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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 118

琵琶湖型特型輸送艦は戦時量産貨物船、故に規格化されており砕氷船と言っても普通の琵琶湖型特型輸送艦との共通点が多い。相違点は居住区は寒冷地対応しており流氷に閉じ込められても数週間は持つように設計、更に宗谷型同様に電気推進方式を採用、ピッチローリングによる砕氷をする為に燃料タンクを分散しその流れを複数のポンプが司る訳だ。その為船倉が幾分狭くなるがコンテナシステムでカバーするしかない。船尾にはヘリ着艦甲板とすぐ傍に格納庫を設けた。この手の艦種にしては異例な装備とも言えるが氷結した所での固定翼機の運用は危険を伴う事や氷結すれば水上機が使えないのである。これは宗谷型三隻で遭遇した事例だ。
因みにこの砕氷船開発は列強ではソ連が御熱心だった、これには日露戦争時に当時のバルチック艦隊が遠回りして日本に来たのが原因で敗れたと言う苦い経験がある。所がスターリンは陸軍出身故に中々理解得られずしまいであった。
これには地政学や歴史上の要素もあったかもしれないが今となっては真意は如何にと言った所だろう。逆に熱心なのがトロッキー氏だ……潜水艦重視も考えたが経済活動となるとやはり砕氷船の存在を無視できないのだ。アメリカやカナダも砕氷軍艦を有しているのだが……。
「対潜強化を考えないといけませんね、満州国や極東エレサイム、東シベリアは」
ドイツは砕氷船艦を作るよりはUボート偏重になる可能性もある、怖いのはホワイトハウス爆撃の様に潜水母艦型Uボートが流氷下を通り艦載爆撃機を発艦すれば皇居が真っ先に狙われ、陛下崩御と言う最悪のケースになると今の体制が維持できるか橘らも予想が出来ない。ヒトラーはそこを狙ってくるだろう。


しかしナチスドイツ側も北極海ルート開拓は簡単には出来なかった。ロシアの北極海側の港湾施設は予想以上に脆弱でとてもUボートや潜水戦隊支援艦を受け入れる事すら出来なかった。整備するもシベリア鉄道路線から離れているし作業する期間も限られる。結果的に大西洋からカナダ側を通るしか今の所は無理と言う。しかも海軍内ではUボート偏重により海上艦戦隊との亀裂が生じていたのだ。

更に悪い事に“総統のお気に入り”と古参軍人から影口を叩かれる金髪碧眼の若手将校らの作戦立案や指揮による損害も目立ち始めていた。陸軍はロンメルが日本に亡命した事で若手将校らの主導権争いが激化しロシア全土制圧は遅々として遅れる事態になる。


数日後、鄭和は世宗大王と共に北上していた。
「大回りになるが瀬戸内海を通るとなると……」
出入り口は共に世界有数の海の難所で世宗大王が座礁しなかったのは奇跡に近い、ここで座礁すれば作戦行動すら影響が出る。世宗大王の艦長は帰りもこのルートを通る気であったが色んな事情で断念、仕方なしに鄭和と共に行動する事になる。
「間もなく警戒海域です」
「やけに広く取るな」
「Uボートの行動範囲や海流からです……最もナチス海軍が砕氷船なんて建造しているのなら」
艦長はシレっと言う……ナチスドイツ海軍は何度か前述しているがUボート偏重であるが日本海軍の様に潜水支援母艦を充実させてない、陸上に要塞港を築く方式を取っていたがインド洋進出で漸く貨物船を急遽仕立てたお粗末なモノを出した。しかも海上戦艦や空母建造が立ち遅れや戦術の未熟さから米英並の日本海軍の前では逃げるしかなかった。
「奴らが海上船型の補給艦を作ると思うかね?いっその事補給船を潜水艦化すればどうかな?」
馬司令官の言葉に艦橋に居た全員が納得した、何せ艦載機搭載型を実用化したとなれば……数日の前の出来事にも説明がつく。
「日本海軍もうかうかしてられないな」
その為にもシーレーン防衛にシフトしている。
それらを支えているのが各種特設艦と呼ばれている民間貨物船舶や漁船を徴用したモノだ……それでも足りないので明治時代に建造された戦艦なんて使用した。橘らはこれらの艦種を順次徴用解除する為に後方支援艦艇を拡充させた、若宮型水上機母艦や大鯨型潜水戦隊支援母艦に琵琶湖型特等輸送艦の実用化に旧海軍主流派は反発していたが今ではそのような声はない……特に琵琶湖型特等輸送艦は各種特殊艦のベースになる様に設計された。小型の特設艇は漁船ベースにした哨戒特務艇がメインだ。

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