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lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

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lost/bombs 91

酸っぱい匂いを滾らせる吐瀉が終わった後、裾で口元を拭う壱虎。その瞳はギラギラと耀き、先程とは違う。これから本場だな、と雄太は思った。
「ぶち殺す」
「虎がキレたか」
瞬時に背後へと移動した壱虎の拳を防御し吹き飛ばされ、地面に着地するより早くまた背後に回った壱虎の蹴りを背中に受ける。骨が軋む鈍い音が身体の中で響くのを聞きながら強引に地面に足をつける。そのまま蹴りを受けた態勢から全力の靠撃。大地が砕け、発剄が背後のビルを砕くのが見えたが壱虎はいなかった。
遥か遠くに佇む壱虎の姿に口端を上げ、笑みを作る。
「代わりにならないことぐらい気付いてるだろ?」
虎仙は桁違いだった。強かった。強すぎた。その代わりを彼女に求めたが彼女では足りない。弱くはないがあれほど桁外れに高い壁じゃない。だから物足りない。
それは彼女も気付いてるはず。気付いてないふりをしてるのか、は分からない。けれど一つだけわかってることがある。
「こういう酔狂は嫌いじゃない」
突進してくる壱虎。本来ならそのままカウンターとして拳を叩き込む処だが、その直前で壱虎は姿を消す。予想通りに反射神経を強化、死角に現れた壱虎へと蹴りを放つ。爪先が壱虎のまだ細い右肩を抉る寸前、まだ空を切った。
「おっと!」
崩れた体勢の雄太へと壱虎の蹴りが放たれ、それは中で受け止められた。そのまま足首で掴みあげ、地面へとたたきつけようとする雄太の手首を砕くことで脱出する。
へし折れた在り得ない方向の手首を見て、自然治癒を強化して修復する。
「チッ、再生もちかよ」
「悪いな。ただ首をへし折られたり心臓を抉られたら死ぬから、そこを狙え」
「敵にアドバイスか。舐めやがって」
再び瞬間移動。今度は背後ではなく右斜め後ろに移動した壱虎の手刀が頚動脈ごと首を断ち切ろうと走る。防ごうとする雄太の鼻先を収束した強烈な凍気が突き抜けた。
「まさか・・・・」
凍気の烈風に動きを止めた壱虎の方を気にかけながら放たれた方向を見る。
「・・・・・・おい、屑人鬼。人が傷ついた所を無視して勝手にお楽しみか?」
そこには銀髪を靡かせて、なぜか睨みつけるような視線で見てくる人狼少女―――朧がいた。

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