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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 14

赤城の航空参謀長は日本軍航空研究会の主用メンバーだ。ここで言う回転翼機、英語ではヘリコプターと呼称されている航空機は古くはレオナルド.ダ.ビンチが提唱したモノだ。だが主翼その物を回転させるには複雑な動力伝達機構を如何に実用的耐久性を得るのかが問題になるが何よりも姿勢制御が問題視された。竹トンボを飛ばすと分かる様に飛ぶ事は飛ぶがその方向性は風に流されるし機体そのものが回るのでとても操縦できない。独逸が実用化したフォッケ.アハゲリス Fa223 ドラッヘは胴体内にあるエンジンから延びる回転軸を其々胴体左右先端に取り付けられた大型回転翼で廻して飛行している世界初実用型回転翼機だ。独逸第三帝国の宣伝省はアーリア人英知の象徴として大々的に報じているので日本軍も知っている。

今の日本なら複製も出来るが航空参謀長はこの形式は精々陸軍しか使えない見解を持っている。まず独逸は典型的なランドパワー国家であり陸軍の戦車はコンセプトも設計も運用も完成されつつある……故に少し機体幅が広くしても良かったのだろう。だが日本はシーパワー国家であり、今の回転翼機の航続距離から察すると天候にも左右される。機体寿命を考えれば艦載可能なサイズが望ましい。変に船のサイズを変えると色々と弊害が出てくるので航空参謀長らは回転翼機の形式が両端双発型(日本軍が勝手に付けたドラッヘ型回転翼機の事)よりも効率が良い形式を探り始めていた。ユダヤ人技師達も亡命独逸技師士官らとの検討の結果、単装回転主翼方式に“姿勢制御用回転尾翼機構”が考案された。つまり機体のブレを制御させる小型のプロペラ機構を持たせるのである。試作機での試験飛行が実施されており数年後には小型でありながらも実用化出来ると言う事だ。
「航空戦艦の様な飛行甲板でも着陸出来る上に格納も出来るか」
「何よりもこれは民生にも広がると考えてます」
彼はそう思いつつも戦況を整理する為に海図を広げる。
「恐らく敵航空隊はロ号弾を知ってしまったので潜水艦攻撃に切り替えるかもしれません」
「ふむ」
何機かはロ号弾の燃焼範囲から外れたがその恐怖感は計り知れない……事実自分も怖いからだ。
「大和の対潜哨戒機で足りますかな」
「うむ」
米国が潜水艦重視に転じている可能性も捨てきれない、独逸のUボート対策は英国救援対策には一つの手だからだ。


米国豪州駐留艦隊旗艦戦略空母“ジョージ.ワシントン”の艦橋は正しく戦場であった。
「な、バカナァ!」
「事実です、戦果評価機のB−32複数機の乗務員も地獄の釜が開いたと」
「なぜだ!いえろーもんきーにあんな兵器があるとは!」
部下が叫ぶ、上官侮辱罪で投獄されても悔いはない表情で。
「閣下!彼らの背後には亡命ユダヤ人やドイツ人の影もあります!!!!!」
「くっ!戦艦群を差し向けろ!」
「提督!」
部下達を束ねる航空参謀長も彼の気持ちは分かる。ミットウェイ海軍基地が壊滅しそこに集結していた戦艦も航空魚雷の集中攻撃末に撃沈、その中には空母“エセックス”も含まれていた。ミットウェイを囮にして日本海軍艦隊をおびき寄せるつもりが来たのは未確認の水上機や飛行艇、恐らく新型と言う事だ。航空機の航続距離は限られている……どうやって敵の水上機や飛行艇が飛来したのか彼はずっと考えていた。
「(日本軍は我々が把握してない暗号や艦艇を使っている)」
漠然とした仮説に過ぎないが亡命ユダヤ人やドイツ人の存在が真実味を出していた。
「航空参謀長!残存機は何機だ!」
「精々小隊が5つ出来る程度ですがパイロットの精神状態が……軍医からの報告ではとても任務に就ける状況ではない者も少なくありません……」
航空参謀長も先程パイロットの一人に話を聞いたがまるで太陽がその場に出来たという表現は自分にも分かる……機体が少し焦げているのだ。しかもパイロットの多くが一時的な視力低下が見られた。
「戦艦群が敵艦隊の足止めの為に向かいます……」
「そうか、我々はシドニーに退却し体制を整える!」
航空参謀長は部下と共に検討に入る、駐留軍の戦闘機は艦載機だ……これは対日本軍上陸戦を想定して陸軍機は少数に留めている。駐留基地に配備されている攻撃隊を一時的にこの空母の所属機にさせる事にした。それは同時に米軍はミットウェイを放棄すると言う意味でもあり、生存者救助の為にこの艦隊に組み込まれた予備攻撃隊になっているヨークタウン級エンタープライズと数隻の重巡に駆逐艦そして補給船団を向かわせる事にした。


足止めに向かった戦艦群はニューヨーク級一番艦のニューヨークに二番艦のテキサス、コロラド級一番艦コロラドと言った何れも老朽化が目立つが乗務員の士気が高いのが攻めての救いだろう。それに航空戦艦を主軸にしているのなら主砲の数は勝っている。

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