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lost/bombs
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lost/bombs 95

目の前の拳銃からじゃないと気付くと同時に周りの周囲から火花が舞い散る。数十、いや数百の呪弾の包囲網。上へと跳躍する雄太だが、その上に影が翳る。顔を上げるよりも早く上空から回転しながらの踵落としが後頭部を直撃する。
彗星のように上から下へと落下する雄太に向って拳銃が吼え、銃弾の牙が唸る。
「クソ!」
空中でバランスをとろうにも雄太の世界は外部干渉まで出来ない。そのまま落下しながら必死で銃弾を弾き、そらし、そして体を捻って着地しようとする。
雄太が着地する一歩寸前、その背中に押し付けられる銃口。上からは銃弾が降り注ぐ中をどうやって、と驚愕する雄太の視線が黄泉の口元に浮かぶ冷笑を捉える。
「・・・・・!」
咄嗟に体を捻るより早く銃口から飛び出した銃弾が雄太の世界を削りながら心臓を穿ち、そして肋骨をへし折って突き抜けた。白い骨と臓物の肉片、そして大量の鮮血を吐き出して雄太が崩れ落ちる。掌で傷口を押さえるが世界を抉られた衝撃と激痛が体を強張らせる。
「がほっ、うごぼぼおぇええっ、ぎぎぃいはぁうえっ!」
血反吐、いや口から全身の血を全て吐き出すように嘔吐する雄太の後頭部へと黄泉は銃口を狙いを済まし銃弾が放たれる。心臓を穿たれた雄太に為す術は無く、銃弾は彼の頭を穿つ寸前、燃え盛る炎の槍に打ち落とされる。
「あー、なんつータイミングであっちまうもんかね」
黄泉が炎の槍を放った方向を見る。
そこには両目から血を流し、煙草を咥えた赤毛の男がいた。
「朧も暴れまくってるし、半分あの化物に取り込まれた騎士団長もいる、と。さっきまで死に掛けてたのが馬鹿馬鹿しくなる展開だな。ったく死にかけにこれ以上に何をさせるきなんだよ」
朧が煙草を吐き捨てる。仄かな紅い火は地面に落ちた瞬間、劫火を噴き上げ、辺りを真っ赤に染め上げる。
猛火が吹き荒れる中を佇む、骸の身体に炎が集まり、やがて凶悪な姿へと変貌する。赤黒い炎を纏った巨大な猟犬の姿へと。双眸は封じられた炎の餓犬だが腰から五本の焔の尻尾がうねっている。
「獣王化」
「面白れぇだろ?」
頬まで裂けた口元で骸は笑う。尻尾の一振りが側の瓦礫に触れるなり、その瓦礫は一瞬で融解、溶岩のように赤い液体となる。紅蓮の餓犬が口を大きく開く。
「がるるるるらああああああああああああああああああああっ!!!」
咆哮が大気を軋ませ、黄泉の体が衝撃波に震える。地面に塵が吹き上がり彼女に叩きつけられ、思わず目を瞑ってしまう。その愚考に気付き、すぐに目を開けるより紅蓮の餓犬の巨躯が背後に廻るほうが速かった。

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