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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 123

因みにMI6とは英国軍情報局の一つで戦後もスパイ組織として現存する事になるが当時は発足したばかりの部署である。そもそもS−109潜は従来なら対Uボート警戒任務の筈が急遽敵地潜入した女性情報士官を回収、基地に戻る筈がドイツの輸送船を追いかけるように指示された。無論駆逐艦数隻が常時随伴し時には戦艦まで……良くここまでバレなかったと幸運続きが海流の影響により数日前に燃料切れの危機に陥ってしまったが運良く極光艦隊との連絡が取れた。取り急ぎ燃料を補給して如何にか本格的な補給作業を実施している。
「シャワーありがとうございます」
「いえ……任務とは言えこの匂いでは不快と思いまして」
女性士官は敬礼をするが男性用しかないので多少やぼったい感じも見える。
「報告書を見ましたが……事実なんですね」
「はい……信じられません」
それはナチスドイツが中東のある山の地下に大型原子炉を持つ研究機関に関する情報であった。
「原子炉の地下化はあり得ると思ってましたがここまでとは」
「ロモアラモスの一件を見ると当然の動きです……」
ロモアラモスの場合は完全に日本軍を見縊っており、内地深くまで侵入する戦力は無いという判断があり、人気が居ないとあって谷間に作れられた。だが日本海軍は当時の総力でこれを破壊した……ナチスドイツとしてもこの事実は重く受け止め大規模な施設を“属国”でも比較的条件が良い中東に建設していた。
「下手すると連合艦隊も呼ばないといけないな」
葵川は静かに思っていた。


照和二十年の元旦……前世なら敗戦濃厚であるが後世は開戦前とは変わらぬ帝都の姿が表す。戦争に盆も正月も無いが橘らの想定以上に戦局は悪化してないが今年の冬は例年以上に積雪が多く、天候も荒れた。大惨事には至らなかったが津軽海峡を航行する青函連絡船二隻が座礁する事故も起きている。
事故要因は操舵手の経験不足、無理も無いベテラン操舵手は海軍が優先的に使っているので若手が舵を取る事が多くこの様な事故はここ数年全国各地の海の難所にて頻発していた。
「筑紫による事故調査は数週間かかります。復旧作業も準備に取り掛かってます」
「油の流出はないのだな」
「はい、工作艦朝日(二代目)が破損個所近くの燃料タンクから油を回収してます」
朝日(二代目)は工作艦だが先代朝日は敷島型戦艦二番艦でありワシントン軍縮会議後に工作艦として改修し日中戦争時には活躍、しかし橘らは支援艦の充実策により琵琶湖型特型輸送艦の船体を使用する事になり昨年実戦配備された。先代朝日は近代化改修され朝鮮国に譲渡される予定である。
「次官殿は今回の事故は」
「戦争による弊害……大規模海難事故にならなかっただけでも良かったのですが」
戦争の長期化による弊害を危惧し始めていた。
国会でもナチスドイツとの停戦案を求める議員もいるが民主主義のアメリカとは違う、ファシスト国家にこちらから停戦を申し込むのは過ちだ。
「事故調査結果は随時各海運会社に送付する予定です」
「うむ……」
橘は海の男としては歯がゆい感じで振り向いて窓の外を見上げた。



オホーツクの海を白く染める流氷……普通の船舶なら最悪沈没の原因になるが砕氷機動艦隊は例外である、元は厳冬期に米海軍がアラスカ経由で日本本土を侵略する事を想定し小規模ながらも機動艦隊として発足、後に間宮型砕氷糧給艦“間宮”、大泊型砕氷多目的支援艦“大泊(二代目)”、伊勢級多目的装甲空母四番艦“山城”は日本海軍唯一の砕氷装甲空母として配属された。
「ソナーはどうだ?」
「氷が軋む音ばかりですよ」
昨年の宗谷の一件もあり流氷対応セイルを装備したア号潜二隻が配備された。ソナーを強化しセイル上部に氷砕き棒を装備している。
「ナチの野郎、ここまで来ますかねぇ」
「ヒトラーの潜水艦偏重はある意味では正解かもしれん、現にホワイトハウス爆撃は想像以上の戦果だ。例え大統領を仕留めてなくてもな……空母も出来ると言う事は補給艦も出来るし大型艦なら長距離航海も出来る」
ア号潜000甲号の艦長はそう告げると海図を広げる。
「だがヒトラーは潜水艦のリスクを理解してない。海上戦艦以上に乗務員の生存率が低下する事になる」
「確かに……育成には大変ですし、英国海軍の潜水艦の中には畝傍(二代目) の様に女性士官ばかりになった艦もあると」
「副長、イングランドジョークかね?」
「陸に上がった時に噂で……決して炭酸ガス濃度が上がってないですぞ」
副長は物騒な冗談で切り返すなり本題に戻す。
「今年は異常気象のお陰で例年以上に流氷が多いと言う事です、噂ではカリブ海要塞の目的は海流を変えて欧州を異常冷夏にする腹のようです」
「なるほど……アメリカならやりそうだ」

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