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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 126

「戦況次第では欧州北部戦線に投入も考えてます」
二人は空を見上げて話していた。
「マダラスカル島上陸作戦には我が海軍から蒼龍を参加させます」
「???」
「本来は潜水艇母船ですが大発を多数搭載させてます」
フランクリンも大発と呼ばれる小型上陸艇の事は聞いており、海軍研究機関が慌てて同様の小型艇を開発した事がある。
まだ布哇講和条約が締結する前の話になるが、米海軍の太平洋戦線はハワイ奪還作戦を幾度か考えていた。しかし大西洋戦線や本土防衛陸軍は第二パナマ運河要塞の完成を急ぎたいしこれまでのやり方では現地住民が巻き込まれる恐れがあるからだ。しかもハワイでの抗日レジスタンス組織が思ったよりも育たない事も誤算であったが……何よりも陸軍兵士を揚陸させる動力が付いた小型艇が全くなかったのである。LCVP(上陸用舟艇)を運用する母船も民間貨客船からの徴発、即ち特設船と言う有り様でこれでは制海圏/制空圏を完全に把握しないと運用出来ない品物、フランクリンは業を煮やし海軍研究機関に正規強襲揚陸艦の設計を命じた……だが提示されたのは規格型貨物船“C2型及びC3型を流用したモノであり戦局が不安定な状況ではLCVPをデリックで下ろしている暇すら無いのだ。
結局は空母ベースの魚雷艇母船を元にした強襲揚陸艦が登場する事になる……だが蒼龍は開戦前からそのような要素を兼ね揃えており何度か風水害甚大被災地域への救援物資搬送をしている。特に台風の被害がでかくなる南洋の各島嶼への救援には大発の様な上陸艇が適している……港湾設備が貧弱で破壊されたり元から無い場合は通常の船では座礁する恐れがあるからだ。この様な艦種が出てきたのは実は日本海軍ではなく日本陸軍である。1932年に起きた上海事変発生から二ヶ月後の同年三月、日本陸軍は上海付近の士了口海岸に大規模な上陸作戦を敢行、日本陸軍史上では前例がない師団規模の敵前上陸作戦は貨物船に兵員と上陸用舟艇を搭載し敵前の海岸近くにて上陸舟艇を下ろし兵員を縄梯子で乗船させたが多大な時間と兵員の負傷が相次ぎ、上陸舟艇の損傷も起きた。この様な方法は当時としては何処の陸軍でもやる方式である……が人材に関しては限りがある日本陸軍にとっては忌々しき問題でもあった、対立しがちが海軍に対して陸軍トップが艦攻本部に頭を下げた事はどれだけ危惧をしたのか容易に想像が付く。
海軍も渋々だが陸軍に属していた皇族からの陳情が来れば協力するしかない……まあ実際は変わり者である黒田に全て押し付けることで解決した。彼はまず陸軍兵士が行軍する際の装備を全て自身で身につけ、部下らの静止を振り切り実際に貨物船から上陸舟艇に縄梯子で降りたのである。幸いな事に無事であったが確かに海に不慣れな陸軍兵士にけが人が続出してもおかしくは無いし。港湾施設が無い所での波浪はキツイ、敵の航空機による攻撃が来れば被害は計り知れない。彼はその場で新たなる艦種の設計図を脳内で作成したのである。こうして出来たのが神州丸だ。一見して客船に見えるが上陸舟艇収容甲板は格納庫を兼ねており上陸舟艇は台座に載せられレールによりスムーズに移動し船尾にあるスロープから海面へと投入出来た。陸軍は更に偵察用航空機運用も考えており結果的に特設空母に近くなる。クーデター後は海軍が本格的に開発を手掛ける事になり、こうして出来たのが蒼龍だ。
蒼龍は元は上陸艇を載せる予定はなかったが南洋での救援活動には魚雷艇や甲的艦よりは役に立つ……これは来るべき米国が南洋にある各島嶼への侵攻に備え、邦人の避難や陸軍兵士の素早い投入を可能にしており米軍情報部はこの事を知って布哇奪還を見送る提言をした程だ。
「マダラスカル島はウラン鉱山があります。知っての通りそこには多数のユダヤ人が強制労働されてます」
「うむ……」
蒼龍は艦載機を運用出来る上に上陸舟艇を多数搭載出来る。今回のマダラスカル島上陸作戦は米海兵隊も同乗する事になる。

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