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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 105

海軍参謀長も危惧はしていたが米海軍太平洋艦隊で有り余っているニュージャージを旗艦にした艦隊が護衛役となっている。
「今回の訪問は米国内のドックでの修理や点検も視野に入れているな」
戦艦の場合は通常の点検に加えて主砲砲身の交換も必要だ、ドックもそんなに増設できる訳でもなく補給艦や小型艦と言った所はこれまで軍艦の建造経験が無い地方の中小造船会社に発注しているのもその表れだ。そこで日本政府は海に面しているアジア各国に支援し国営や民営も含めて近代造船会社を設立、特にタイや台湾は長門型戦艦を保有している関係上戦艦対応ドックを保有しており旧式戦艦ならメンテナンスを日本国内でなくても良いようにしている。旧式戦艦、即ち伊勢型や扶養型は軍縮条約が無ければとっくの昔に除籍しているから軍事機密なんて無い訳だ。これは同時期に建造されたどの戦艦にも言える。
「寧ろ英国や米国には最新鋭装備のテスト母艦にしても良いかもしれんな」
葵川は参謀本部の思惑を組み取って努力はしてみる。もし伊勢型と芙蓉型が同盟国での修理や補修を受けられるのならこれらの後継艦の建造は国内のドックで出来るからだ。
「後継艦は何れも空母か」
信州型装甲空母をベースにした改タイプになるだろう……この後継艦の開発を担当するのは織田のグループらであり開戦前に会合した際には斜飛行甲板に滑雪板飛台(スキージャンプ台)の様なモノをつけて二段飛行甲板にするつもりらしい。ただ最近になって飛行甲板よりも巡航ミサイル発射器を兼用するカタパルトで格納庫から直ぐに艦載機を出す方式にしたようだ。とにかく色んな思惑が入り乱れているNYへと上陸する為に内火艇に乗り移る為に移動する。
内火艇でN.Yに上陸した葵川らは市民から熱烈な歓迎を受けた。日の丸を振る日系人やアフリカ系移民の割合が多いがそれなりに白人もいる。この艦隊はアメリカ海軍やアメリカ本土を攻撃してない唯一の艦隊だ……当時の日本海軍は本土を攻撃したと言っても市街地に及んだのはロモアラモス研究所爆破の為の陽動作戦の一回で主に社会インフラ施設を狙ったのでそんなに死者は出てない。これも日本政府が最低限度の攻撃で最大の効果を狙った戦術だ……葵川はこの戦術のお陰で将来的に長期戦になる対ドイツ戦に備えてアメリカとの協調体制をとり易くする為だ。
これは戦争終結後のドイツを初めとするファシスト国家に支配受けた国々を立て直したりナチス残党軍討伐も考慮しなければならない。最も今のナチスドイツはヒトラーが終身総帥、否神聖第三帝国皇帝にもなりかねない状況だ……葵川は海軍として出来るのは本国と支配地域を遮断する事だ。日本とアジア諸国だけでは無理と言える、ここは米国の存在が必要になるのだ。カメラマンのフラッシュを浴びる葵川は神妙な顔立ちをする……戦場で見せる表情、自分は外交官ではなく海軍将校だ、それを示す為の演出であった。



その後は市役所での歓迎式典やら記者会見をこなし、再開されたばかりのN.Y日本領事館でやれやれと言う表情を見せていた。葵川もここまで疲労したのは大学の論文作成位と言うほどだ。そこに参謀本部から出張してきた士官が言う。
「私的面談?」
「はい、太平洋戦線で指揮をとっているこの方が……」
「場所はホワイトハウスか……中々の曲者だな」

葵川が皮肉をこめて云うのは後世アメリカ合衆国も戦時中は有色人種の公民権は殆どなく選挙権も制限されていた。前世では1964年に有色人種の公民権と選挙権の制限撤廃がなされたが二十一世紀になっても人種差別が産んだ低率の連鎖により暴動が起きている。有色人種はバスに乗る席さえ法律で決められているのに自分をホワイトハウスに招き入れるなんて思いもしなかった……逆に考えるとそれだけホワイトハウスもペンタゴンも対ナチスドイツはギリギリなのだ。
「腹括れ、この会談の事は極秘だ」
「はっ!」
葵川はニヤリとした。

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