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lost/bombs
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lost/bombs 99


――昔、炎の神に焼かれ死した女神がいた。
  黒の坂で夫に裏切られ、憎悪し恨み、千の仔を殺すと宣言した女がいた。
  旧い、古い物語。しかし、この時、また物語りは繰り返される。
  自ら産んだ仔に殺されるのではなく、自らを殺した炎によって再び、彼女は坂を登り切る。     

「オヒサシブリネ。イエ、ハジメマシテト、言っタほうが良い、かしら?」

この世の全ての暗黒を集めたような女。口元に咥えた煙草をシニカルに噛み締めながら暗黒宇宙のような瞳で骸を見た。恐怖のままに骸は焔尾を振り下ろす。灼熱の炎尾が女の身体を直撃する寸前――――白い指先で止められた。
「私を殺した頃の炎はこんなもんじゃなかったでしょ」
炎が女の掌に包みこまれるように消える。いや、炎だけじゃない。骸の獣王態を包み込む炎が徐々に減少していく。骸は女が包み込む炎尾の根元を噛み千切った。千切れた炎は女の掌に『食われた』
「ゴオオオッ!」
骸の顎から放たれる大火球。空気を飲み込みながら更に大きさを増し、規模は百Mを超える超火球と化す。熱気だけで辺りが焦げるほどの熱量の塊を見て、女は冷たく笑い、指先を掲げる。
「そんな火の粉でどうするつもり?」
大火球と白い指先が触れた瞬間、炎が爆発、辺りに灼熱の熱風と衝撃を撒き散らし、そして食われる。
爆炎も土煙、辺りに飛び散った火の粉も全て彼女の指先に食われる。そして彼女は背後に回りこみ、炎の豪爪を振りかざす焔の餓狗に微笑んだ。
「で?」
「お前は死んどけ!!」
豪爪は彼女の胴体を切り裂いた。黒衣が千切れ飛び、布切れが舞う中、彼女の優しい死の言葉が紡がれる。
「ごめんなさい。まだ私は三分の一しかないの」
手応えが無いことに骸ガ気付く。首から下を包み込む胴体には右手と左手しかないと気付く。その美女の右手が骸の焔に包まれていた額に触れた。
「いただきます」
右手に灯る漆黒の燐光。生物の最果てに灯るような禍々しい光が炎の餓犬を喰らう寸前――黒衣の女は吹き飛ばされる。拳を振りぬいた格好で雄太がいた。突き出した拳からは異様な蒸気が立ち上り、皮膚が爛れていた。
「誰だ、あれ?」
「さあな。つーか、誰かもわかないのに顔面に拳を叩きこむか、普通?」
「嫌な予感がする。死者の群れの臭いだ」
「それは同感だがよ」

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