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lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

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lost/bombs 90

「甘いか、でもな。殺すしか選択肢を持てなかった殺人鬼よりはマシだろ」
「・・・・・わかんねぇ」
「ほんとにシンプルだな」
雄太は苦笑し、そして反射的に右の裏拳を放っていた。今まで一度も瞬きをしてなかったのに右の死角にいた壱虎の肘うちと激突する。強化はしていたがかなり重い一撃にバランスが崩される。
「瞬間移動?」
「そこまで教える義理はねぇ」
拳の打ち合いをしながらも、やはり隻腕と双腕では数が違う。拳が音速を超えて白煙となった水蒸気を纏わせつつ相手の身体に突き刺さる。威力の大半は身体の微妙な捌きで流されるが、それでもかなりの威力があるはずなのに壱虎は、気にした様子もなく打ち返してくる。
「がはっ!」
打ち込まれる寸前に身体の硬度を強化し、攻撃する時は筋力を強化するが、その間をすり抜けた攻撃が鳩尾を穿つ。
呼吸が止まり、一瞬、目の前が真っ赤に染まる。致命傷ではなく遅滞。身体が硬直し、壱虎の回し蹴りが即頭部へと迫るが真っ赤な視界の中で映ったが反応も強化も出来ない。
「うらっ!」
右の顔面を打ち付けられて雄太の身体は木の葉のように回転しながら吹き飛ばされる。地面に叩きつけられる寸前、辛うじて両足で地面を踏みつけることで衝突は防ぐが、次の瞬間、突如現れた壱虎に頭の上から思い切り拳を打ち込まれ、地面に這い蹲る。
「弱っ。本当に爺を倒した奴なのか?」
「実を言うと俺じゃない。俺はズタボロにやられた口」
雄太は地面に倒れた態勢から跳ね起きるようにして下段の回し蹴りを放つ。相手のバランスを崩すなど生温い攻撃じゃない。強化を纏った相手の両足を千切り取る攻撃を、彼女は跳ねて交わす。そこへアッパーが放たれる。壱虎が両手の十字防御ごと吹き飛ばす威力。
弾かれえた防御の間からニッと雄太の笑みが覗く。
「俺もあの爺さんには一発殴りたかった」
強烈な膝蹴りが壱虎の腹を打つ。くの字に折れた虎の首を掴み、凶悪な投げを決めようとした所で手が空を切った。
「またか」
十メートル前方で口元に残った吐瀉物を吐き捨てる壱虎がいた。もう確実だ。空間転移、それも術ではなく瞬時に発動できる能力だ。

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