PiPi's World 投稿小説

lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

の最初へ
 90
 92
の最後へ

lost/bombs 92

絶対零度の冷風を纏って佇む朧に雄太は苦笑し、壱虎は邪魔な奴が来たとばかりに舌打ちする。その舌打ちの音に朧のコメカミに青筋が浮かんだ。
「誰だ、この無礼な奴は?」
「邪魔だ。消えろ、犬っころ」
朧の苛立ちを更に煽り立てるような言葉を壱虎は気にせず言う。今度こそブチッという音が聞こえた。雄太は心の中で溜息をつく。
「この礼儀を知らん奴だな?」
朧が視線を走らせる。
その瞳が翡翠石のように青く耀く。大地が凍りつき風が波動となって吹き荒れる。その衝撃に壱虎が吹き飛ばされた。
「しまった。まだ魔眼に慣れてない」
双眸を抑える朧の瞳が徐々に元の黄金色へと戻っていく。
「大丈夫か?」
「ああ、心配されることじゃない。先程進化したばかりの能力だからな。まだ制御がおぼつかないだけ・・・・って、今、お前、私を心配したのか?」
ぎょっ、と驚く朧に雄太は頬を掻く。
「おかしいか?」
「ああ、おかしい」
朧の唖然とした口調に俺は苦笑し、その向こう側で怨嗟の声が響いた。
「・・・・・お前ら、あたしのことは無視か?」
辛うじて直撃を防いだのだろうが、右手に霜が走っている。壱虎は右手の一振りで祓いながら朧を睨みつける。
アイヌのような白い民族衣装を身に纏った朧と中華服装――黄色の道服を身につけて壱虎。髪型は奇しくも同じポニーテール。年齢も同年齢ぐらいの十三歳前後。
「あの兎はどうした?」
火花を散らし合いながら尋ねる朧に答える。
「あの子が倒した」
「・・・・・二度も獲物をとられたか・・・・」
弧月の名に傷がついた、と小さく呟く朧の周囲で水分が凍りつき、氷剣を作り出す。壱虎の方は拳法の構えを取る。雄太は置いてきぼり。
「なんか一気にエキストラに落とされたな」
その言葉を巻くきりに十六の氷剣が弾丸の速度で飛ぶ。
地面に深々と突き刺さる氷剣。朧の隣に瞬時に現れる壱虎の拳が唸りをあげて放たれる。
迎撃するのは蒼い魔眼。慣れずに収束が間に合わず二人の中間で凍気の爆発が引き起こり、吹き飛ばされる両者。それでも地面で着地を決め、にらみ合う両者を呆れ顔で見ている雄太。

SNSでこの小説を紹介

アクションの他のリレー小説

こちらから小説を探す