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戦艦空母艦隊
その他リレー小説 - 戦争

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戦艦空母艦隊 109

副長の言葉に船長は叫ぶ。
「各員退艦準備を急げ、負傷者を優先に有軍船に乗せろ!」
安将丸の付近に豪州派遣艦隊から新鋭イージス艦キャップテンクックからは搭載されているカッターが全て下ろされ安将丸の乗務員を救助していく。
「ポンプが何時止まるか分かりません」
「構うな!機関室は全て退避!」
第二波が来れば一網打尽にされる。艦長は最悪の事態を想定した。


安将丸沈没によりドイツ通商破壊工作作戦は米豪との共同戦線へとなる。畝傍(二代目)は泰海軍基地にて修理され安将丸に代わる空母もここで合流する事になる。
「編成を変えるのですね」
「うむ、通商航路護衛に本腰を入れて来たな」
「それだけ核兵器開発にヒトラーが熱を入れていると言う事ですね」
畝傍(二代目)も中破し乗務員の何人かは重傷、先日病院船にて日本への帰路についた。
「安将丸艦載機は今頃その空母へと向かっている筈です」
派遣されている技師士官は言う。艦橋でもこの際ボロが来ている器具やら装置の交換作業中……中には泰海軍技師士官や民間技師らの“実技中”と言う個所もある……。時同じくして島風も今頃は教材になっているだろう……。
「砲身は樫野が運んでます」
樫野とは給兵艦と呼称される輸送船である。前世では大和級戦艦主砲輸送の為に建造されるもその活躍は武蔵の砲身を運んだのに過ぎない。後世世界の日本海軍でもこの船は大和級航空戦艦主砲砲身を運ぶのも勿論各艦の砲身を運ぶ為に活用されていた。これには長門級戦艦を導入したタイや台湾にとっては欠かす事は出来ない船でもある。
戦争に勝つには如何に補給路を維持するのも大事だが如何にして運ぶかも大事だ、前世ではこれを怠った為に政治的にも敗戦になる。後世日本海軍に置いてこの問題に取り掛かったのが葵川 吉宗少将だ……早くから対ナチスドイツ戦を想定していた彼は極光艦隊に同行させるのには給兵艦樫野の様な船舶を利用する事は早々と考え付いている。そして効率性を重視した結果、荷役の効率化を狙ったコンテナシステムを採用したのが琵琶湖型特型輸送艦である。コンテナシステムは単に荷役効率を向上させるのではなく医療施設を付与する事で限定的であるが病院船としての機能を持つ事が可能にした。無論既存の輸送船は活用するがこの先Uボートによる雷撃もあり得るので前政権下にて戦時徴用された民間貨客船舶は空母改装されたり病院船を除いて順次元の船主に返却している。
「オプテンノール号はそのまま英国海軍に編入と聞いてますが?」
「うむ……戦後のオランダ政権がどうとるかは不安じゃが仕方あるまい」

オプテンノール号とはオランダ国籍の蘭印領内の沿岸用客船である、しかし太平洋戦争没発と同時に蘭印オランダ海軍病院船として活用される。これは自国の経済圏防衛の為に本土からも結構戦力を集結させるがこちらも旧態そのままの戦艦故に日本海軍との緒戦から敗走、オプテンノール号は逃げ遅れてしまう。と言うのも艦隊内にて法定伝染病である赤痢患者が大量発生し、船を運用するクルーまで感染してしまったのだ。
「あの時は司令官の独断で海軍病院船所か陸軍病院船まで集結させたからのぉ……」
人道的支援としてオプテンノール号を佐世保海軍基地に誘導して適切な治療を受けたのである。所が当時敵対していたアメリカはこれを拿捕(ハーグ条約違反)として公表されたのである。
オランダ亡命政府が真に受けてしまい、オプテンノール号の船長らの報告が届いたのは事件発生後の約二年後……ユダヤ人ネットワークで如何にか届いたと言う事だ。しかもその間同船は日本の海運会社各社や海軍退役技師官らの協力で修繕、船長と軍医長らはこのご恩を忘れまいとして英国東アジア艦隊に合流、引き続きアジア各地の医療支援を実施している。
「余談だが畝傍(二代目)もその時救助に駆け付けたからのぉ」
この時の赤痢が畝傍(二代目)全乗務員戦闘不能に陥れたのかどうかは定かではない。
「オランダ亡命政府はどうするでしょうか?」
九鬼の言葉に天海艦長は言う。
「謝罪するしかあるまい……」
オランダ本国が消失した今では旧植民地にはオランダ人が身を寄せ合って生活している、アメリカにある亡命政府は米軍の協力を得てオランダ国籍の貨物船を護衛空母化している……。

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