと言う現れである。日本政府にとっては第二次日露戦争回避にもなり得るとして容認したらしい。
「東シベリアは恐らく潜水艦中心になる」
「?」
「ワルター機関なんて繋ぎだ、奴らは原子力が欲しいのさ」
「はいっ?」
「核反応蒸気機関とも言うべきかな……」
船長はピンとこなかったので黒田はそう言い替えた。

「そろそろ始まるかもしれんぞ。ナチスドイツ海軍との大海戦が」
「まさか……拿捕されたUボートは」
「ソ連沿岸を伝って来たのさ……インド洋を突っ切るには無謀すぎるからな」


翌朝、那覇軍港に停泊する水上機母艦に搭載されたデリックにて一際目立つ深紅の戦闘飛行艇が海面に下ろされた。
「ポルコ、どう?」
「舵の反応はよくなっている」
11m型作業艇に乗ったフィオが舵の調整を終えると別の作業艇が戦闘飛行艇を曳航し離陸位置に移動させる。
「さてと……今日も頼むよ」
ローイスロイス社が祖国イングランドの命により試作でありながらも持ち出した大出力エンジン、日本の樹木で削りだされたプロペラがその出力を推進力に変える……間伐材を特殊な加工により金属にも匹敵する強度を持つ機体と主翼……ポルコはイタリアに置いてきたかつての仕事道具と瓜二つなこの機体を何時のも用に離水させた。
「コントロール、見慣れない戦艦を確認した」
『そいつは飛鳥型二番艦の高千穂だ……近く大作戦があるんだろう』
母船である水上機母艦魁洋からの無線にポルコは思う
「(いよいよか……)」
サボイアSX21−Jは夜明けの日光を浴び、その深紅の翼を一層輝きをました。


戦艦空母若しくは航空戦艦構想は第二次世界大戦の戦前……即ち1926年(照和元年)当時英国ヴィッカーズ社の軍艦設計部長ジョージ.E.サーストン氏の著作ブラッセイ海軍年艦の誌上にて幾つかの航空戦艦を発表している。その時は航空機自体は軽かった事もあり彼が提唱したプランでも運用出来たが航空機の発展により重量が嵩み飛行甲板からの発艦は不可能とされた。まあ艦載機を水上機にした“航空巡洋艦”として実現したのだが奇しくも翌年即ち1927年(照和二年)日本帝国海軍から高速巡洋戦艦金剛(後に“戦艦”に呼称変更)の主任設計者になるのだがよもやその金剛が自ら提唱した航空戦艦に改装されるとは思いもしなかったのである。

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