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lost/bombs
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lost/bombs 98

再生するかと構えてみるものの目の前の頭蓋骨を失った屍は身動きすらしない。鼻を鳴らして臭いを嗅いでも辺りには火で焼かれた血の臭いや、食いちぎられた肉の臭いはあるが生者の臭いは感じない。
「・・・・・・・・自殺つータイミングじゃねぇだろ」
人間状態なら赤毛の髪を掻いていただろう、しかし獣王形態なら溜息を漏らすことしか出来ない。
燃え盛る炎の質量を下げて地面に倒れている雄太に近づく。
「おい、生きてるか?」
「・・・・っ、・・・・がぼっ・・・・っ」
血を吐き出す雄太の傷口からは濁流のように血が流れつつけている。それは辺りの地面を血の湖のようにし、明らかに人間が持つ量を超えていた。
「あー、傷口を治せないから無くした文を造血してるのか。無茶苦茶だな。このままじゃ傷口が治る前に力の限界か、この辺りがダムになるぞ」
骸の忠告を、しかし雄太は気付かない。いや気付けない。本来なら即死してもおかしくない傷を必死に治療してるため、他に感覚が向けられない。骸は僅かに諮詢した後、大きく息を吸い、そして炎は吐いた。
「ギィいああぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
雄太が悲鳴をあげて悶え苦しむ。心臓ごと胴体の半分以上を炭化させる炎、肉が焼け、血が蒸発し、溶けた骨が紅く染まる。骸の前脚が灰となった血肉を削る。
「よし治せ」
骸の冷酷な宣言に、憎悪まじりの雄太が力を発動させる。
その瞬間、まるでアサガオの観察ビデオを数千倍、数万倍にしたような速度で傷口から肉や骨が生え、見る見る間に半身を再生させた。
骸がやったのは医者が患者の悪粗の部分を切り取って再生を早めたことだ。ただやり方が無茶苦茶であることに変わりない。そのまま死んでもおかしくなかった。
「さて・・・・こいつはいいとして・・・・・」
骸が振り向き、地面に倒れている頭蓋骨無しの死体を見る。自殺した理由が一つも見あたらない。しかし、死体をそのままにしない方がいいだろう。
野生の感か、異形の本能か、骸の全身を見えない触手が縛り付けるように嫌な予感が這い寄り、嘗め回す。全身の熱量を再上昇させ、五本の焔尾全てを黄泉の死体へと振り下ろす。轟音と共に灼熱の炎が空へと駆け上る火柱を紡ぐ。

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