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lost/bombs
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lost/bombs 10

少女もまた両腕を大きく左右に開き構える。奇妙な構え。例えるなら両腕で巨大な獣の顎を模様しているといったら一番的確か。二人の間でジリジリと殺意と闘志の火花が散る。
よく考えれば意味がない闘争である。雄太は襲い掛かってきた人形繰りを倒すために部屋を飛び出したのであり、この人狼の少女とは物語的には関係ない。
だが、雄太はそのままナイフを懐に納めず、それどころか全身にかけた強化の度合いを高める。
ビリビリッと二人の間で緊張感は更に濃縮され、今すぐにでも爆発しそうな勢いだ。
「シっ!」
その爆発を引き起こしたのは人狼の少女。
右腕が神速となって貫手の乱撃を放つ。爪は鋭くナイフで弾く度に刃が欠ける。
昨日の晩の人狼よりも更に上。
雄太がそう思っている時も貫手の速度は更に上がる。
もはや貫手の残影は七つを越え、二人の間で火花の乱舞が引き起こる。
だがそれでも二人とも使っているのは右腕のみ。
残った左腕は温存、ではなく、一撃必殺の技を練り上げる為に残されている。
貫手とナイフの乱舞をしながら二人は、いつしか高速移動を解していた。
流れるままに放たれる貫手を交わしきれずに体中に幾多の傷を作り出す雄太。
人狼の少女もまた貫手を弾いた勢いを利用して放たれるカウンターの斬撃に、全身から血を零していた。
そして二人は路地裏を駆け抜け、無人の公園を突き破り、道路を人間には視認不可能な速度で横切り、誰もいない巨大な工事現場にたどり着く。
無音の静寂の中を切り裂く斬撃の轟音。
爪が、ナイフが、刃が、吐息が、息吹が、二人の間で乱舞し、そして雄太の左腕のナイフが赤熱を纏う。
ジュウッと音を立てて雄太の皮膚が焼き爛れる。
「ようやくか」
左腕の体温を最大限界まで高熱化させナイフを灼熱にさせたのだ。
ほぼ同時に人狼少女の左腕に圧倒的な凍気が渦巻いていた。
特異進化者の中に現れる現象発現型。
渦巻く凍気に獲物を一瞬で凍らせ手刀で砕くのだろう。
互いに一撃必殺を可能とする業に緊張感は痺れるほどになり二人は距離を取った。

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