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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 130

確かに戦車の輸送は軽戦車でも貨物自動車が理想である……戦車単体の長距離移動は避けるべきでありこれからドイツ戦車の様な重戦車が導入されると貨物自動車と道路舗装を進める必要もあった。ドイツのアウトバーンも上陸艇や戦車を運ぶ為に設計されているとも言われている。

沖縄県は農業用軽便鉄道がいくつかあるが国鉄路線は存在してない……計画こそあるのだが、人手が足りないのである。そこで陸軍は他県に先駆けて高速道路と国道舗装化を進めたのである。当然貨物自動車の試験運用も兼ねており、信号機や交通標識の試験運用も実施、一番忙しかったのか警察と陸軍と海軍の憲兵隊、そして米国陸軍から派遣されたMPである。
この時期になると米国政府は日本を対ドイツ戦の重要な同盟国として扱うようになり沖縄は重要な中継地点になっていたのである。その為か日本人とのトラブルも多く米国陸軍から派遣されたMPは日本陸軍/海軍憲兵隊との協力体制を取っていたのである。ストレスが多く酒と女でハメを外してしまう米軍関係者も少なくは無い……日本側もかなり苦労したそうだ。米国は既に自動車社会であり模索していた日本側にとってはかなり参考になったのである。軍隊は社会の縮図なので米軍式の自動車運用術は日本にも応用できるモノもあったからだ。
「日本海軍陸戦隊は使い物になるぞ」
「おいおいっ」
「実戦を経験してないが基礎は出来ている……戦車に関しては上も協力を惜しまないだろうな」
シオンの言う通りであった、既に米国は日本海軍陸戦隊にシャーマン戦車供給を決めており先持って正規強襲貨物揚陸艦(AKA)アンドロメダ級を二隻にシャーマン戦車を載せていたのである。
これには海軍陸戦隊の目的が陸軍の様に“敵地侵攻し本拠地制圧”ではなく“敵地海岸線上陸し拠点形成し防衛”と言う原則がある。言ってみれば陸軍が来るまでその拠点を守る事なので素早く揚陸出来る戦車を求めていた……日本の戦車は軽戦車であり重戦車相手では分が悪い。ドイツ戦車は攻撃も防御能力もあるが揚陸には港湾施設がある所が望ましく海岸線に上陸するとなると最悪漁礁になりかねない。大量生産とバリエーションならシャーマン戦車が勝るのだ。アンドロメダ級二隻は一か月前に那覇軍港に到着しており、海軍陸戦隊の戦車隊が結成されていた。
日本陸軍の戦車は従来ある軽戦車に加えてイギリス、ドイツの様な重戦車を揃えるようになっていたがかつての敵国である米国戦車を使うのは異例である。それはドイツの島嶼制圧を十分あり得ると言う危機感を持っているからだ……反対する声も出たが所詮は精神論、科学論でなければ日本はこの先も存続しない。

「炊き出し?」
「何でも日本に亡命したユダヤ人やドイツ人らの御婦人達が来ているってさ」
話には聞いてはいたが日本政府は開戦前から欧州から亡命したユダヤ人らの一時滞在を認め、米国へと送っていた。不幸にも戦争になり取った手段は長期滞在だ。その極端な例が極東エレサイム共和国である……建国には東シベリア共和国初代大統領となるトロッキーらも関与しており米国の戦略を狂わせたのである。
「パスタとは嬉しいねぇ」
「日本は小麦は大量に取れないが満州国とかはアメリカ並にイケるらしい」
釜で茹でているパスタ、そして日本で生まれたと言うミートソースを慣れた手つきで調理する女性らを見て二人は感心する。
そんな最中那覇軍港沖合に一隻の戦艦が停泊する。極光艦隊総旗艦を務める飛鳥型の二番艦“高千穂”……この戦艦は試験艦として建造されているが日本海軍の各艦隊にて旗艦が修繕により長期戦線離脱か沈没した際に予備艦として活用する戦艦である。飛鳥とは異なり当初からヘリ格納庫と飛行甲板を持つ戦艦だ。
「陸は何とか大丈夫ですな」
「ああ、しかしまぁ……Uボートがこんなに出て来るなんて予想しなかったぞ」
艦橋にてドライカレーの握り飯を頬張る指揮官、黒田はぶつくさと言いながらも指揮官室にて書類決裁を終えて顔を出した。今回の大物は補給艦型潜水艦が生け捕りに出来ており今頃横須賀軍港は米国士官も押し掛けているだろう。悲鳴や妬みが聞こえて来るがこっちも好きで手柄を立てた訳でもない、彼もクーデター後は軍を去ろうとしたが橘次官らが引きとめた。幸いにも後輩に自分以上に頭脳がキレる奴が居たのでこうして艦隊指揮官の職を得た。
「指揮官どのはマダラスカル上陸作戦はどうみますか?」
「俺は上陸戦に関しては素人だ。だが如何に敵飛行場を効率良く潰せるかか?」
「米軍は高度爆撃機を使うそうですが」
「愚かな事を……」

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