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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 114



数日後、フィオは複製した図面を元に設計に入る。傍らには日本を初めとする亜細亜各国にある材木の特製が記されたノートにエンジンの専門書が山積に置かれた。傍らには日本人工員らがエンジンの確認やその他の調整に余念がない……。
「フィオさん、主翼に金属モノコック入れますか?」
「ええ……彼の操縦は荒っぽいからね」
そもそもこんな機体をまともに離陸させるだけでもすごいのだ。今回は高度一万以上を飛行するので呼吸器を搭載するスペースも考えないといけない。“オリジナル”よりも航続距離は犠牲になるが仕方ない、今回は木材加工技術の実証機だ。フィオとしては飛行艇横丁の娘として、ファシストに覆われ祖国を離れた同胞の為にも……彼女はその為にもこの機体を最初から作る事に必要がある。
フィオの懸念事項はこの国の技術力とその幅だが心配はない。航空機の中でも飛行艇開発製造技術はその国のバロメーターになるのだがイタリア軍よりは良いと思えるのが日本だ……やはり島国とある事はある。海軍が何故木材加工技術実証する必要性があるのか、一つは機雷対策の要になる掃海艇だ。機雷を爆発させるには複数の方法がある、敵船が接触する方式は単純だが味方艦艇が入り乱れる状況になると厄介になる、音響に関しても同じ事が言える。磁気反応方式が一番多い……そこで掃海艇を揃える必要があるが日本の様に自前で石油が無い場合は木材素材を使わざる得ない。その過程で発明されたのが合板加工技術だ。間伐材を活用する方式で民間にも広がっている。
「つくづく凄い国ね」
祖国を思うとフィオはため息を付きつつも図面を見て考えて図面を見て画いていく。


その頃横須賀海軍基地に満州国海軍多目的統合艦鄭和型一番艦鄭和が入港した。この船は建国間もない満州国海軍旗艦でもあるが若宮型水上機母船をベースに設計された新機軸戦艦、輸送船や練習船の機能も有する……満州国は日本海の一部を領海になるので将来的にはヘリ空母への改装も検討されている。と言うのも正規空母では侵略する意思もあると受け止められる恐れもある、戦艦では主砲砲身の国産化の目途は立ってないと言うか今後は墳進弾が主兵装になるので幾分改装の幅が広がる水上機母船の方がお買い得と言うのだ。
「艦長係留作業完了です」
「うむ……」
艦長は清王朝海軍時代からの猛者であり、満州国海軍内で戦艦導入支持派を言いくるめた策士だ。
日清戦争の苦い経験から戦艦を揃えると同時に国家体制を近代化しなければならない……その手本にしたのは日本だ。癪に障るが同時期に欧米各国からの侵略に耐えそれどころか対等の立場になった国を手本にすれば……彼の考えは異端であるが同時に正解と言える。やがて日本は清王朝最後の皇帝を利用した傀儡国家を建国、彼もそこに移住するのだが……。
「(最後のチャンスかもしれんな)」
日本の政変は傀儡国家満州国をちゃんとした独立国家として方向転換、これには共産党化防止も含まれているが利に適っている。所詮共産主義も形を変えた“絶対王政”……その末の末路は既にソ連が教えてくれた。
故に満州国は単なる傀儡国家ではなくなり近代中華系国家として歩み始め、既に欧州型政治体制を取り始めている台湾共和国や英国連邦香港自治区に後れを取っている事は事実だ。鄭和を戦艦にせずに水上機母艦にしたのは清王朝時代に北洋艦隊に鎮遠を運用した事がある。常備排水量と砲力はアジア最大……戦力差には日本に負ける筈はない、だがいざ実戦になると……敗戦になり鎮遠は日本軍に鹵獲、その後は練習艦にされて1911年に砲撃実験艦、要は砲撃の標的にされて海の底に……つまり戦艦なんて意味が無いのだ。台湾やタイの長門型も何れは空母化する可能性もある。
「艦長、乗員の上陸は半舷ずつだな」
「はい」
司令官の言葉に艦長は応じる。今回は演習航海と言うよりは実戦に近い状態であったが随伴艦である陽炎型駆逐艦二隻に六隻の外洋型水雷艇も無傷、大方Uボートの艦長はこんな水上機母艦に高価な魚雷を使う気は無かったと言う事だ。

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