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lost/bombs
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lost/bombs 9

「いたな」
強化した視界の中で路地裏の中で動く人影を捉える。
人と僅かに違った匂いは特異進化者特有の体臭だ。
全身に力が満ちる。仕留めるなら今がいい。
一度時間が立てば相手も姿を隠し捉えきるのは難しい。
「殺すのか?」
「ああ、殺す。殺さない理由がない」
「それを言うなら殺す理由があるだ。お前はそこら辺の感性が常人と違いすぎるぞ」
老人の忠言を無視して全身を夜風の中に浴びる。
「面倒クサ」
廃ビルの二階から自由落下によって地面に着地。
地面が軋み、足腰の筋肉が強化によって回転数を上げる。瞳は暗視能力を強化した為、獣のように細い瞳孔へと変化し、全身は疾走に特化した獣のように引き絞られる。
「行くぞ」
それは誰に宣言したものか。雄太がそう呟いた瞬間、彼は疾風と化した。
百キロを越えた自動車が放つ空気との摩擦熱と爆音を引き連れ、雄太は目の前を横切る木々、家々、人々を交わし、機械を抜けながら、一気に距離を縮める。
敵はまだ雄太を捕捉してない。
そのまま駆け抜け様にその首を切り落としてやる。
雄太の身体が更に加速し、そのまま路地裏に突入。左右の壁を上手く蹴りながら速度は落とさず軌道だけは複雑にして敵に迫る。
敵がようやく雄太に気付き、纏っていた外套を剥ぎ取る。
中から現れたのは銀髪そして犬耳。
雄太の顔に驚きが浮かぶが、その動きは止まることなくナイフを持った右腕はその細首めがけで走り――しかし、空を切った。
「な!?」
今度こそ驚愕に僅かに身を凍らせ、そのまま地面に着地。靴裏が摩擦熱で煙を立てながら一気に十メートル近くを擦り上げる。
そして背中に強烈な打撃を受けて吹き飛ばされた。
吹き飛ばされた先にあったのは生ゴミが入ったバケツ。
それを右腕を強化して通過地点にある電柱を掴むことで急停止。
指先が電柱に突き刺さるのを感じながら、そこから跳躍。今までいた地点に人狼は走りこみ、強烈な蹴りで電柱をへし折る。
傾き、崩れ落ちる電柱の高圧電流の走った電線が落ちてくるのを回避しながら敵を見る。
人狼であり、人狼ではない少女。腰元まで伸びる銀髪にその間から覗く犬耳、琥珀色の瞳はどこまでも冷徹であり、全身を黒衣で覆い隠しているが、どう見ても十代中盤ぐらいに見える。
「何者だ?」
そう尋ねたのは相手の少女だったが雄太は無視。ナイフを構える。
「返答は無しか。いいだろう、いきなり襲い掛かってきた無礼。許せるものではない」

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