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lost/bombs
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lost/bombs 94

虎の言葉を聞きながら雄太は地面でのたうつ黒衣の騎士を見る。流れるような黒髪も、麗しい美貌も、絶望に満ちた双眸も、反吐に汚れてながらも綺麗だった。彼女の右手の拳銃が跳ね上がり銃弾を放つ。気味悪いぐらいの純白の銃弾が眼球を抉る寸前、指先で掴み取る。
「ああ、なるほど。世界を抉りつつ進む白骨の銃弾なのか。それなら止められない」
しかも穿った部分の世界を抉る為、激痛も酷いと。指先で掴んだ銃弾を握り潰し、憎悪に滾る双眸を見つめ返す。
先に動いたのは雄太。世界外の圧力を溜めた踵を振り下ろす。空気を切り裂いて振り下ろされた踵を辛うじて躱す黄泉。その銃口が跳ね上がり、しかし、踵が地面に触れた瞬間、大地が砕け散る。踵に集められた重圧は三十トン。砕け散った大地の破片の中を、それでも態勢を整えた黄泉の拳銃が乱舞し、雄太との直前上の全てを砕く。そして銃火、発射、射撃が放たれる。世界を抉りながら進む弾丸の速度は雄太の世界外の視界は捉える。
雄太の指先が動き、白骨の銃弾の側面を叩き、軌道を変える。見切れる速度の銃弾は玩具と変わらない。そのまま踏み込もうとした雄太の太腿に激痛が走った。
「ぐっ!」
痛みを噛み殺して拳を放つが、それは避けられる。目を移すと太腿に銃弾が突き刺さっていた。貫通まで行かなくても肉を抉るだけで世界と化した雄太の体は並々ならぬ激痛を与える。指先で血肉と銃弾を千切ると共に黄泉の呼吸が変化するのに気付く。低く冷たく屍のように、骸に絡みつく毒蛇のように吐息が変わる。
「なるほど。跳弾か」
地面や周りの僅かな凹凸を利用して視覚外からの射撃を叩き込む術。力では無く純粋な努力と才能の結晶を見て雄太は楽しげに笑う。黄泉は二丁拳銃を握る両腕を左右に広げ、黒衣がはためく。二丁拳銃が牙を持って彼女の両腕の血肉を食らう。
「堕蛇未・『阿天屡衣』」
北国の鬼の王の名前を取った技。黄泉の体が廻り、黒衣が一瞬、彼女の姿を隠す。雄太の左右それぞれの視界から火花と金属音。跳弾によって迫る銃弾を弾き返そうとする雄太の双眸に突きつけられる二丁拳銃の銃口があった。
「な!?」
幾ら強化しようと眼球の耐久度は、どうしようもない。世界を抉る呪弾ならなお更だ。回避行動を取ろうとする雄太の両脇腹を抉る銃弾の痛みを噛み殺して体をそらそうとする雄太の耳に再び聞こえる銃弾の跳弾音。

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