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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 104

欧州各国からの米国に移民した其々ユダヤ人にとっては言いがかりもいい所だ、それなら米国を利用する……そのきっかけになったのはオランダから南アフリカ経由で脱出に成功したある少女の日誌が日本で出版された。それがハワイ経由で伝わり米国本土にて出版された。この書籍の利益は戦災難民支援に宛がわれた……この事はナチスドイツにとっては痛い。
「この書籍は“事実”です、これは情報戦になります」
参謀の一人はため息をつく。相当閣下の持論は御尤もだがそれは極論だ……彼を産み出したのは列強各国のパワーゲームによるWWTとしたら……その列強時代の政治家を支えたユダヤ人は戦犯である。
しかし、それもまた極論でありナチスドイツのユダヤ人根絶は悪そのもの……ここに来て彼らの日本の戦略に気がついた。大戦直前のユダヤ人大量受け入れは日本にとって人道的と同時に各分野の最新技術や知識を取り入れるだけではなく、国民に国際感覚を養う事を意味している。更にユダヤ人を味方に付ける事により米国との早期講和に漕ぎ着けられる。今回の極光艦隊N.Y訪問もユダヤ人らの働きかけが功を奏している……。
「やられましたな」
「……あのちょび髭伍長に政治なぞ無理だ」
二人は囁くように呟いた。



N.Y沖合にて極光艦隊の本隊は米海軍に嫁入りしたYAMATO型戦艦五隻と自由フランス海軍に譲渡されたジャンヌ.ダルクの出迎えを受けた。
「ヘリコプター運用は想像以上に進んでますな」
YAMATO型戦艦五隻にはヘリ運用に発着甲板と格納庫を設けておりパイロットはニュージャージーでじっくり訓練を受けた後にこの狭いヘリ甲板でも楽に降りられる訳だ。
「空母でも運用出来るように専用の空母を運用しているそうだよ」
「流石に工業国ですな……うちはぶっつけ本番で海上ですよ」
飛鳥の艦長は呆れているが葵川はため息をついた。今回の訪問は外務省の極東エレサイム共和国担当からの意向が強く拒否する訳でもない。前回のマーガレット一世の時はこれに宮内庁の意向もあって勲章には興味が無い彼にとっては苦痛そのものだ。
「司令官もタイヘンデスね」
「仕方ないさ、ユダヤ人にとって当初望んでいた形が漸く実現した……政治敵の事は苦手なんだよ」
米海軍将校はこの計画には反対はしたが自国の政治や経済を考えると受け入れざる得ない状態だ、しかも対ドイツ戦線に太平洋ルートを構築するには日本の協力が必要となる。

太平洋の各島嶼国家は日本の援助によりそれなりに大型船舶が停泊できる港が数カ所はあり補給船や艦隊が台風遭遇の際には緊急避難先にもなる。米軍にとっては日数こそかかるがUボートの脅威が少ない太平洋はうってつけだ、更に日本は列強各国と比較して歴史こそ浅いがその実力は身をもって知っている。日本での米海軍艦艇修繕も視野に入れると……アメリカだけではなく、日本にも悪い話ではない。葵川はここら辺の事も知っているが……かといってどうして自分が英雄を演じなければいけないのか納得がいかない様子である。
「織田の高笑いが聞こえて来たよ……頭が痛い」
「司令官ドノ、アスピリン(頭痛止め)を処方してモライマショウ」
翻訳のハルトマンは真顔で言う。



「そうしてくれ……」
本当に面倒な時代に産まれてしまった事に葵川はため息をついた。
「デモホントウはウネビニキテモライタカッタソウデスネ」
「……」
ハルトマンの言葉に葵川はギョっとする。あの船には士官とは言え年頃の娘がごろごろ……今の所はユ号潜の支援艦隊旗艦として活動しているが激化すると畝傍(二代目)では荷が重い。

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