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戦艦空母艦隊
その他リレー小説 - 戦争

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戦艦空母艦隊 120

海軍は如何に戦艦群を活かせるか……これらの艦艇を動かすには多種多様の特務艦艇を揃え運用する事が大事である。前世日本海軍はこれらの船を民間から徴用したので負けた、後世日本海軍はこの様な事を起さない様に橘らは戦艦よりもこれらの特務艦艇の充実を急がせたのである。ここで注目したいのが病院船の位置付けである。日本海軍は正規の病院船を保有した事は無い。病院船は確かに軍が使用するが病院船及び病院は戦争当事国間では軍とは独立した中立の立場であり、いかなる理由でもこの病院船/病院を軍事目的に使う事は許されないのである。その為病院船はこれまでは徴用する形を取っていたが自前で持つ事にした。
その理由はABC兵器、即ち核、生物、科学と言う大量破壊兵器対策……これが都市部で使用されると途方もない死者と世代を超えて影響が出る。アメリカ海軍は先のロモアラモス研究所核爆発による被害にホワイトハウス爆撃を鑑みナチスドイツによる核攻撃を想定して病院船を調達し始めている……ただし名目はフロリダ辺りのハリケーン災害後の支援と言う事になっている。


千羽鶴型病院船 紅鶴……先の畝傍(二代目)全乗務員戦線離脱と言う苦い教訓から海軍が自前で持つ事になった病院船である。大鯨型潜水戦隊母艦の船体を流用したこの船は東シナ海を南へと進路を取る。
「あれです」
操舵手が叫ぶと船長は呟く。
「米国リバティーシップ“シーランドクィーン”か……距離を取りつつ接近。内火艇準備……」
リバティーシップとは10,000tクラスの米海軍規格内貨物船を指す、一週間に一隻の空母が出来ると呼ばれるがこの船は一週間で四隻出来ると言われアメリカの技術/工業力を示している。シーランドクィーン号はハワイを経由し東京港へと向かっていたのだが数時間前にSOSを発信、船内で法定伝染病らしい感染症が発生したと言う。
「艦内医療設備は対感染症体制、隔離区画への不用意な立ち入りは禁止」
病院船ならではの役職がある、院長だ。この病院船は偶々航路が近いと言う事で海図を睨んでシーランドクィーン号を探していた。
「船長、暫くは副院長が艦橋に入る」
病院船は感染症対策から通話管ではなく全艦艦内通信を施している。副院長は隔離区域の状況を鑑みて船の運航を指揮する。
「しかし何時持ちこまれたのだろうか?」
「船の運航記録は米国政府に問い合わせている……最悪硫黄島沖にて張りつけになるぞ」
「砲撃練習が出来ませんね……」
「島の形が変わるばかりか砲撃要員の耳が心配になるがね」
副院長は耳鼻科が専門らしく憮然として言う。
「今協議中の軍事協定が結べは今後はこんな事もするんですよね」
「うむ……まっ、あれがナチの偽装潜水戦隊母艦としても我々は助ける事が義務付けられるのだよ」
「ハーグ条約ですね」
ハーグ条約とは1911年に批准された条約であり今の病院船に関する事細かな取り決めをしている。

イ.病院船は医療行為以外のいかなる軍事的活動を行ってはならない。

軍事活動とは兵員輸送や物資輸送、軍事情報の発信等を指す。病院船を確定し安全を保証する為に交戦国に対し該当する船名と基本データを通達する義務が生じる。


ロ.義務を順守する限りいかなる軍事的攻撃あるいは臨検等から保護される。

ハ.病院船はその船体に国際法で定められた塗装及び装備を施されなければならない。

その塗装とは船体を全て白色に塗装し船腹には翠色の帯を巻き、船腹及び煙突に赤十字を表示。夜間でも視認できるように電飾の赤十字を装備し船尾には赤十字旗を掲載する。

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