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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 125

「この方はよく父を訪ね、千島越冬や南極探検の話を聞いてました」
「彼は今、艦隊指揮官として本土を離れてます。弔電で申し訳ありません」
葵川は心理学を学んでいくにつれてこの先日本軍将兵が極限の状態に置かれる事を想定するようになり士官学校段階から心構えやその対処策を考えるようになった。白瀬氏の軍役時代の話は大変貴重であり越冬する際の装備や心理状況には一例とされた。結果後世日本軍は越冬任務に関しては出来る限り雪国出身者を充てるようにして、それ以外の地域出身士官には研修として雪山行軍/宿泊を実施しているのも葵川が白瀬氏を初めとして極限状態を乗り切った人の心理をまとめ上げた論文を出しているからだ。
この様な心理学は日本には馴染みがない、寧ろ時代錯誤の武士道精神が蔓延している危機感を葵川は感じとっていたのだ。
「墓石に関しては陸軍有志らが用意します」
「もったいない限りです……父は憮然としているでしょう」
次女は戸惑いつつも感謝の言葉を述べた。



英国北部某所……葵川は飛鳥の艦橋にて空を見上げていた。
「(白瀬氏の死去されたか……)」
葵川の表情は残念そうにも見えと言う。
「Mr、葵川……話は聞きました」
「おお、フランクリン」
「白瀬氏の功績は偉大です、例え南極点に到達しなくても英雄です……」
フランクリンは若い頃には情報部に出入りしていた時期もあり南極探検した白瀬氏の事は知っていた。
「彼は私に尼港事件を繰り返すなと言われました」
「それが砕氷機動艦隊のきっかけですか……まあアラスカからの冬季侵攻はホワイトハウスでもかなり話が進んでましたが……極東エレサイム建国でユダヤ系有力者らが反対を唱えました」
「なんと」
「仮に実行されたら相当な損害が出たでしょうな」
フランクリンはこの時猛烈に反対した。
問題視したのは砕氷船の運用能力も然る事ながら米陸軍の冬季行軍能力に疑問を呈したからだ、結局は極東エレサイムや同盟国英国との政治的対立を避ける為と言う免罪符で大統領は断念するしかなかった。最も砕氷機動艦隊の存在は知られており未知の部分は多い流氷での海上戦艦同士の海戦なんて無理でもある。
「聞けばアンカレッチに新たなる潜水戦隊を創設すると……」
「噂が早いと言うか……まあ、薄々気が付いてますか我が軍は余りにも潜水艦を軽視してました。しかし流氷海域での活動に関しては艦上戦艦よりも潜水艦が理に適ってます」
無論砕氷船は必要と言うのはフランクリンも分かっている。
米海軍は今使っている戦艦が戦後不要になる可能性を見越して主力戦艦であるアリゾナ級の一隻“アラスカ”を砕氷航空戦艦に改装してアンカレッチに配備したのである。東郷型航空巡洋艦同様、斜飛行甲板を持ち尚且つカタパルトを持つ……主な艦載機はヘリコプターだが暫くは水上機や飛行艇の運用も夏季や冬季でも流氷が及ばない海域で実施すると言う事だ。
「我が海軍も潜水戦隊の再編成を考えてます」
「当然の流れですな……アラスカは潜水戦隊の支援母船でもあるのです」

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