PiPi's World 投稿小説

lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

の最初へ
 95
 97
の最後へ

lost/bombs 97

「おいおい、この時点で泣くのか」
侮蔑顔というより呆れ顔のまま、餓犬が大きく口を開く。超高熱の炎が喉元で渦巻き黄泉を消滅させようとしていた。
「じゃあな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
心が凍りつく。死ぬことじゃなくてこれじゃまだ死ねないことに凍りつく。これじゃ痛いだけだ。もっと痛いだけだ。終りたい、終わりになりたいのに、これじゃ終らない。恐怖は脳天から頚骨の脊髄へと駆け下り、神経パルスを拘束で走り、胸部から腹部、そして足先へと走り抜けた。
(死にたい?)
耳元で囁く甘い声。黄泉は泣き顔のままに頷く。
その声がいつの頃かはわからないままに、頷き、そして―――
(死にたいならね。一生懸命に死なないと。一生懸命、何もかも投げ捨てて本気で死なないといけないの。貴方はそういう風に作ったのだからね)
彼女から与えられた何かが私の中へと潜り込む。
(私の妹。さぁ必死に頑張って――死になさい)
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
私は思わず左腕を餓犬の口の中に突っ込む。肘から先を失った右手だけじゃ足りないと全身を押し込む。
「ごあッ!?」
まさか自分から口の中に突進してくるとは思わなかった骸は大きく開いた口を閉じる。牙が黄泉の左腕と左胸を噛み千切る。肉や骨、内臓を噛み千切られる痛みに黄泉は身悶えるが、何度も経験した痛みだ。
「ぐっ」
奥歯を噛み締めて黄泉は空蝉――世界からの逸脱である黄泉帰りの復活地点の多重設定による幻影――を生み出し、拳銃を握らせる。

狙いは一点。骸は口の中にある血肉を吐き捨てるか、飲み込むかを一瞬迷う。迷うがゆえに黄泉の行動の方が早い。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
無言で迅速、疾風の如き速度をもって彼女は自分のコメカミへと銃口を押し付ける。死の恐怖に全身が凍るが指先は躊躇無く引き金を絞る。銃口から放たれた白蛇弾が彼女の頭蓋骨を吹き飛ばし、脳髄を飛び散らせた。
「は?」
いきなり目の前で黄泉が自殺したことに骸は呆気に取られ、口端から肉塊となった彼女の肉が堕ちる。

SNSでこの小説を紹介

アクションの他のリレー小説

こちらから小説を探す